住宅バブルの最高値を遥かに超える現在のリート価格
アメリカのリートに投資する投資信託を例に話を進めましょう。アメリカのリート価格の値動きを見ると、2009年に底打ちし、その後大幅に上昇しています。前回高値は2006〜2007年頃です。
この頃の上昇は、住宅バブルの影響です。そしてその後サブプライムローン問題が表面化し、リーマンショックにつながるわけです。
2015年時点のリート価格(分配金込み)は、住宅バブルの最高値を遥かに超えています。下記の図表は米国リート(分配金込み)の価格推移のイメージと米国債の利回りです。住宅バブルの2006年、2007年よりもかなり高くなっています。
[図表5]リート価格(分配金込み)イメージと米国債(10年)利回り
なぜアメリカのリート価格がこれほど上がったのでしょう。その要因は大きく分けて2つあります。一つは一般にQE1・2・3と呼ばれるアメリカのFRBが行った3回の金融緩和です。市場に放出された資金の一部が不動産市場にも流入して価格を押し上げました。
もう一つはアメリカのリートを投資対象とした日本の投資信託から、大量の資金が流入したことです。この時点で、アメリカのリート市場は100兆円強。日本の投資信託でアメリカのリートに投資する商品は4兆円以上。アメリカのリートを含めた世界リートを投資対象とした投資信託も数多くありますので、それらを合計すると軽く5兆円を超える規模になります。100兆円強の市場に、日本から5%相当以上の資金が流入したのです。
市場規模の5%に相当する資金が流入すると、価格を5%程度押し上げる圧力になるというイメージを持つかもしれませんが、それは違います。身近な日本の株式市場を例に考えてみましょう。
東証第1部の時価総額は600兆円(2015年当時)を超えています。600兆円の5%は30兆円です。30兆円の資金が株式市場に流入すれば、5%どころか大変な上昇圧力になります。2013年にアベノミクスの第一弾が発表されて、日経平均株価が56%も上昇しました。
海外の投資家の買いが相場をけん引したといわれていますが、買い越し額は約15兆円でした。それでも56%も上昇したのです。小泉自民党が郵政民営化法案に伴う選挙で圧勝した2005年に、日経平均は約40%上昇しました。当時も海外の投資家は10兆円強の日本株を買い越しています。
アメリカのリート市場に日本から5%相当の資金が流入したということは、相当なインパクトがあるはずです。もちろん1年で買ったわけではありませんが、一般の個人投資家が購入する投資信託経由で、他国から時価総額の5%も資金が流入するのは異常だと思います。
重要なのは分配金ではなく「これからどうなるか」
先にあげた図表には、米国10年債利回りの推移があります。アメリカの金融緩和策の影響で金利が低下していますが、リートの価格と米国債利回りは逆相関関係が強いものです。金利が下がる過程でリート価格が上昇したという経緯があります。
2015年に入り、アメリカでは「利上げのタイミング」が盛んに議論され、ついに実施の局面に入りました。2018年は3回の利上げが実施され、12月には4回目が予定されています。
この図表を見て、それでも買うという判断ができる人であれば買ってもいいと思います。しかし、こんなに高くては買えないと思うのであれば、分配金が多く出るという理由で選ぶのは間違いだということになります。
毎月分配型投資信託はあくまでも投資対象を見て判断することが最も重要です。分配金や過去の実績だけを見て判断せず、これからどうなるかで判断をしてください。