東大合格の筆者は、受験のときに「漫画」をどう読んでいたか?

本記事は、東京大学薬学部卒業で、現在は作家、心理カウンセラー、イラストレーターとして活躍する杉山奈津子氏の著書、『偏差値29からなぜ東大に合格できたのか』の内容の中から一部を抜粋し、脳の「自制心」をコントロールする力を鍛える方法を見ていきます。

「達成」を意識することで、自制心が鍛えられる

学力や精神力などの能力を伸ばす作業は、筋肉を鍛えることに似ています。ひょろひょろの腕でも、鍛えれば鍛えるほど硬く太くなっていきます。最初は10キロのダンベルさえ重くてもてない状態でも、トレーニングをすれば、次第に20キロでも軽々もてるようになります。

 

筋肉を鍛えるためにはカを使って負荷をかけないといけません。すると、収縮した筋繊維はプチプチと切れて傷つきます。疲労物質がたまり、炎症を起こすこともあります。疲れるし、つらいし、筋肉痛になることもあります。それが嫌だからとトレーニングをやめれば、確かにそれ以上は筋繊維が痛むことはありません。しかし、当然ながら筋肉がつくこともありません。筋肉は、傷ついた筋繊維が修復される過程で、強く頑丈になっていきます。切れたことで、「前より強くならなくては負荷に耐えられない」と学ぶためです。筋肉を鍛えるために、筋繊維の裂傷は必要不可欠なことなのです。

 

能力も同じで、伸ばすためには毎日継続して訓練することが大切です。その経路には、耐えなくてはいけないこと、つらいこと、失敗もたくさんあるでしょうが、それは能力を鍛えるために避けられない、必要不可欠なステップなのです。

 

そんな能力のひとつとして、「自制心」も同じように鍛えられることがわかっています。

 

ある実験で、目標を期限内に達成することを積み重ねていくと、いつの間にかお酒やお菓子の摂取量が減っていた、という結果が出ました。筋肉を鍛えるように努カを重ねたことで、脳の「自制心」をコントロールする部分も強くなったのです。そして、やるべきことをやらないで放置し続けると、再びお酒とお菓子の摂取量も増えるようになりました。筋肉と同様、使わなければ衰えてしまうのです。日頃から小さなことをコツコツ継続して、何かを遂げることが大切なのです。

 

ここで重要なのは、脳に「期限内に達成している」としっかり意識させることです。

 

私は、少し大きめの付箋をいつももち歩いていて、やるべきことを思いついたらそこに書き、時間表にペタッと貼っています。そして、やり終えた行為は鉛筆で塗りつぶしていきます。1週間後、ほぼ塗りつぶされた時間表全体を眺めると、「今週も色々頑張ったなあ」という達成感が得られます。

 

このように「自分はやるべきことをきちんとやれる人間」と意識することで、より自制心が強くなるのです。

目の前の「衝動的な欲求」に打ち克つには?

「遅延による報酬の価値割引」という経済心理学用語があります。「時間選好」とも呼ばれますが、手に入る時間により報酬の価値が変わってしまうという意味です。

 

例えば、1年後の大学合格を目指して勉強を頑張っていても、目の前にスマホがあるとついいじってしまいます。私も作業をしようとパソコンを開くと、何となく目に入った気になるニュースやかわいい動物の動画を見てしまいます。そして見終わると、その後勝手に「関連した動画」が紹介され、さらにそれを見終わるとまた・・・という連鎖にはまり、気づくとかなり時間が経っていて自己嫌悪に陥ることがあります。

 

このように人は、将来手に入る大きな報酬より、すぐ手に入る目の前の衝動的な欲求の方に価値を見い出します。長期間かけて手に入れる報酬は、価値が下がって見えてしまうのです。

 

もし10年後に10万円もらうか、11年後に15万円もらうかを選べと言われたら、たった1年待つだけで5万円も多くもらえるのですから、冷静に考えて11年後を選ぶ人が多いでしょう。では、明日10万円もらうのと、11年後に15万円もらうのだったらどうでしょうか。

 

