入居時のクレームをなくす=入居率を上げる
いくら低家賃で好条件のお部屋であっても、トイレやキッチンなど水回りに漏水があったり、建具の扉がスムーズに開かなかったりすれば、入居者はお部屋を紹介・契約した賃貸仲介会社へクレームを入れるでしょう。そして、管理会社にもお部屋の不具合を改善する依頼の連絡が入ります。
賃貸仲介会社は、入居時にクレーム(住んでみたら不具合がある、というクレーム)の多い管理会社を極端に嫌います。それが毎回のように発生すると他の接客をする時間が妨げられますので、そのような管理会社の空室は紹介しなくなってしまうのです。『入居時のクレームをなくす=入居率を上げる』につながりますので、しっかりしたお部屋作りはとても大切です。
しっかりした部屋とは、必要な設備を備え内装にこれといった不具合がない清潔感のあるお部屋のことを指します。築年数が経っていても、きちんとリフォームを行っていれば、一見して新築のように見えるお部屋に仕上げることもできます。
その他は、シングルかファミリーかによって、部屋に求められる条件が変わるため、そのニーズに応えているかどうかも重要なポイントとなります。
家賃アップは「住みやすさの追求」で実現
本連載を通じ、満室稼働させるためのノウハウと考え方についてお伝えしました。そのなかで、募集条件についての考え方として相場家賃とチャレンジ家賃の存在、そしてその違いを書きました。また、リフォームに対する考え方について説明し、家賃を下げないための手法についてお伝えしました。
いずれも入居者から得る家賃を少しでもアップするため、もしくは下げないための手法です。
それでは、入居者の早期退去を防ぎ、家賃をアップするにはどうすればよいでしょうか。
入居者の早期退去を防ぐためには、居住するうえでの満足度を上げる、いわゆる「住みやすさ」を追求することがポイントとなります。
というのも、仮に相場以上の家賃で入居者を獲得できたとしても、インターネットが発達している現代において、現在支払いしている家賃が、同じ物件の違う部屋の家賃や似たような物件の家賃と比べて「高い!」と入居者が感じた場合には、他の物件に転居してしまう可能性が十分に考えられます。
入居者属性は多少悪くなりますが、一時的に初期費用を無料にして家賃をアップさせて、早期に入居者を確保する方法もあります。ですがこれはエリアによりけりであり、著しい家賃アップ収益向上というよりは、むしろ短期解約を招く原因になります。
そのため、家賃を上げたいのであれば、自分の目で物件を確認し、物件価値を高めるための策を打つことが必須です。早期退去を防ぐには、「物件価値を高めること=家賃を上げるための努力」が欠かせません。
それでは実際に私の経営する会社が賃貸管理でオーナーと打ち合わせをして、効果的な設備導入をすることで家賃がアップした成功事例をお伝えしていきます。
インターネット無料……家賃月額2000円アップ
入居者が欲しがる設備で毎年1位になるものです。過去にもインターネット無料は存在していましたが、入居者にお伺いしてみると、容量がとても少ないためすぐに容量オーバーするなど、入居者の要望に応えられないものが多数ありました。
この「インターネット無料」にもさまざまな種類があり、有線なのかWi–Fiなのか、容量はどれくらいなのかなどで便利さがかなり違います。
パソコンを使用する人もいますが、現実はそれ以上にスマートフォンの利用者が大多数を占めているので、無料Wi–Fiが使えるアパートは人気が高いのです。私の経営する会社で無線ルーターを用いて、どのようなパソコンやスマホでも対応ができる機種を選定したところ、入居者からは好評を得ています。
インターネット無料のサービス提供会社に関しても競争は熾烈を極めており、私の会社が取引をしているインターネット業者は、「10年間その業者を使用する」ことを条件に、設備を無償提供してくれています。インターネットの設備投資は初期コストがかなりかかりますので、それを考えると無償で提供してくれるのは非常にメリットがあると思います。
洗面化粧台……家賃月額1500円アップ
特に新築アパートの場合は、洗面化粧台の有無で入居のスピードが変わるといっても過言ではありません。洗面化粧台のない物件では歯磨き・洗顔・化粧を、キッチンもしくはお風呂場でせざるをえません。これは今や男性女性を問わず欠かせない設備となります。
中古物件の場合は間取りが決まっていますので、後から洗面化粧台のスペースを確保するのは厳しいですが、新築でプランを練るときは洗面化粧台の設置をお勧めしています。
いずれにしても設備のグレードアップを図ることにより、家賃を上げる効果があるなかでも洗面化粧台は代表的な設備機器に該当します。
洗濯機置き場……置き場が外では女性から選ばれない
もともと洗濯機置き場が室外のベランダなどにあると、とりわけ1階の場合は女性の入居が厳しくなります。そのため、中古物件を仕入れる前に空室の室内確認を行い、できる限り洗濯機置き場を外から中への変更工事を施します。
どうしてもできない場合は、キッチン内蔵型を選ぶ場合もありますが、極端にコストアップするため、できる限りキッチンの横などに洗濯機置き場を設けるようにしています。
ご紹介した設備やサービスは家賃を少しでもアップできるように、もしくは家賃の下落を防ぐためのツールとなりますが、これら以外でも家賃アップを図ることができる設備やサービスは多数存在します。
そのため、常に費用対効果を考えて、所有物件において賃貸の収支上プラスになるようであれば、早々に設備を取り付けし、家賃アップを図っていかなければいけません。所有物件にはどのような設備、サービスを用意すればいいのか検討しましょう。
菅谷 太一
ハウスリンクマネジメント株式会社 代表取締役 宅地建物取引士/液化石油ガス設備士/丙種ガス主任技術者