流通量や供給数が少ない分、物件の資産価値や家賃が高く保たれ、空室率も低い京都不動産。本記事では、西院、鳥丸、河原町など京都市内のエリア別に、不動産投資のための地域特性を見ていきます。

京都市を「保全」「再生」「創造」に分けて捉える

京都不動産に対する認知が広がるにつれ、私のところでも他県から京都不動産に関する相談を受けることが増えてきました。そうした方のほとんどが、観光都市としての京都は知っていても不動産投資という観点では、まだまだ京都をよく理解されていないようです。

 

そこで本記事では土地勘のない人でもすぐに理解できる、京都市の不動産投資上の押さえ方について紹介します。

 

京都不動産は、京都市を中心に投資エリアを考えていきます。その中で、土地勘のない方でもすぐに京都市の地域特性を押さえるためには、京都市を3つのゾーンに分けて捉えると分かりやすいでしょう。

 

京都市は特性を踏まえた土地利用の展開を進めており、基本的な市域の活用として「保全」「再生」「創造」という3つのゾーニングを行っています。

 

[図表1]京都の保全、再生、創造のゾーンを示す地図

「京都市都市計画マスタープラン」(2012年2月発表)より
「京都市都市計画マスタープラン」(2012年2月発表)より

人が集まりやすい「再生」ゾーンは投資先として有力

まず京都市は、南を除く東山、北山、西山の三山に囲まれており、北部とこの三山周辺が「保全」のゾーンとして位置付けられています。

 

この「保全」ゾーンは、三山を中心に文化財や史跡の点在する山ろく部、山間部です。景観に恵まれた地域一帯の自然と歴史的な景観を保全すると共に、良好な居住環境の保全・向上や文化、学術、研究機能の集積を図るゾーンとされています。

 

次に市街地のある市の中心部は「再生」ゾーンとして位置付けられています。京都市内は伝統的な京町家が多く残っていながら、一方で商業機能の集積地です。歴史と伝統のある京都市内のよさを残しつつ、再開発(再生)を図っていくゾーンとされています。

 

そして最後に「創造」ゾーンと位置付けられるのは市の南部です。この地域は市中に比べるとまだ新たな開発余地が残っている地域で、これからの京都の活力を担う創造のまちづくりを進める地域として、今後開発が加速していくと考えられます。

 

不動産投資の観点からすると、この3つのゾーンのなかでまず押さえたいのは「再生」に位置付けられている市中となります。京都に本社を置く大手優良企業の会社員や学生といった単身者は、この地域に集中しています。

狙うべきは京都市のど真ん中「田の字地区」

京都の不動産投資でターゲットにすべきは、社会人と裕福な学生といった単身層です。この両方を取り込める場所はどこかと言えば、「再生」ゾーンの市内中心部地域です。

 

京都市内で一番資産価値の高いエリアは、京都市のど真ん中に位置し、ビジネス街となっている「田の字地区」と呼ばれる場所です。田の字地区については、このあと改めて紹介します。しかし最近の傾向としては、新規開発案件は市内中心部から徐々に西側に立地が移行しています。また、先にも述べたように南側の開発も今後目を離せないところです。

 

しかし市内中心部は、旺盛なインバウンド需要によるホテル業界の進出などで、ここのところ地価は高騰してきており、レジデンスの新規開発をするのは容易ではありません。

 

また、せっかくの開発用地も厳しい建築制限があるため、高騰する地価に対して採算の合う開発を手掛けるにはしっかりとした投資計画が必要です。そのため、こうした厳しい条件をクリアして建設されるマンションはかなり優良物件である可能性が高く、市内で新規の物件が出れば、ほとんど買いといってもいいでしょう。

「平安京の内側」を意識して投資エリアを絞る

とはいえ、市中物件のどこまでを検討範囲とすべきか、ある程度の目安がほしいところです。そこで、一番分かりやすいエリアの目安としては「平安京の内側」を意識して投資エリアを絞るのがよいでしょう。

 

21世紀の現在に、平安京を基準にするなんて、と思うかもしれませんが、京都の町は平安建都以来、1200年を経た今も平安京造営の際の碁盤目状の道路、街区構成の上に成り立っています。

 

現在の市街地地図に平安京遷都当初の大路・小路を重ねた図表で確認してほしいのですが、この平安京の内側のエリアは今でも非常に栄えている地域です。794年に桓武天皇によって遷都された平安京は、東西4.5㎞、南北5.2㎞の長方形に区画造営されています。

 

平安京の街区は、北端は東西に延びる「一条大路」を境に、東は南北に流れる鴨川の手前「東京極大路(ひがしきょうごくおおじ)」まで、西は「西京極大路(にしきょうごくおおじ)」です。これを現在の京都市に重ねれば、北は北東に位置する京都御所の半分くらいまで、東はやはり鴨川より西側まで、西端は山陰本線の「花園」駅、地下鉄の「太秦天神川(うずまさてんじんがわ)」、阪急京都線の「西京極」あたりまでとなります。

