本記事では、所有物件の入居者の早期退去を防いで家賃アップを実現する、具体的な対策を見ていきます。※本連載はハウスリンクマネジメント株式会社代表・菅谷太一氏の著書『人口減少時代を勝ち抜く 最強の賃貸経営バイブル』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、不動産管理のスペシャリストによる「入居付け」の極意を紹介します。

保有時の名義や保有年数によって、修繕計画は変わる

不動産を長期で保有するのと、短期で売却を行うのとでは修繕費用においてお金のかけ方も変わってきます。所有時の名義が「個人」か「法人」かについてで修繕費用のかけ方に違いはありませんが、それでも保有期間が短期であるのか、それとも長期なのかで施工の選択は変わってきます。

 

図表1はそれを一覧で表したものです。「個人」「法人」では短期所有時の目的が変わります。「個人」の短期保有では主に減価償却による節税を目指し、「法人」での短期保有では税引き後のキャッシュフローを目指します。

 

[図表1]保有年数別の修繕の目安

 

このキャッシュフローを確保するうえで「修繕費」はとても大きな意味を持ちますが、長期保有(10年強)するとなれば、保有中に外壁工事・少しでも家賃を上げるためのグレードアップ内装工事・設備の更新を行う可能性が高くなります。これらはあらかじめコストがかかるものと考えて準備をしておかなければいけません。だからこそ、購入時に長期修繕計画といって、何年目にどのような工事が必要なのか、そのコストはいくらかかるのかといったことを把握します。

 

 

対して短期保有では、こうしたコストを極力かけないように運営していきます。より詳しくいえば、家賃アップとコストが見合う修繕工事を行うということです。できるだけコストをかけないで、家賃が上がるようなリフォームにするように心がけます。

 

例えば、内装であれば壁の一面だけをアクセントクロスといって、個性のない白い壁紙ではなく色や柄の入った個性的な壁紙を選ぶ・・・といった形です。こうしたクロスは一般的な量産クロスに比べて高価です。ですから全面に使うのではなくて、目につく一面だけに使用することで、そこまでのコストをかけることなく部屋に特徴を持たせることができます。

 

外壁に関しては塗り直しに多額のコストがかかるため、売却に影響しないのであれば手をかけません。雨漏りが発生してしまったら即修理ですが、きちんと防水が機能して見た目がボロボロでなければそのままにしておきます。リフォームの具体的なやり方については後ほど解説します。

家賃アップに直結する、「修繕を検討すべき箇所」は?

先ほども述べましたが、修繕費はキャッシュフローを確保するうえで重要です。

 

長期保有(10年強)である場合は外壁工事やグレードアップ内装工事を施します。

 

また設備の更新は保有時にほぼ不具合が発生しますので、コストがかかるものとあらかじめ考えて準備をしておきます。

 

<外壁塗装>

 

外壁の塗装工事は足場工事・汚れ落とし(洗浄)・塗装(下塗り・中塗り・上塗り)に分かれます。

 

10~15年維持させるためには、上記の工程どおりに施工しなければいけません。

 

ところが、5~6年という短期での売却を想定する場合は、そこまで長期の維持をさせる必要はなく、不動産の売却のための施工になりますので、上記の工程のなかで塗装(下塗り)、塗装(中塗り)を除外してコストダウンを図る施工方法があります(約20%前後コストダウン可)。

 

また、塗装の材料は安価なものから高価なものまでありますが、塗装の材料のレベルを比較的安価なものに変更させてコストダウンを図る方法もあります(約5%ダウン可能)。

 

[図表2]外壁塗装の事例【RC造】

Before
Before
After
After

 

[図表3]外壁塗装の事例【木造】

Before
Before
After
After

 

<和室の洋室化>

 

ほとんどの入居検討者が賃貸借契約にあたり「今後このお部屋を退去したときにどのくらいのコストがかかるのだろうか?」を懸念しています。

 

畳の部屋は、たった数年間住んだだけでも汚れや日焼けの跡が目立つため、表替えをしなければ次の入居に差支えがあります。その際「経年劣化」なのか、入居者の過失のいずれかに該当するのか、退去の立会時に揉めるケースも多いためお勧めしません。

 

和室から洋室に変更工事をする場合は、6畳間で15万円ほどかかりますが、その代わり家賃も2000~3000円ほど上がります。

 

アップした家賃と修繕費を見比べて、和室からのグレードアップ工事をするかどうかの検討も重要です。

 

[図表4]和室の洋室化の事例

Before
Before
After
After

 

浴室のバランス釡を給湯式に

 

この設備は今では滅多に見かけなくなったもので、20代の方はほとんど使用した経験がないのではないでしょうか。水栓を開ければお湯が出てくる給湯タイプではなく、浴槽に水を溜めて釡で沸かすタイプです。

 

現代社会においてはシャワーが中心になっているためまったく人気がありません。バランス釡を給湯式に変更するには約20~30万円ほどかかりますが、必要経費として検討されることをお勧めします。

 

<オートロック>

 

女性が好むアパート・マンションとしてセキュリティが充実した賃貸物件がありますが、セキュリティのなかでも重視されるのがオートロックになります。

 

1室あたりの工事金額が15~20万円と高額ではありますが、家賃を3000円前後アップさせられ、なおかつ賃貸の間口も広がりますのでグレードアップ工事としてはメリットがあります。

 

 

<浴室を追焚付給湯器に>

 

ファミリータイプのお部屋では、お風呂のお湯をいちいち入れ替えずに済むので追焚付給湯器が付いているとたいへん喜ばれます。お風呂に入る時間が家族でバラバラの場合が多いからです。

 

また、捨て水がなくなるので水道代が浮き、節約できるというメリットもあります。家賃自体は3000円ほど(10年で36万円)アップが見込め、ガスがプロパンガス物件の場合なら、家主向けにガス会社が追焚付給湯器を無償貸与(支給)してくれる場合もあります。

 

[図表5]浴室工事の一例

浴室の壁面にダイノックシートを貼って、給湯器を交換
浴室の壁面にダイノックシートを貼って、給湯器を交換

 

<IoT搭載設備>

 

最新のアパートにおいては、スマートロック・スマートライト・リモートコントロールなどを代表とする、IoTの搭載をセールスポイントにしている会社も増えてきました。

 

スマートロックとは、スマートフォンで玄関の開閉ができるものです。スマートライトもスマートフォンを用いて、外出先からでも電気を点けたり消したりすることができます。リモートコントロールは、テレビやエアコンと同じく電源のON/OFFが可能です。

 

当然ではありますが、これらのサービスを提供するにあたり、通常のアパートに比べると家賃は割高になります。「収支と家賃の下落を防ぐ」ためにご検討されてはいかがでしょうか。ただし、新築アパートは家賃が中古と比べて高いため、都内で高い家賃(8万円以上)を確保するため導入をしてもよいでしょう。

 

 

菅谷 太一

ハウスリンクマネジメント株式会社 代表取締役 宅地建物取引士/液化石油ガス設備士/丙種ガス主任技術者

 

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