23区内で「プロパンガス」では入居が決まらない?
都市ガスとプロパンガスでは、ワンルームでも月々のガス料金が2000~5000円違ってきます。東京23区内においては賃貸物件の数も膨大で、入居検討者にも選択の余地があるため、「プロパンガス」というだけで選択肢から外されてしまい、入居が決まりづらい傾向にあります。
プロパンガス物件の多い地方都市では問題ありませんが、物件の大半が都市ガスやオール電化である23区内では、旧式のプロパンガスから都市ガスへの変更も視野に入れておくべきでしょう。その場合の費用は1室あたり30万円前後になります。
ただし、このプロパンガス業界は都市ガス、同業者とのシェア争いが活発です。新規契約を勝ち取るためなら配管や設備などを無償提供している業者も少なくなく、これは不動産賃貸経営にとっても良きパートナーになってくれる場合が多いのです。
ただし、入居者から「ガス代が高い!」と苦情が出ないよう、プロパンガス業界の平均価格を著しく上回らない業者を選択するように気をつけましょう。一般財団法人日本エネルギー経済研究所が経営している「石油情報センター」の公式サイトでは、プロパンガスの平均価格を閲覧できますのでご確認ください。
様々な設備の「清掃」や「点検」が義務として存在する
入居者の住環境を整えて物件の美観を保つのは、新規入居者を募集するうえでとても大切です。建物の大きさや世帯数にもよりますが、最低でも月に1度は建物の清掃を実施しましょう。
また1Kや1Rといったシングル向けの物件では、ゴミの分別を怠ったり、ゴミ収集の日時を無視して捨ててしまったり、不法投棄をしたりする入居者もかなりいるため、ゴミ置き場が汚れることもあります。「余計なコストだ!」と考える方も多いとは思いますが、建物の美観を保つのは収益を最大化させるためにも欠かせません。必要経費と考えるようにしましょう。
<消防用設備点検>
消防法第17条3の3に規定された消防用設備が取り付けられている建物には、年2回の設備点検と年に1回、もしくは3年に1回の所轄の消防署への届出が義務付けられています。
平成13年(2001年)9月に発生した新宿歌舞伎町のビル火災において、44名が死亡した事件から消防設備点検が厳格化されるようになりました。
転貸借により、以前から消防署の立ち入り検査で改善指導がなされていたものの、入居者がこれを把握しておらず、避難経路に店舗の私物が多数置かれていたため、火災時に避難できずに多数の死者が出た痛ましい事件です。
この事件で管理会社とオーナーが消防法違反で逮捕され、ようやく世間では消防点検の必然性が理解されるようになりました。
消防設備とは避難器具(はしご)、自動火災警報設備の他、規模によっては散水栓付きのマンションもありますので、物件の規模相応のコストがかかることを把握してください。
消防署への届出の報告期間
・1年に1回特定防火対象物(飲食店・百貨店・旅館・ホテル・病院・地下街など)
・3年に1回非特定防火対象物(共同住宅、工場、倉庫、駐車場など)
<受水槽清掃>
受水槽の容量が10㎥を超える簡易専用水道は、年に1回以上定期的に清掃を行い、厚生労働大臣の指定機関で検査を受けるよう義務付けられています。
マンホールの蓋が外れているとネズミやゴキブリといった害虫が侵入し、汚水や赤サビの発生など不衛生の原因になります。そのために検査が必要になりました。10㎥という規制はありますが、小規模であっても受水槽の清掃は、入居者の健康被害を考えると計画的に実施すべきです。
[図表1]受水槽の簡略図 ▶加圧給水方式
<水道の増圧ポンプ点検>
直結増圧方式の水道は受水槽方式とは異なり、ポンプで直接水圧を上昇させて各戸に水を送ります。ポンプが故障してしまうと全戸が断水になってしまうので、各地方自治体で点検を行うよう義務付けられています。
東京都でも年に1回は給水ポンプの点検を行わなければなりません。受水槽や加圧ポンプがなくなるので省スペースになるだけでなく、受水槽の水質検査や清掃代もかからなくなりコストの面でメリットが大きい方式です。
[図表2]増圧ポンプの簡略図 ▶直結増圧方式
<エレベーター点検業務(POG、フルメンテナンス点検)>
●POG点検
