前回は、父から相続した広い駐車場に課される相続税の問題を取り上げました。今回は、事業用の土地を買い換えする際に発生したトラブル事例について見ていきます。

事業用資産の売却益には20%強の課税が・・・

前回に引き続き、不動産の専門家が相続を円満に導いたケースを見ていきます。

 

【ケース4】Iさん・70歳/子3人
Iさんは東京都内に、本業のための倉庫として利用していた木造2階建ての建物とその敷地を持っていました。倉庫はかなり以前に建てられたもので、床が抜けるほど老朽化していました。そこでIさんは倉庫を取り壊し、土地を売却した代金で神奈川県内に賃貸不動産を買うことにしました。


ただ、都内の土地の値段が高いので、別の物件を買うにしてもかなり売却益が出てしまいます。売却益には20%強の課税がなされます。それを恐れたIさんは、「事業用資産の買換え特例」を使えないかと、顧問税理士に相談しました。

減税となる事業用資産の買換え特例が使えない!?

事業用資産の買換え特例とは、事業用に使っていた不動産(例えば、駐車場用地、アパート敷地、工場用地、店舗用地など)を、同じく事業に使うための不動産に買い換えた場合に、一定の要件を満たすことで適用できる特例です。


例えば、売却した資産と同額以上の資産を購入したとすると、この特例を適用することで課税される売却益が本来の2割になります。これを専門用語で「8割買い換え」と言います。実際の課税は、資産を売却するまで繰り延べられます。つまり、買い換えた不動産を永遠に売却しなければ、課税も永遠にされないということです。効率の悪い不動産を売却し、効率の良い不動産に買い換えて、資産の良化を図るときに使いたい特例です。


Iさんのケースでは、倉庫が立っていたもともとの土地も、買い換える予定の賃貸不動産も、両方とも事業用なので、この点では特例の要件を満たします。しかし、顧問税理士は「他の要件で満たしていないものがあるので使えない」という返答でした。専門家である税理士が言っているのだから間違いはないだろうとIさんは思いましたが、念のためにと弊社に確認に来られました。

 

【土地と土地の買い換えの場合】

次回は、問題点と解決策について見ていきます。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

株式会社財産ドック

幻冬舎メディアコンサルティング

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