今年前半にかけ下落傾向が続いた新興国通貨などには割安感が見られるからか、足元、米国株式市場が不安定な局面でも新興国通貨は全般に落ち着いています。ただ、今日のヘッドライン18年10月19日号で指摘したように、メキシコペソには不安材料もあり、逆行する動きとなっています。
メキシコ中央銀行:市場では政策金利の引き上げが幅広く予想されている
メキシコ銀行(中央銀行)は2018年11月15日に金融政策決定会合が予定されています(日本時間16日に結果公表)。市場では政策金利を7.75%から0.25%引き上げて8.00%とすることが幅広く予想されています(図表1参照)。
尚、8月の金融政策決定会合では全会一致で政策金利を7.75%で据え置きましたが、10月の会合では同様に据え置くもメンバーの1人が0.25%の利上げに投票しました。
[図表1]メキシコの政策金利とペソ(対ドル)レートの推移
どこに注目すべきか:移民流入、USMCA、国民意見調査、石油入札
今年前半にかけ下落傾向が続いた新興国通貨などには割安感が見られるからか、足元、米国株式市場が不安定な局面でも新興国通貨は全般に落ち着いています。ただ、今日のヘッドライン18年10月19日号で指摘したように、メキシコペソには不安材料もあり、逆行する動きとなっています。
市場では15日にメキシコ中銀がペソ安に伴うインフレ懸念を抑制するため利上げ予想する声が大半です。ペソ安の背景として次の点が考えられます。
1点目は先に紹介した今日のヘッドラインで言及した中南米からの移民流入です。メキシコと米国で移民への対応に違いが見られ、米国との関係悪化は懸念されます。
2点目は、9月末に政府間で合意された米国、カナダ、メキシコの新たな貿易協定で、新生NAFTA(北米自由貿易協定)とも呼ばれる、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の先行きにやや不安があることです。11月6日の米中間選挙で下院は民主党が過半数を獲得したことで、新生NAFTAは条約の発効に必要な議会通過のため、民主党は修正を求める考えを示唆しています。
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3点目が最も重い要因と見られますが、12月に発足するロペスオブラドール次期大統領政権の政策運営に不安が高まっていることです。例えば、ロペスオブラドール氏は選挙期間中から建設費用を懸念して空港建設の中止を訴え、当選後は国民の意見を聞いて判断するとしていました。10月28日まで実施した新空港(メキシコシティ郊外)建設を巡る国民の意見調査で、約7割が建設中止を支持したため、経済界の反対を押し切り、建設中止を決断しました。その結果、メキシコシティ空港トラスト債券価格は急落しています(図表2参照)。新政権は工事を中止し、現空港と軍用空港などを併用するとしていますが先行きに懸念もあります。また、政府の干渉で工事が中止になったことから投資環境が不安定となったことへの懸念が反映されたと見られます。
[図表2]メキシコシティ空港トラストと石油公社の債券価格
問題は、新空港だけにとどまりません。国営石油会社ペメックスの債券価格も大幅に下落しています。ロペスオブラドール氏は選挙期間中から、ペメックスの石油鉱区入札などに汚職や違反がなかったか調査を示唆、問題があった場合には(国民投票で?)契約の白紙撤回も懸念されます。
これ以外にも、(後に否定しましたが)政府による銀行への介入が市場で噂されたこともあります。責任ある政策と過剰な介入の線引きは難しいのですが、市場の反応を見る限り、今後の政策運営に不安が先立っているように見られます。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『メキシコ次期政権に一抹の不安』を参照)。
(2018年11月15日)
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梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト