ヘッジファンドは、常にリスクヘッジを意識しながら、かつ積極的に収益をとりにいく運用スタイルを取ります。今回は、ヘッジファンドの代表的な投資戦略を5つに分類して見ていきます。

相場の「方向性」を予測するロング・ショート戦略

ヘッジファンドを理解するうえで忘れてならないのは、ファンドごとの投資戦略の違いです。一口にヘッジファンドといっても、その運用戦略や投資対象などはそれぞれ大きく異なります。ヘッジファンドを理解する第一歩として、まずは投資戦略の種類を理解しましょう。といっても、ヘッジファンドの投資戦略には様々な分類方法があり、複数あるヘッジファンド調査会社によって、その投資戦略も微妙に変化しています。

 

そこで、ここでは基本となる代表的な投資戦略を大きく五つに分類して紹介しておきましょう。

 

【ロング・ショート戦略(Long/Short Equity)】
株式市場などで、将来的に値上がりが期待できる割安な銘柄を買い(ロング)、値下がりが予想される割高な銘柄を空売り(ショート)する戦略です。相場の方向性を予測して利益を追求する「ディレクショナル型投資戦略」のひとつであり、日本のヘッジファンドでは最も多く採用されています。


近いものでは、「空売り(DedicatedShortBias)」というのもあります。空売り専門の投資戦略で、相場全体が大きく下落したときなどは、大きな収益を得るケースが多いのが特徴です。

 

【マーケット・ニュートラル戦略(EquityMarketNeutral)】
ロングとショートを同程度に組み合わせることで、市場全体の価格変動に左右されない安定的な収益の確保を目指します。たとえば、本来あるべき価格よりも割安な銘柄を買い、逆に割高な銘柄を空売りします。両者の価格が正常な価格に回帰した時点で収益を確保できる仕組みです。

 

こうした市場の歪みを捉えて運用するヘッジファンドは「裁定取引(アービトラージ)型」として分類されることもあり、投資対象によって「転換社債アービトラージ」「債券アービトラージ」といった投資戦略もあります。

ジョージ・ソロスも使う「グローバル・マクロ戦略」

【イベント・ドリブン戦略(EventDriven)】
企業の合併・買収、株価指数の変更などの重要な出来事が起きた際に、そのイベントによって生まれる収益を得る投資戦略です。具体的には、企業のM&A、新規上場、経営破たんといった企業に起こり得る特殊な状況、あるいは株価指数採用銘柄の変更(これらをイベントと呼びます)をターゲットにしています。

 

ただし、一口にイベントを狙って利益を目指すといっても、イベント・ドリブンのなかにも次のような種類があります。


●買収アービトラージ・・・被買収企業の買収前の市場価格と、実際に買収が発表された場合の買収実行価格との差額を狙って投資します。買収が実現すれば大きな利益が得られるものの、買収計画が流れてしまうと大きな損失になります。

●ディストレスト戦略・・・経営危機に陥っている企業をターゲットに投資し、企業の経営が回復して利益を回収する方法や、実際に破たん手続き中の企業の高金利債券や銀行ローンなどをターゲットに利益を確保する方法などがあります。
●マルチストラテジー・・・企業のイベントをメインに、手法に制限を設けずに投資する戦略です。


【グローバル・マクロ戦略】
マクロ経済の動向を予測し、世界各国のあらゆる市場の方向性に投資して、大きなレバレッジを掛けて収益を狙います。世界で最初に誕生したヘッジファンドもグローバル・マクロだったといわれています。英国ポンドを売り崩して英国の中央銀行であるイングランド銀行に勝った男といわれた「ジョージ・ソロス」が運営するソロスファンドも、典型的なグローバル・マクロとして知られています。

 

英国ポンドやアジア通貨の市場価格が、本来の価値よりも高く評価されすぎている、といった「市場の歪み」を狙って投資することで、歴史にその名を残しました。通貨以外に、株式や債券、商品先物など、あらゆるジャンルの金融商品が投資対象になります。


【マネージド・フューチャーズ戦略】
商品(コモディティ)、金利、為替、株式といった流動性の高い「上場先物」銘柄を投資対象に、テクニカル指標や定量分析を駆使して、トレンドフォローを基本にシステム売買を行う戦略です。大きなレバレッジを掛けて、わずかな値動きを収益に変える投資戦略でもあります。「アルゴリズム」と呼ばれるコンピュータを駆使したシステム運用のために、超高速の売買が可能になります。CTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザーズ)とも呼ばれています。

 

これらの投資戦略を見てわかるのは、やはりヘッジファンドが「常にリスクヘッジを意識しながら、かつ積極的に収益をとりにいく運用スタイルである」ということではないでしょうか。こうしたヘッジファンドの姿勢が、富裕層と呼ばれる人々の支持を得て、ここまで発達してきたといっても過言ではないと思います。

 

●ヘッジファンドの投資戦略

 

 

植頭 隆道

ヘッジファンド証券株式会社 代表取締役

 

 

※ 本記事は、2014年4月30日刊行の書籍『ヘッジファンド×海外不動産で組む 鉄壁の資産防衛ポートフォリオ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。


※ 本記事記載の内容は情報の提供および学習を目的としたものであり、本記事を用いた運用は、必ずご自身の責任と判断によって行ってください。また、本記事の内容に関して運用した結果については、著者およびヘッジファンド証券株式会社、株式会社幻冬舎メディアコンサルティング、合同会社幻冬舎ゴールドオンラインはいかなる責任も負いかねます。また、本記事に記載されている情報は2014 年4 月現在のものであり、今後変更されることがあります。

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