中国、外貨準備に見る手詰まり感

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中国外貨準備の減少は、人民元が重要な節目である対ドルレートで1ドル7人民元に近づく中で、中国当局がこれ以上の人民元安を放置できない姿勢が示唆されたと見られます。中国景気に減速傾向が見られる中、中国当局は景気刺激策が求められる中での為替介入に、政策的なジレンマもうかがえます。

中国外貨準備:人民元安が続く中、外貨準備は減少傾向

中国人民銀行が2018年11月7日に発表した10月の外国為替準備は約3兆530億ドル(約347兆円)でした。前月から約340億ドル減少しました(図表1参照)。

 

10月の外貨準備の減少幅は16年11月以来の規模となります。米中貿易戦争の悪化に伴い、急速に進行する人民元安に対し(図表2参照)、中国当局が為替介入で下支えを行った結果、外貨準備が減少したと見られます。

 

[図表1]中国外貨準備と人民元(対ドル)レートの推移

 

[図表2]中国国際収支、ネット金融収支の推移

ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:外貨準備、米中貿易戦争、資本逃避

中国外貨準備の減少は、人民元が重要な節目である対ドルレートで1ドル7人民元に近づく中で、中国当局がこれ以上の人民元安を放置できない姿勢が示唆されたと見られます。中国景気に減速傾向が見られる中、中国当局は景気刺激策が求められる中での為替介入に、政策的なジレンマもうかがえます。

 

これが日本ならば、通貨安(円安)は極端でない限り、歓迎されるところでしょう。しかし、中国では事情が異なります。

 

 

まず、中国は米中貿易戦争の当事国であり、対米貿易黒字の拡大は通商交渉を困難にする恐れがあります。米財務省は10月17日に半期に一度の外国為替報告書を発表しました。今回、米国は中国を為替操作国に認定するのは見送りました。しかし、前回(4月)の報告書に比べ、中国への姿勢は厳しさを増しています。ムニューシン米財務長官は中国の為替の透明性欠如と最近の元安が懸念材料と強い調子で指摘しています。

 

仮に中国を為替操作国と認定すれば、米国は必要に応じて関税を課す可能性もあり、米国に新たな関税という武器を手渡すこととなる恐れもあります。

 

次に人民元安を放置した場合、資本逃避も懸念されます。中国の資本逃避の目安として、国際収支統計の資本勘定でネットの金融収支を見てみると、足元でマイナスに転じています(図表2参照)。同指標は14年から16年頃に大幅なマイナスとなり、巨額の資本逃避が発生したことを示しています。当時の資本逃避の背景は米国の量的金融緩和終了、事実上の人民元切り下げ、中国の金融システム不安などが上げられます。当時に比べ、足元の資本逃避の規模は現段階では小さいと見られますが、今後の動向に注意は必要です。

 

外貨準備を見ると、14年から16年にかけ1兆ドル弱減少しています。対外ショックからのクッションとなる外貨準備の水準は大幅に減少した16年当時と同様の水準となっています。中国の外貨準備残高は世界でも突出しており、ブラジルやインドなど他の主要新興国のおおよそ7~8倍前後と巨額に上ります。ただ、GDP(国内生産)など経済規模対比で見ると、余裕があるとはいいがたい面もあります。心理的なラインながら、中国当局は外貨準備の残高3兆ドルを維持したい意向のようにも見受けられます。

 

最大のジレンマは、中国は景気回復が鈍い中でも通貨安懸念のため本格的な金融緩和に消極的な上、外貨建て債務も含め中国の過剰債務問題は解決途上です。今後の動向を占う上で、中間選挙後のトランプ政権に注目しています。

 

(2018年11月8日)  

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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