約40年ぶりの改正が決まり、注目が集まる相続法。遺産分割、遺言制度等の見直しや、配偶者の居住権保護のための方策等が盛り込まれています。本記事では、米国公認会計士の筆者が、日本の相続税に関わる疑問をQ&A形式で改めて見ていきます。日米間にまたがる相続問題を取り上げた前回(関連記事『日米間にまたがる相続問題・・・迷いやすいケースとその回答』)と合わせて読むと、より理解が深まるでしょう。

相続税の計算に重要となる「被相続人との続柄」

 Q1  日本の相続税って、一体、いくらぐらい納めるのですか。

 

 A1  相続税の計算は他の所得の税額計算と違って少しややこしいです。通常、所得があるとその課税所得に税率をかけて税額を計算しておしまいですが、相続税はちょっと違います。ややこしいので、ここでは具体的な計算方法は説明しませんが、税率がどれぐらいか下記図表にて示します。

 

[図表]法定相続分に応じた税率と控除額

※遺産額に応じて税率が高くなり、税率は10%~55%になっています。
※遺産額に応じて税率が高くなり、税率は10%~55%になっています。

 

 Q2  もう少し具体的な税額がわかりますか。

 

 A2  それでは、具体例で税額がいくらになるか見てみますが、遺産額がわかれば税額が計算できるわけではなく、相続人が遺産をそれぞれいくらずつ相続したかで、税額が変わってきます。

 

〔設定〕父親が亡くなり、その財産(合計3億4800万円)を相続。相続人は、母親と長男、長女の3人の場合。

 

<ケース1>母親60%、長男20%、長女20%で相続財産を分割した場合の税額

 

相続税の総額は、計算すると7400万円になります。

 

これを上記図表の相続割合で按分すると、各人の納付税額は下記のようになります。

 

母親(60%)・・・4440万円(配偶者税額軽減で納付は0円)

長男(20%)・・・1480万円

長女(20%)・・・1480万円

合 計・・・・・・・7400万円

 

配偶者は納税額がゼロなので、合計納税額は、2960万円(1480万円×2)

 

<ケース2>母親30%、長男50%、長女20%で相続財産を分割した場合の税額

 

相続税の総額は、ケース1と同じ7400万円になります。

 

これを上記図表の相続割合で按分すると、各人の納付税額は下記のようになります。

 

母親(30%)・・・2220万円(配偶者税額軽減で納付は0円)

長男(50%)・・・3700万円

長女(20%)・・・1480万円

合 計・・・・・・7400万円

 

配偶者は納税額がゼロなので、合計納税額は、5180万円(3700万円+1480万円)

 

このように、遺産額が同じでも、それを誰がいくら相続するかによって税額が変わってきます。

「法定相続分 or 1億6000万円」が配偶者控除の対象に

 Q3  Q2に出てきた「配偶者税額軽減」とは何ですか。

 

 A3  これは配偶者控除と言って、配偶者の相続する割合が、

 

①法定相続分(1/2)

 

あるいは、

 

②1億6000万円のいずれか高いほうまで、配偶者の税金から控除できる制度です。

 

つまり、配偶者は、相続財産の法定相続分(1/2)を相続した場合は、金額に関係なく、納税額は0円になるということです。

 

※上記は、制度の概要になりますので、実際の個別のケースの判断は、専門家にご相談下さい。

 

 

五十川 裕久

Two Miles
CPA・MBA・代表,Chief Motivational Officer

 

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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