パウエル議長に質問、範囲ですか、中央値ですか?

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パウエル議長の講演を受け、2019年の米国の利上げペースは減速するとの観測が浮上しています。米国短期金利先物市場が織り込む19年の利上げ回数は1回にまで低下しています(図表1参照)。昨日のパウエル議長の発言が利上げ休止宣言とは思えませんが、変化の兆しを示唆し始めた可能性に注意すべきと見ています。

FRBパウエル議長講演:金利は中立金利水準 を「わずかに下回る」をハト派寄りと解釈

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は2018年11月28日のニューヨーク講演で、現在の金利はいわゆる中立金利(景気を加速も減速もしない)水準の幅広い推定範囲のレンジを「わずかに下回る」と述べました。

 

この発言内容などを背景に、市場ではパウエル議長のスタンスがハト派(金融緩和を選好)寄りとの判断を織り込む動きが見られました(図表1参照)。

 

[図表1]ユーロドル3ヵ月物金利先物スプレッドの推移

日次、期間:2018年1月2日~2018年11月28日、19年12月と18年12月限
日次、期間:2018年1月2日~2018年11月28日、19年12月と18年12月限

どこに注目すべきか: FF金利先物市場、中立金利、FOMC、イベント

パウエル議長の講演を受け、19年の米国の利上げペースは減速するとの観測が浮上しています。米国短期金利先物市場が織り込む19年の利上げ回数は1回にまで低下しています(図表1参照)。昨日のパウエル議長の発言が利上げ休止宣言とは思えませんが、変化の兆しを示唆し始めた可能性に注意すべきと見ています。

 

背景として注目した点は次の通りです。

 

まず、政策金利(上限で見れば2.25%)が中立金利に近づく表現に変化が見られたことです。パウエル議長は10月月初のイベントで、(政策金利が)中立金利に到達するまでに『長い道のりがある』と表現していたのに比べ、今回の『わずかに下回る』と、利上げ停止が近いことを想起させる言い方となっています。

 

もっとも、細かな話ですが、注意も必要です。そもそも推定値である中立金利は幅広く見れば2.5%~3.5%程度に分布しています。長い道のりと表現した前回は中立金利の中央値を参照した一方、今回の発言である、わずかに下回るは、分布範囲の下限(恐らく2.5%程度)を参照したと見られます。したがって、実質的には前回と同じことを述べているようにも思われます。

 

その意味で、パウエル議長が今回の発言ではっきりと利上げ休止を宣言したとは考えにくいと思われます。むしろ中立金利と政策金利についての表現方法を(中央値から下限)変えたことなどにメッセージを含ませた可能性を見ています。

 

 

次に、発言のタイミングも注目しています。年末に向け市場に影響を与える可能性のあるイベントが続きます(図表2参照)。例えば、欧州ではイタリア財政問題や、英国の欧州連合(EU)離脱問題では英国議会の採決が年内予定されています。米国は米中首脳会談で米中貿易戦争の行方が大きく変化する可能性があります。12月後半に開催予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)に微妙な影響を与える場合も想定されます。12月の利上げは既定路線としても、来年3回が想定される利上げペースの修正が検討されるかもしれません。

 

[図表2]18年末に向けた主な政治、経済イベント

出所:各種報道を参考にピクテ投信投資顧問作成
出所:各種報道を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

このようなイベントを前に、パウエル議長が利上げ休止を宣言する必要性は低いと思われます。ただし、欧米の中央銀行は金融政策の変更にあたりコミュニケーションを重視する傾向があります。突然利下げや利上げを宣言するのではなく、次の政策の地ならしを徐々に進め、政策変更時の変動を抑える対策をとるのが普通です。今後のイベントの推移を全て予測するのは至難の業ながら、変化の方向があるならば利上げペースの減速で、発言の真意は、その準備であった可能性も考えられるだけに、注目しています。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『パウエル議長に質問、範囲ですか、中央値ですか?』を参照)。

 

(2018年11月29日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は2.11兆円となっています(2018年6月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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