開業時期の決定は、あらゆる角度からの吟味が必要
もし「1年の中で一番好きな季節は真夏なので、8月に開業しよう」と考えているドクターがいらっしゃるなら、そのような考えはあらためることを、強くお勧めします。
なぜなら、クリニックを開業するのに8月は最も適さない時期だといえるからです。
そもそも夏は、ただでさえ「調子はすぐれないのだが、こんなに暑い中、外に出るともっと具合が悪くなりそうだ・・・」などと患者の足が他の季節より重くなりがちです。その上、8月にはお盆休みがあるのです。
開業場所がオフィス街であれ住宅街であれ、いずれの場合でもその前後を境に患者の数はめっきりと少なくなります。開業月というのは、本来、日々順調に患者数を伸ばしていくべきであるのに、これでは最初から出鼻を挫かれることになります。
また、中には、「人が働かないときに働いてこそ、より多くの収入をあげられる」という考えのもと、8月に開業してお盆も1日も休まずに診療しようとするドクターもいらっしゃいますが、スタッフが同じ思いを共有しているとは限りません。
それどころか、「お盆休みも取れないなんて!」と、勤めた早々嫌気がさして、時間をかけて募集した大切なスタッフが辞めてしまうケースも少なくないのです。
このように8月に開業することにはメリット(強いて挙げるならば、開業月においてゆっくりとスタッフの指導をすることができる点)が少なく、逆にデメリットの方がはるかに多いのです。
一方、開業する時期について特にこれといった希望はなく、「開業するのに最も適した月はいつなのだろうか? その時期を目指して開業準備をしていきたい」というドクターの方がその絶対数は多いのではないでしょうか。
本格開業までは2カ月程度の助走期間を設けておく
開業にベストな時期を一概に断定することは難しく、最終的にはケースバイケースとなってしまいますが、一般的には、それぞれの診療科目において、患者数が最も見込める時期の2カ月前に開業することが望ましいでしょう。
というのも、最盛期に開業していきなりたくさんの患者が押し寄せると、院内のインフラがしっかりと構築できていないことから患者側から不満が出てしまうのです。
よって、2カ月程度の助走期間、言うなればスタッフのトレーニング期間を設けておくことが必要となるのです。
例えば耳鼻咽喉科であれば、花粉症のシーズン前に開業することをお勧めします。特に患者数が多いスギ花粉のアレルギー時期は通常、2月中旬以降ということになりますから、開業時期は前年の11月頃がベストとなるでしょう。
また内科であれば、インフルエンザの予防接種が10月後半からスタートし、風邪の患者も11月以降に目立って増えてくるので、開業時期は9月頃がベストとなるでしょう。
さらに、産婦人科については、自治体から婦人科健診の補助金が出る時期を確認した上で開業することをお勧めします。自治体ごとに補助金が出る時期が異なっているため、開業エリアの役所等で事前に確認してから開業月を決めていくのがよいでしょう。
次回は5番めのポイント、開業時に細心の注意を払う必要べき「スタッフ採用」について見ていきましょう。