相続時に子どもに大きな負担…「貸宅地」をどう処分するか?

本記事では「貸宅地」効率的に処分する方法を見ていきます。

「貸宅地」は等価交換で処分する

価値の乏しい貸宅地を、効率的に処分することは全く不可能なのかといえば、そのようなことはありません。「等価交換」という手段があります。

 

貸宅地の貸主をA、借主をBとしましょう。貸宅地については、土地全体の価値を、一般的に住宅地であれば、Aが底地権(借地権のついた宅地の所有権)という形で4割、Bが借地権という形で6割を持っているとみなされています(下図参照)。

 

このような状態をAが解消したいのであれば、自分の底地をBに買ってもらうという方法が考えられます。仮に土地の価格が1000万円であれば、底地を400万円で買ってもらうというわけです。

 

しかし、貸主側から買い取りをお願いしてしまうと、足元を見られるおそれがあります。不動産の売却については、一般的に、先に「買ってくれないか」といった方が〝負け〞になってしまうからです。

 

たとえば、スーパーで売っているような洗剤なり、ゴミ袋なりの生活用品は無個性であり、定価があるので、売値は特売でもしていない限りは、いつもほとんど変わりません。しかし、不動産は個性が強いので、定価というものが存在しません。また、売る側は通常、何かしらのやむをえぬ事情があって売却を選択することが多く、「買ってもらわなければ困る」といういささか立場の弱い状況にあります。

 

買い手の側は、そのような売り手の弱みを知っているので、「何も積極的に欲しいわけではありませんが、○○円であれば買ってあげてもいいですよ」などと相手の足元を見て、交渉を進めようとします。

 

底地の売却の場合も、その例外ではありません。このような展開になってしまうと、前述した底地と借地権の割合は「3対7」あるいは「2対8」にまでなり、本来であれば400万円で売れたのに、300万円あるいは200万円でしか売れなくなるかもしれません。つまりは、貸主であるAにとってより不利な割合になるおそれがあるのです。

 

したがって、ストレートに借主に貸宅地の購入を申し出るのは、決して得策ではありません。

借地人が家を建て替える時を待って仕掛ける

では、どうすればよいのでしょうか。一つの方法として、借主が住んでいる家を建て替える時期がくるのを待つのです。

 

そしてその時期がきたら、「Bさん、せっかくですから、この機会にあなたも自分の土地を欲しくないですか。この先も地代をいちいち払い続けるのは面倒で煩わしいでしょう。よろしければ、今お貸ししているこの土地は60坪ありますから、30坪をあなたに差し上げます。そこに新しいお宅を建てられたらいい。その代わり、残り30坪はお返しください。いかがですか」などと提案するのです。

 

要するに、Bに貸し出している60坪の土地が現状で1000万円の価値を持っているとしたら、Aは前述したようにそのうちの4割に相当する400万円を、Bはそのうちの6割に相当する600万円をそれぞれ分け合っている状態にあります。それを、土地を半分に分割し、30坪の土地の所有権をAが、残り30坪の土地の所有権をBが持つような状態にするわけです。

 

この提案を図示すれば、下図のようになります。

 

 

もし借主がこの提案を受け入れてくれるのであれば、結果的に、底地と借地権の割合が「5対5」の状態で、Aは底地を処分し、Bとの関係を解消できることになります。

 

たとえば、借主が、「自宅の坪数は減るが、それでも借りている土地ではなく自分の所有物になる方が、将来、自由に売却できるし有利だろう」などと考えれば、提案を受け入れてくる可能性は高いでしょう。

 

その結果Aは、本来であれば貸宅地における地主としての権利は4割にあたる24坪にしか及びませんでしたが、等価交換によって、自分の好きなように利用・処分しうる30坪の更地を手に入れたことになります。実質的には、相場の「4対6」よりも高い、500万円という価格で底地をBに売却できたということになるわけです。

 

これが等価交換の手法です。

等価交換は一にも二にもタイミングが大事

この等価交換が成功するか否かは、一にも二にも、貸主が借主に話をもちかけるタイミングに全てがかかっています。借主側が貸主側の申し出を受け入れてくれそうな状況の時に、仕掛けなければなりません。

 

その際には、「よろしければ、建物の取り壊し費用はこちらでもちますよ」などと、一言付け加えてみてもよいでしょう(ほとんどの場合は、建物の取り壊し費用を負担しても等価交換できる方が利益になるはずです)。建て替え時の取り壊し費用は、本来、借主が負担すべきものなので、相手は「それなら、この話に乗らない手はないな」と、さらに身を乗り出してくるはずです。

 

場合によっては、等価交換の提案をきっかけとして、逆に借主の方から、「実は、私ももう歳をとったので、息子の世話になろうと考えているところでした。よろしければ、借地権を買い取ってくれませんか」などと話をもちかけられるかもしれません。そのような願ってもいない展開になれば、より有利な価格で借地権を買い取ることが可能となるかもしれません。

 

 

なお、この等価交換の提案は、あくまでも貸主の相続が発生するまでに、タイミングを見計らって行わなければなりません。相続が始まってから話をもちかけても、借主は、「ははーん。貸宅地を整理して、その資金を相続税に充てようとしているのだな」と完全にこちらの足元を見てくるはずです。

 

したがって、等価交換の戦略は長期的な視点のもとで行わなければなりません。10年、20年というスパンの中で、「おそらく5年後には建て替えの時期になるだろう。その時に、等価交換の話をもちかけよう」と仕掛けるタイミングを慎重にかつ虎視眈々と見定めておくのです。

小池税理士事務所 所長・税理士

1978年早稲田大学法学部卒業。大学卒業後、興亜火災海上保険(当時)入社。1980年に退職し、石川税理士事務所に入所。1981年日商検定2級に合格。1987年税理士試験合格(簿記、財表、法人税法、所得税法、相続税法)。1989年石川税理士事務所 副所長就任。1994年同所を退職。1995年東京都町田市に小池税理士事務所開業。同年横浜市緑区に事務所を移転。現在に至る。開業以来、農家を中心とした地主の相続税申告を多数手掛ける。事前対策の必要性を痛感し、「家を守る」という観点から、相続の事前対策により重点を置いて活動している。

著者紹介

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小池 誠一郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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