POG点検とは、Parts(パーツ)、Oil(オイル)、Grease(グリス)の頭文字のことです。つまり、「POG契約」とは、定期点検、管理仕様範囲内の消耗品の交換を含む契約です。1回分のメンテナンスにかかるコストを最低限に抑える一方で、その他の消耗品や部品の交換・修理については別途費用がかかります。エレベーターの点検会社によっては点検のスパンが異なり、月に1回の点検を行うところもあれば、遠隔操作を取り付けて3カ月に1回の点検をする会社もあり、さまざまです。
●フルメンテナンス点検
フルメンテナンス点検とは、通常使用において発生する消耗品や部品の交換・修理を含んだ契約のことです。その都度、見積りや支払いを行わなくてもよいため、分譲マンションなどあらかじめ予算計上をしておきたい場合に適しています。なお私の会社でフルメンテナンス点検を行う際には、エレベーター本体のリニューアル、カゴの交換などは実費ですが、それ以外はほとんどの点検作業を含んでいます。フルメンテナンス点検の内容は次のとおりです。
点検
(1)エレベーターの全装置機構
(2)年中無休24時間故障対応
調整・給油
(1)巻上機
(2)電動機、及び電動発電機
(3)マグネットブレーキ
(4)受電盤・制御盤・信号盤
(5)ガバナーマシン
(6)乗カゴ関係各部品装置
(7)ドア開閉機構、及び各階ドア装置
(8)各階インジケータ、及び押しボタン
(9)主レール、及びカウンターウエイトレール
(10)カウンターウエイト
(11)昇降路、及びピット内各装置
(12)上・下リミットスイッチ
(13)主ロープ、及びガバナーロープ
(14)上記各機械部品の洗浄、及び余分な油脂の除去
取替修理工事内容
(1)巻上機内のパーツ
(2)電動機、電動発電機のパーツ
(3)フロアーコントローラー
(4)受電盤・制御盤・信号盤のパーツ
(5)配線関係
(6)ワイヤーロープ関係
乗場、カゴ内パーツ
(1)塔内パーツ
(2)出入口内パーツ
(3)その他、プーリー類、バランスチェーン、保守に必要な油脂類一式、ウエス類(清掃用の布)
(4)官公庁検査手続代行、及び検査施行
建築設備点検
建築基準法第12条第3項に、「特定建築設備等」の定期検査についての記載があり、不特定多数の人が利用する特殊建築物等に対して、安全性や適法性を確保するため定期検査を行い、定期報告をする旨が定められています。
定期報告には、時期が定められています。毎年の報告が必要な特定行政庁が大半となり、別途、国土交通省が定める検査項目については「1年から3年まで」となっています。原則としては全数検査が推奨されていますが、それが困難であれば1年目、2年目、3年目の検査場所を決めて、3年かけて計画的に全数検査できるようにしましょう。
また、検査の実施・報告は、建築防災の知識やそれぞれの設備に対する専門知識を有する一定の資格を持つ調査者・検査者が行います。検査ができる資格者は、主に一級建築士・二級建築士、建築設備検査員などです。建築士は建築士資格の免状を持っているだけなく、必ず都道府県の建築士事務所登録が必要です。その他、建築設備検査員の資格を持った設備メンテナンス会社や、各種法定点検を行う専門会社もあります。
対象となる建築設備は次の5種類です。
(1)給水設備、及び排水設備
(2)非常用の照明装置
(3)昇降機(エレベーター)
(4)換気設備
(5)排煙設備
※昇降機(エレベーター)等については、専門のメンテナンス会社による月毎の点検、年に1度の定期検査が実施されていることが多いため、本連載では割愛します。また、賃貸住宅では換気設備や排煙設備はほとんど該当しないため、こちらも割愛します。
<給水設備、及び排水設備>
給水設備、及び排水設備とは、飲料用の配管設備と排水設備を指します。これらの点検内容は各自治体によって変わり、検査対象から外されている場合もあります。主に配管、貯水タンク、排水ポンプの設置状況などを確認します。
<非常用の照明装置>
非常用の照明装置とは、非常時に一般電源が失われた際点灯する照明器具を指します。バッテリー内蔵タイプ、蓄電池が別の場所に置かれているタイプなどがあります。建築設備の定期検査では災害時に支障なく避難できるように、最低限の照度が確保されているか「照度測定」を行います。
また、消防法で定められた設備には誘導灯もあります。誘導灯は非常用の照明装置ではなく、火災時に安全に屋外へ避難できるように避難方向を示す設備です。