資産価値が落ちにくく、空室リスクも低い「田の字地区

先ほども少し触れましたが、京都市で一番資産価値の高いエリアは「田の字地区」と呼ばれるエリアです。田の字地区とは、北は御池(おいけ)通、南は五条通、東は堀川通、西は河原町通、この通りに田の字を描くように囲まれた地域を指します。

 

この地区はここ数年でバブルと言っていいほどの値上がりを見せ、分譲された新築マンションも即完売するほどの人気です。価格も高いので利回りは出ませんが、資産価値が落ちにくく、空室リスク、家賃の値下がりリスクも低いのでチャンスがあればぜひ購入しておきたいエリアです。

田の字地区の中でも「烏丸・河原町エリア」に注目

まず田の字地区の中でもど真ん中に位置する「烏丸」エリアは京都のビジネス街として中心的な場所です。金融機関やオフィスビルが集中していて、有名百貨店などの商業施設も集中しています。

 

東西に走るのは「四条通」で、この下を阪急京都線が通っており、「烏丸」駅があります。そして四条通と南北に走る烏丸通の交差するのが「四条烏丸」の交差点で、南北に延びる地下鉄烏丸線の「四条」駅もあります。

 

次に田の字地区のど真ん中「烏丸」から東に鴨川手前に位置するのが、「河原町」エリアです。阪急京都線のターミナル「河原町」駅を中心としたこのエリアは、京都の市街地のやはり中心部で、烏丸から四条通をずっと河原町まで繁華街が続いています。さらに鴨川の風景が相俟って風光明媚なスポットとして観光客にも人気のエリアです。四条と河原町通の交差する四条河原町の交差点は、平日でも観光客でいっぱいです。

 

田の字地区は東京などと比べても非常に地価が高く、限られた場所しかないためにほとんど新規の建設余地がありません。そのため、もし田の字地区の収益物件に出会えれば非常に幸運です。このエリアは、富裕層のセカンドハウスとしての高級マンションなど、坪数百万円という販売価格でマンションが売り出されるケースが多くなっています。

「マンションPBR」が高いほど物件の資産価値は大きい

次に、京都市内でマンションの資産価値の落ちにくい街はどこか、不動産調査会社・東京カンテイが公表しているマンションPBRのランキングから見てみましょう。

 

不動産市場の調査を行っている東京カンテイは「マンションPBR」という数値を定期的に公表しています。

 

マンションPBRとは、株価資産倍率(Price Book-value Ratio)をマンションに当てはめたものです。株価で言えば、1株当たりの純資産に対し、株価が何倍で買われているのかということですが、マンションPBRの場合は、中古マンション価格が新築マンション価格の何倍になっているかを過去10年の平均価格を元に計算したものを指します。

 

この数値が大きいほど、物件の資産価値が大きいと言えます。マンションPBRが1を超えれば、中古マンション価格が新築マンション価格を上回っている状態を示しています。

PBRが上がっているのは京阪線の「神宮丸太町」

図表2を見てください。京都のマンションPBRトップは1.25倍の「神宮丸太町」、近年メキメキと頭角を現してきた地域です。対して田の字地区の「烏丸」は1.09倍の7位。これは、もともと地価が高止まりしている烏丸地区は中古と新築に価格差がそこまで表れない、つまり新築時からかなり高値がついていることを表しています。

 

一方で1倍を超えているわけですから、高値で手に入れても資産価値が全く落ちず、むしろ微量ながら上がっている、ということです。

 

丸太町エリアは地下鉄烏丸線を北上し、京都御苑にぶつかる交差点にある「丸太町」駅周辺です。このあたりも住宅、オフィスが集まっています。市中からは北上しており、広大な京都御苑もあるため、比較的静かな町並みと言えます。そこをさらに東に、鴨川の方に行くと京都大学の医学部があります。鴨川に沿って南北を結ぶ京阪線の「神宮丸太町」が近年PBRを上げてきているというわけです。

 

[図表2]京都市の資産価値が落ちにくい街

「旧平安京」を収益物件の一つの購入基準に

2位につけた「東山」は地下鉄東西線の「東山」駅周辺。平安京基準で言うと鴨川を越えて現在の京都美術館付近です。3位につけた「今出川」は京都御所の北端、やはり昔の平安京よりもわずかながら北です。

 

東西に走る今出川通と、南北に走る烏丸通がクロスするあたりが今出川です。地下鉄烏丸線「今出川」駅を中心とするエリアで、駅を降りると同志社大学の赤れんがの校舎と、京都御所の広大な緑が目に入ります。

 

こうしてみると京都市も旧平安京を中心に徐々にドーナツ化現象のように地価の高騰が出てきているようです。ただし、あくまでマンションPBRは新築と中古の価格差を表したものですから、必ずしも長期的な視点での不動産投資のポイントではありません。今後も地価が上昇していく可能性は高いと言えますが、収益物件の購入基準としては、やはり平安京を一つの基準とするのがいい、と思います。

 

 

八尾 浩之

日本ホールディングス株式会社 代表取締役

 

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    幻冬舎メディアコンサルティング

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