人は、11年待てば5万円も多くもらえるということを頭ではわかっていながら、すぐ前にある10万円に飛びつきたくなります。そして、「将来本当にもらえるかどうかわからないから」と、もっともらしい言い訳で合理化するのです。

 

将来得られる「より良いもの」を犠牲にすることをわかっていながら、短絡的に目の前の欲求を求めてしまう行為は、ノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモンが唱えた「限定合理性」の典型的な例です。彼いわく、「人間は必ずしも合理的な行動をとるわけではない」のです。

 

スタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルは、幼稚園で4歳の子どもたちに、「すぐにお菓子を1つもらうか、15分後に2つもらうか」を選ばせる実験をしました。まずお菓子を1つ置いて子どもを部屋にひとりにし、15分待てるかどうかを調べました。食べたくなっても忍耐強く我慢して、15分後にきちんと2つゲットする子もいれば、ついつい誘惑に負けて1つ食べてしまう子もいました。

 

その後、子どもたちの成長を追って調査したところ、我慢して2つもらった子の方が、1つの子たちより学校の成績も優秀で、社会的に成功した子が多かったのです。お菓子の実験は、将来の大きな目標をちゃんと見据えて、障害となる目先の誘惑に打ち勝つ力を調べたわけですから、この結果は予想通りとも言えます。

 

子どもに、将来手に入るものの価値は実際より低く見えてしまうものだということを前もって教えてあげてください。理性的に価値を見極めるカをつけることができれば、目標を達成する可能性はぐんと高まります。

我慢が難しいならば、身の回りにおかないという手段も

目の前の欲求を選ばないために、物理的に接触不可能にする対策もあります。

 

車を買いたいけれど、ちょこちょこと目先の小さいものにお金を使ってしまい、なかなか貯金が増えないという人は、一定期間は引き出せない定期預金で銀行に預けるといいでしょう。

 

また、欲求を遠ざけ、接触しにくい環境にもち込むことで忍耐カを鍛えることもできます。ダイエット中の人が、目の前の欲求であるチョコレートを本当に「目の前」に置かず、見えないように机の中にしまうと、食べる量が3分の1に減るのだそうです。食べる量が減ると、次第にダイエットの効果も出てくるので、嬉しくなってさらに自制することができるようになります。

 

私はスマホがあるとすぐにゲームをしたくなるので、作業するときは別の部屋など手の届かない場所に置いておきます。とりにいけば遊べてしまう距離ではありますが、立ち上がる寸前で「そこまでしてやりたいこと?」と、ひと呼吸して冷静になる時間ができます。すると、自分が本当にやるべきことを見つめ直せるのです。

 

受験の時期に特に気をつけたものは、漫画です。漫画に関しては今でも読み出すと続きが気になってやめられなくなり、過去には1日に25冊も読んでしまったことがあります。そのため、受験生のときは、書店の漫画コーナーには近づかないようにしました。たまに買うにしても、続き物ではなく、1巻完結などなるべく短編であることを基準に選びました。

 

また、テレビも見ていると次の番組の予告が流れたりして、気になっていつまでも離れられなくなるため、見たい番組は録画していました。これなら気分転換にと好きな時間に見られるし、予告が流れてもすでに番組は終わっているので物理的に見られません。

 

こうして、日々少しずつ目先の誘惑を回避させていくうちに、「自分も我慢しようと思えばできる」「自分は意志が強い」という自信も出てきて、さらに我慢できるようになりました。

 

目先の欲求というのは、大抵は本能的かつ衝動的なもので、その欲求を手に入れたからといって精神的に満足するというよりは、むしろ後悔して罪悪感にかられることの方が多いのです。欲求に負けそうになったときは、「自分が本当にしたいことはどちらか?」をよく考えるようにしましょう。

静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業。作家、イラストレーター。心理カウンセラー。大学卒業後は、執筆活動や講演活動を積極的に行っている。著書に『鬱姫 なっちゃんの闘鬱記』(講談社)、『「うつ」と上手につきあう本』(大和出版)、『偏差値29からの東大合格』(中央公論社)、『偏差値29の私が東大に合格した超独学勉強法』(KADOKAWA)などがある。

著者紹介

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