ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

欧州中央銀行(ECB)は1月24日に、金融政策理事会の決定を公表します。ECBが18年末に資産購入プログラム(APP)の新規購入を停止した後で最初の会合となります。APP停止後の政策運営など、ECBの金融政策の今後の動向を占ううえでの注目点を述べます。

ECB理事ポスト:アイルランド、レーン中銀総裁をECB理事候補に指名

アイルランドは中央銀行総裁のフィリップ・レーン氏を欧州中央銀行(ECB)理事候補に推薦しました。アイルランド財務省は2019年1月21日に開催されたユーロ圏財務相会合で、5月末で任期を満了するプラートECB理事の後任候補としてレーン氏の理事会入りを提案しています(図表1参照)。

 

[図表1]今後退任が予定されている主なECBメンバー

出所:各種報道、ECBを参考にピクテ投信投資顧問作成
出所:各種報道、ECBを参考にピクテ投信投資顧問作成


 レーン氏はECBのチーフエコノミストを兼務する可能性が高いと見られています。なお、アイルランドはユーロ圏創設時からの加盟国では唯一、理事のポストをこれまで獲得できていませんでした。

どこに注目すべきか:APP、フォワードガイダンス、人事、TLTRO

ECBは1月24日に、金融政策理事会の決定を公表します。ECBが18年末に資産購入プログラム(APP)の新規購入を停止した後で最初の会合となります。APP停止後の政策運営など、ECBの金融政策の今後の動向を占ううえでの注目点を述べます。

 

1つ目はフォワードガイダンス変更の有無です。ECBは年末にAPPに伴う新規購入を停止し、金融政策の次の関心は政策金利の引き上げ時期となっています。1月10日に公表された議事要旨(18年12月12~13日の政策委員会)で金利政策についての最新のフォワードガイダンスを確認すると、少なくとも今年夏までは現状水準維持が確認されています。

 

ユーロ圏の景気回復が順調であれば、9月以降マイナス金利となっている預金ファシリティ(政策金利)の引き上げを市場は見込んでいます。ただ、ユーロ圏の景気は減速傾向です(図表2参照)。ECBのドラギ総裁は15日の欧州議会の証言でユーロ圏経済について、リセッションではないが、景気の落ち込みが長引く可能性を指摘しています。今回はフォワードガイダンスの変更にまで踏み込まないにしても、景気判断を慎重に行う可能性はあり、共に注目しています。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

[図表2]ユーロ圏の主な国の製造業PMIの推移

月次、期間:2016年1月~2018年12月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
月次、期間:2016年1月~2018年12月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

2点目はECB理事会の人事についてです。年内、プラート理事にドラギ総裁と大物が任期を迎えます。議事要旨から判断して、これまでECBの会合はプラート理事の示す経済シナリオを土台にコンセンサスを築いてきた模様です。その意味でエコノミストの役割は重要ですが、報道などから、レーン氏がその有力候補と思われます。

 

なお、ドラギ総裁は10月末が任期です。人事(ドラギ総裁の後任)が本格化するのは5月の欧州議会選挙後と見られますが、市場では既に有力候補がリストアップされています。ドラギ総裁の退任は、利上げが想定される微妙な時期でもあるため、公表は無いにしても記者との会見で質問されることは想定されます。

 

 

3つ目は、ユーロ圏の必要な国に資金を注入できる新規の条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)への言及も注目しています。前回会合はAPPの新規購入停止が主題であったため、議事要旨にはTLTRO検討の形跡は見られません。それでも、現行のTLTROは今年6月に満期を迎えること、バーゼル3の流動性基準も6月から適用されることなどから、何らの代替オペ導入の可能性は高いと思われます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECB政策理事会を目前に控えた準備』を参照)。

 

(2019年1月23日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録