ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

パウエル議長は年初の講演で、金融当局は辛抱強く、必要に応じて迅速に金融政策を調整する用意があると発言するなど、利上げペースの減速を示唆する考えを示してきました。したがって今回のFOMCでも、ハト派的な姿勢が示されると見ていましたが、想定以上に緩和姿勢を強めた面が見られました。

1月FOMC声明:漸進的利上げという文言を削除し辛抱強いスタンス表明

米連邦準備制度理事会(FRB)は2019年1月29~30日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を公表しました。市場予想通り政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25-2.50%に据え置きました。

 

ただ、声明や、今回から定例となるパウエルFRB議長の記者会見がハト派(金融緩和を選好)的であったため、為替市場のドル安や、米国債利回り低下が見られました。

どこに注目すべきか:下方リスク、忍耐強く、バランスシート縮小

パウエル議長は年初の講演で、金融当局は辛抱強く、必要に応じて迅速に金融政策を調整する用意があると発言するなど、利上げペースの減速を示唆する考えを示してきました。したがって今回のFOMCでも、ハト派的な姿勢が示されると見ていましたが、以下の点などから、想定以上に緩和姿勢を強めた面が見られました。

 

まず、声明文が前回(18年12月)FOMCから2点、想定以上に変更されています。1点目は経済見通しのリスクについて前回の声明で「おおむね均衡している」としていた文言を削除したことです。パウエル議長は記者会見で、経済の基本見通しは変わらないものの、従来ほど楽観的でないと述べ、経済の下方リスクへの懸念を指摘しています。

 

2点目は市場で恐らく最も意外と受け止められている声明の変更ですが、利上げ姿勢を示唆する「さらなる何度かの利上げ(が適切)」の表現が削除されました。代わりに、利上げ(FFレート目標レンジの将来の調整)の判断については「忍耐強く」なれるとの表現に置き換えられ、単なる利上げペースの減速よりも金融緩和方向に踏み込んだ印象です。

 

 

次に、バランスシート(B/S)の縮小について詳細は述べられませんでしたが、(市場動向で)柔軟に対応することが示唆されました(図表1参照)。パウエル議長のB/S縮小は自動操縦との表現が株式市場を下落させたとの指摘もあり、今回は配慮した格好です。別紙まで公表してB/S縮小の考え方を示しましたが、縮小のゴール(着地点)は不明確でした。記者会見でも着地点が質問されるなど、今後に課題を残しています。ただ、縮小規模は、リーマンショックの頃にまで戻すという当初の想定より小幅で、超過準備をある程度残す考えです。その通りならばハト派的と見られます。

 

[図表1]米FRBのバランスシートと超過準備の規模の推移

週次、期間:2012年1月25日週~2019年1月23日週 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
週次、期間:2012年1月25日週~2019年1月23日週
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

インフレ率の表現も変更されました。期待インフレ率について、前回の声明では指標は全般的にほとんど変化なしとなっていましたが、今回の声明では(記者会見でも)、「調査ベースの期待インフレ率に変化は無いが、市場で観察される期待インフレ率はここ数ヵ月間に低下した」と変更しました。市場の動向にあわせ表現を修正しています(図表2参照)。

 

[図表2]米国個人支出(PCE)コア価格指数と期待インフレ率

月次、期間、2015年12月~2019年1月、PCEコアは11月迄、前年比 ※ブレイクイーブンレート:市場で測定される期待インフレ率、物価連動債の実質利回り 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
月次、期間、2015年12月~2019年1月、PCEコアは11月迄、前年比
※ブレイクイーブンレート:市場で測定される期待インフレ率、物価連動債の実質利回り
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

市場が予想する年末のFFレートは、年内は利上げを見送る可能性さえ示唆しています。株式市場が年末年始に大きく変動したことを踏まえれば、利上げ姿勢は維持しにくい局面と思われます。ただ、パウエル議長は記者会見で経済と市場の動きにやや違和感もあると述べるなど、米国景気の底堅さにも言及しています。データ次第ながら、年内利上げの可能性を忍耐強く維持する必要もあると思われます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『パウエル議長、ここは忍耐強く』を参照)。

 

 

(2019年1月31日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【3/27開催】遺言はどう書く?どう読む?
弁護士が解説する「遺言」セミナー<実務編>

 

【3/27開催】いま「日本の不動産」が世界から注目される理由
~海外投資家は何に価値を見出すのか

 

【3/27開催】「マイクロ法人」超活用術
~法人だからできる節税とは~

 

【3/28開催】「相続手続き」完全マスター講座
~相続人調査、財産調査、遺産分割協議~

 

【3/30開催】次世代のオルタナティブ投資
「プライベートクレジット投資」とは

 

あなたにオススメのセミナー

    【ご注意】
    ●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
    ●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
    ●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
    ●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
    ●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
    ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
    ●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
    ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
    ●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録
    会員向けセミナーの一覧
    TOPへ