人の心を動かす最も強力な手段は「直接営業」だが…
ここまで、分析のやり方について語ってきましたが、人の心を動かす最も強力な手段は人と人とがふれあう直接の営業です。
直接営業の代表的な手段には居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、社会福祉協議会などの関係機関へ、取り組みを知っていただくために、パンフレットやチラシなどで「デイ便り」を手渡しするなどがあります。
特に居宅介護支援事業所は利用者の紹介元であります。毎月担当ケアマネに提出が必要であり、サービス「利用実績」を書面で伝えることが必要ですから、これを郵送で済ませていることは大きな機会損失です。
また地域へ事業所を開放するなどで、存在を認知してもらうことも効果的です。
例えば、介護予防や制度についての勉強会、マグロ解体ショーなど目を引くイベントの開催など、考えられることは多くあります。
また外部との接触の機会を多く持つ機会は、認知のチャンスでもあります。地域の事業者連絡会、専門職同士の会合や交流会、各種研修など、積極的に参加すべきでしょう。
時間や人員が足りないなどの理由から、介護事業者によっては積極的な営業を行っていないことがあります。
当然このような営業をするかしないかで、結果はまったく異なります。
レーザートークを構成する「6つの要素」
営業においてよく「行ってはいるけれど効果がない」という声をよく聞きます。
しかしながら、誰が誰に会いにどのようなモノ(提案する情報など)をどのように話すのかまでは想定せず、やみくもにやっているのを目の当たりにします。
レーザートークは、限られた時間で関心を喚起するための話術で、別名エレベータートークとも呼ばれます。その名のとおり、この話し方を身に付ければ、エレベーターが次の階に到着するまでの数十秒程度で、簡潔にプレゼンテーションを行うことができます。
レーザートークは図表で示したとおり、6つの要素でできています。
[図表]レーザートークの流れ
レーザートークを活用した架空の事業所の営業のプレゼンを見てみましょう。
①肩書きや商品名
はじめまして。「○○」の●●と申します。弊社はこの地域において長らく通所介護事業所の運営をしております。
②ベネフィット
昔ながらの小規模なデイです。ご自宅に次ぐ「第2の我が家」として温もりを感じていただいております。
③独自性
スタッフの定着率が高く、スタッフ、ご利用者様同士の人間関係が非常に良好です。また私達は利用者様のご要望を「よく聞く」ことを大切にしており、やれることは直ぐに実行致します。直近では皆様の声をもとに、近隣への外出行事や、俳句作り、絵画作成、認知症予防運動などに取り組みました。
④興味性
食事に関しても、デザートなどを選択制のメニューにすることで、利用者様の「自己決定」を促す取り組みにも力を入れています。今後は地域と利用者様との「つながり」の提供のため、交流スペースの設置について検討しています。
⑤理由
実際に利用者様や関係者からは「居心地がとても良い」「些細な要望にも耳を傾けてくれる」「スタッフがとても温かくて親切」「スタッフが明るい」などのお声をいただいております。
⑥クロージング
まずは見学にお越しいただき、実際の雰囲気を感じていただければ幸いです。
ポイントとしては決して売り込まず、「利用者にとって有益なものがここにあるからまずは知っていただくことを目的」とすることです。
また契約に至るまで、決して事業者都合で急がず、
見学→ お試し利用前の面談 → お試し利用 → 契約
と、丁寧に契約までに至ることでミスマッチを防ぎ、利用者が納得のうえで契約することが望ましいです。
見学やお試し利用の結果、「合わない」のであれば無理にお越しいただかないという利用者本位の在り方は、必ず周囲の評価が後から付いてくることでしょう。
藤田 直
株式会社インクルージョン代表取締役
株式会社インクルージョン福祉総研代表取締役
福祉のマーケティング・経営塾塾長、社会福祉士・介護支援専門員