パウエル議長の発言と市場の反応

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パウエル議長の4日の発言を受け同日の主要米株式市場は3%を越える上昇となりました。パウエル議長が金融政策の柔軟性や、B/S縮小方針を変更する可能性の示唆などで金融緩和姿勢をにじませたことが背景です。ただ国債利回りは上昇(価格は下落)するなど、ちぐはぐな面もあるため、市場の動向を整理します。

パウエルFRB議長発言:金融政策を柔軟に進めるなどの発言を株式市場は好感

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2019年1月4日にアトランタで開かれた米国経済学会(AEA)の年次会合のパネル討論会でインフレ指標の落ち着きを踏まえ、経済の展開の判断に辛抱強くなる考えを述べる一方で、必要に応じて迅速に金融政策を調整する考えを示しました。

 

またパウエル議長は金融政策の正常化に向けFRBのバランスシート(B/S)で保有する債券の再投資を停止し、B/Sの縮小を進めていますが、必要であれば縮小方針を変更する可能性があることを示唆しました。

どこに注目すべきか:パウエル発言、B/S縮小、雇用統計、為替

パウエル議長の4日の発言を受け同日の主要米株式市場は3%を越える上昇となりました。パウエル議長が金融政策の柔軟性や、B/S縮小方針を変更する可能性の示唆などで金融緩和姿勢をにじませたことが背景です。ただ国債利回りは上昇(価格は下落)するなど、ちぐはぐな面もあるため、市場の動向を整理します(図表1参照)。

 

[図表1]米国国債(2、5、10年)利回りの推移

日次、期間:2018年7月3日~ 2019年1月4日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2018年7月3日~ 2019年1月4日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

まず、これまでの米国株式市場の下落や国債利回り低下の背景となったのはリスク回避姿勢が強まったためと見ています。リスク回避姿勢を強めた要因には米中貿易戦争の悪化懸念や、共和党と民主党の対立という政治不安、一部経済指標の悪化などによる米国の景気見通しの悪化があげられます。

 

2つ目の要因は、景気不安が高まっているものの、米金融当局が景気や株式市場への配慮を明確にしなかった点です。例えば、18年12月20日号の今日のヘッドラインで指摘したように、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見でパウエル議長は正常化政策(再投資の停止)について、保有債券削減ペースの変更は想定しないと述べ、市場への配慮を否定していました。

 

パウエル発言の前まで、株式市場からすれば、景気は心配なうえに、金融政策の下支えも期待できないというダブルパンチを受けていたことが下落の背景と見られます。

 

しかし、4日のイベントとして、パウエル発言前に公表された12月の雇用統計も見逃せません。雇用者数は大幅に改善し、平均賃金の上昇率も市場予想を上回りました。ゼロ成長をも見込むような悲観的な見方に対し、「ちょっと待てよ」と多少なりとも冷静さを取り戻させた可能性があります。

 

 

米国債市場では4日に利回りが上昇(価格は下落)しました。パウエル発言だけが4日のイベントなら利回りが低下しても良さそうなものですが、堅調な雇用統計に反応し利回りが上昇したうえに、パウエル発言により株式市場が上昇したことで利回りが上昇を続ける展開となりました。

 

なお、米国債市場では先月からの利回り低下局面で金融緩和やリスク回避姿勢を反映しやすい2年や5年セクターの利回りが相対的に大幅に低下する動きが見られましたが、4日の市場では小幅ながら修正が見られました。

 

先月からリスク回避姿勢を受け急激な円高・ドル安が進行していた為替市場では、4日は一転して円安・ドル高が見られました。しかし、パウエル議長の発言から利上げペースの減速も見込まれるためドルの回復(円安・ドル高)は108円台前半止まりと相対的に鈍くなっています。

 

最後に、パウエル発言の意味を推し量ると、金融政策に柔軟性(意味は緩和方向)をもたせることですが、背後には過去の発言の軌道修正が迫られた点が大きいように思われます。特にパウエル議長の過去の発言で、B/S縮小は市場動向に関係なく進めると市場に受け取られた点は修正が必要と判断したのかもしれません。金融政策にあらかじめ決められた道筋はない、と述べているのはパウエル議長ご本人だからです。今後の金融政策が読みづらくなりました。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『パウエル議長の発言と市場の反応』を参照)。

 

(2019年1月7日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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