前回は、「子供の1人だけに、財産のほとんどを占める農地を相続させたい」というケースの問題点と解決策を取りあげました。今回は、「売却すらできない土地」がもたらした相続問題について見ていきます。

納税資金の心配はないケースだったが・・・

前回に引き続き、不動産の専門家が相続を円満に導いたケースを見ていきます。

 

【ケース6】Lさん・62歳/妻・子2人(長女、次女)
土地の取り合いを生命保険の利用で未然に防いだLさんは62歳で、妻と長女夫婦と一緒に住んでいました。相続税が課せられるほどの財産ではないことは本人もわかっていましたが、知り合いの勧めということもあって、相続の相談に来ていただくことになりました。


財産について確認すると、現在、長女夫婦と一緒に住んでいる自宅と函館に土地を持っているものの、合わせても基礎控除を超えるか超えないか程度で、配偶者の税額軽減を利用すれば簡単に相続税はゼロにできる状態でした。まず納税資金の心配はありません。こうなると残る問題は遺産分割ですが、相続人は妻と同居している長女と、嫁に行った次女の3人です。


妻には生活費を、長女には自宅を継がせるという意志は本人たちにも既に伝えており、残るは次女に何を残すかという問題でした。一応、函館に土地を持っていたので、次女にはそれを相続してもらって納得してもらおうと何とはなしに考えてはいたようです。最悪お金がいいと言われれば、特に有効活用していない土地だったこともあって、いつでも売却して構わないというふうに思っていたのです。

 

【Lさんの家族構成と財産構成】

現地で見たのは、接道もしていない「使えない土地」

筆者が気になったのは、函館の土地は一体いくらぐらいになるのか、ということです。妻への生活費は1000万円、長女に渡す自宅は2000万円になりますから、それに匹敵する程度の金額になってくれるかが気がかりです。最低でも1000万円くらいの価値がないと長女との差が大きく、遺留分にも満たないので不公平になってしまいます。


そこで、活用できていない土地であれば、場合によっては資産の組み替えなども視野に入れようと、実際に価値を確かめるために現地まで飛びました。すると明らかにおかしいことに気がつきます。それは山の中にある1000坪くらいの土地で、しかも接道もしてないため、活用するどころか売却すらできないだろうと思われる土地でした。


Lさんにこの土地はどういった経緯で手に入れたかを訊ねると、25年前に友人が知り合いの不動産会社を連れてきて、「今買っておくと後々高く売れる土地があるよ」とお勧めされて購入したそうです。Lさんは仕事も軌道に乗っている時期で貯金もあったことから投資に興味があり「早く買わないとすぐに売れてしまう」と急がされたのと、遠方なので現地を見ることもないまま、勢いで購入してしまったとのことでした。


今日に至るまで、Lさんは騙されていたことに気づいていなかったのです。

 

次回は、問題点について見ていきます。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策

株式会社財産ドック

幻冬舎メディアコンサルティング

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