介護が原因となって、親のみならず子の世帯までが貧困化し、やがて破産に――いわゆる「介護破産」は、もはや社会問題の一つになっています。しかし、利用する側が積極的に動いて情報を集め、最適なサービスや施設を正しく見極めれば、介護破産に陥るリスクは大きく軽減できます。そこで本連載では、介護破産を回避する「介護サービス」「施設選び」のポイントを紹介します。

親の介護で7割もの人が不安に思っている項目とは?

両親がまだ要介護状態ではない、または十分に意思疎通が図れる状態の時から準備しておくべきことを説明します。

 

全国の男女3376名を対象にした「親の介護に対する40・50代の不安と準備」(第一生命経済研究所)によると、親の介護に対する不安の中でもとくに大きかった項目は「介護を必要とする期間がどのくらいになるかわからないこと」「介護施設を希望しても入れないこと」「親が望む方法で介護できないこと」などで、それぞれ約7割に達しました。

 

また、親と同居している人よりも、ひとり暮らしまたは夫婦ふたり世帯の親を持つ人のほうが、不安が大きい傾向にありました。

 

[図表1]親の介護に対する不安(親の世帯形態別)

第一生命経済研究所「親の介護に対する40・50代の不安と準備」より作図
第一生命経済研究所「親の介護に対する40・50代の不安と準備」より作図

 

しかし、このうちいくつかの項目、そして費用面については、事前の話し合いや準備によって解決することができます。将来に備えて少しずつ準備しておき、いざという時にスムーズに対応できるようにしておきましょう。

「どのような介護サービスを受けたいか」等を必ず確認

1.親の意思を確認(受けたい介護・医療・終末期医療)

 

まず、今後もし介護が必要になったり、今より健康状態が悪くなったりしたら、どのような介護や医療を受けたいのか、施設に入所することになった場合は場所・価格帯をどうしたいか、個室か多床室かなど、親が具体的にどのようなサービスを求めているかを確認しておきましょう。

 

まだ元気でいる親には話しづらいことではありますが、いつどんなタイミングで急に病気になったりけがを負ったりするか分かりません。「今は元気だから大丈夫」ではなく、財産分与と同じように、いざという時に備えて話し合っておいてください。

 

また、いかに死にたいか―終末期医療をどうするのかについては、必ず本人の意思確認をしておきましょう。とくに、終末期に人工的に栄養を補給する「胃ろう」や「中心静脈栄養」などの延命治療を本人が望むかどうかの確認は大切です。

 

たとえば胃ろうになった場合、本人の意識がないままで、数カ月、数年とその状態が続く場合があります。その期間ずっと、月額数万円の医療費がかかり続けます。

 

本人への意思確認ができない場合、家族がいつまで続けるかの判断をすることになりますが、家族間で意見が割れてしまったり、本人が望まない形になってしまうことを避けるため、前もって本人の希望を書き残しておくことが重要です。

 

2.家の資産を確認(年金・貯蓄額)

 

いざ介護が必要になった段階で費用に困らないように、親の貯蓄額と毎月の年金額、必要な生活費について聞いておきましょう。

 

そして、親の希望する介護にはどれくらいの費用がかかるか調べた上で、もし親の資産だけでは希望の介護が受けられない場合、足りない費用をどこから捻出するのか(たとえば兄弟姉妹の誰がどれだけ出すのか)、これから資金を貯めるのか、もっと料金の安い介護サービスを検討するのか、具体的に計画します。

 

たとえば特別養護老人ホーム(特養)の個室だと予算オーバーという場合も、2~4人部屋などの多床室なら、毎月の費用を数万円は下げることができます。

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    本連載は、2017年6月23日刊行の書籍『人生を破滅に導く「介護破産」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。介護保険サービスの金額は、社会福祉法人サンライフの金額を参考に記載しています。実際の金額は利用する施設などへお問い合わせください。本来、施設の種類によって「入居」「入所」と書き分けるべきですが、文章の分かりやすさに配慮し、すべて「入所」に統一しています。

    人生を破滅に導く「介護破産」

    人生を破滅に導く「介護破産」

    杢野 暉尚

    幻冬舎メディアコンサルティング

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