前回は、勉強を「続けられる仕組み」の作り方を解説しました。今回は、勉強する習慣が身についていない生徒のための、勉強のスムーズな開始を促す「環境づくり」の方法を紹介します。

勉強を始めるコツは「まず5分だけ」

勉強習慣が身に付いていない人におすすめの勉強を続ける仕組みは、「まずは5分だけ」と思って始めることです。「5分だけ勉強したらやめてもよい」と思って始めるのです。これから2時間ぶっ続けで勉強するぞ、となるとなかなか机に向かえなくても、5分だけと決めておけば始めるためのハードルはぐっと下がります。

 

5分くらい勉強する頃には、勉強をもうすこし継続してもいいかなと思えるようになっているはずです。

 

これは、心理学者のクレペリンが発見した「作業興奮」と呼ばれる状態を利用した方法です。はじめはやる気がなくても手を動かし、脳を働かせることで、脳の側坐核と呼ばれる場所から、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されます。

 

このドーパミンには人間のやる気を引き出す働きがあるそうです。このドーパミンの効果は、やり続けることによってどんどんアップします。やる気がアップすれば、さらに脳の働きが加速度的に良くなります。無理をすることなく、勉強でも作業でも続けることができるのです。

 

これは、やる気にスイッチを入れるようなもの。だからこそ、まずは5分始めることが大切なのです。最初の5分をスッと始められさえすれば、あとは脳が働いてくれます。大変なのは、何もしていない状態から始めるというところですから、そこさえ乗り越えれば、止まらない状態になって、いくらでも続けられるというわけです。

 

自転車をこぎ出すときに重く感じたペダルも、やがて重さを忘れてしまい、快調にこぎ進むうちに自然と回転数が上がっていくような感覚です。勉強に取り組むための仕組みの一つがこの「5分だけ、始めてみる」ことです。

 

勉強を始めるためのハードルを下げておくことによって、気持ちにストレスをかけずに、スッと始められるようになります。

 

やる気は待っていても湧いてきません。とりあえず、すこしだけ。まずはやってみるくらいの気持ちが、勉強を始め、続けるための一番のコツなのです。

ハチマキを巻いて気合いを入れるのは逆効果?

とりあえず始めるということの対極にあるものが、ハチマキだと思います。「今から、集中して勉強するぞ!」と自分を含め、周囲に宣言するために巻くハチマキですが、それはむしろ逆効果になってしまいかねないものです。

 

ハチマキを巻いて気合いを入れることによって、普段のリラックスした状態と勉強している状態を分けようとしているのかもしれません。

 

しかし、勉強はむしろ日常的に、リラックスして行いたいもの。気合いを入れるのもいいけれど、1年間ずっと気合いを入れているなんて、そんなことは不可能です。

 

新しいことを始めるときに道具をそろえ、スタイルを整えるといった「形から入る」ことで、気持ちを盛り上げる方法は確かにあるでしょう。やりたい行動、始めたい行動のきっかけになることですから、これは役に立つことです。

 

しかし、その道具としてハチマキが有効だとは思えません。ハチマキを巻くことによって「とても大変で難しいことに取り組むぞ」と自分に言い聞かせるわけですから、勉強はますます敬遠したいものだと感じるようになってしまうでしょう。

 

受験勉強は気合いで乗り切れるような「短期決戦」ではありません。もう、ハチマキに頼るスタイルはやめましょう。

 

最初の5分をスタートするためには、リラックスできる心地よい環境が必要です。塾や予備校の自習室も集中できる環境が整っています。カフェなどの快適な空間も悪くありません。リラックスして机に向かうことで、落ち着いた状態で勉強を始められるはずです。

運動と同じように「ウォーミングアップ」が大切

最初の5分をスタートするためには、リラックスできる心地よい環境が必要です。塾や予備校の自習室も集中できる環境が整っています。カフェなどの快適な空間も悪くありません。リラックスして机に向かうことで、落ち着いた状態で勉強を始められるはずです。

 

勉強に取りかかる、最初の5分。この5分のために軽めのものを用意しておくのがお勧めです。

 

計算トレーニングや、前日の復習などが良いでしょう。勉強は始めるときが最も大変です。入試問題のような重い内容に急に取り組もうとすれば、たった5分すら乗り越えられないということにもなりかねません。何を身に付けるかという内容はこの際無視して、助走をつけるつもりで始めてみてください。

 

例えば、私たちの予備校では、前日に扱った内容について翌日に復習テストをしています。前日の内容を解くことで脳のストレッチを行うのです。

 

自分で学習する場合でも、5分程度で終わる分量、難易度が最適です。最初にこの作業を行うことで、自然と勉強モードに入っていくことができます。一度この状態になれば、続けるのはぐっと簡単になります。い

 

逆に、最初の5分に向かないものは現代文や数学の証明問題など。現代文はそもそも長文ですから、5分で読み終えることができませんし、扱う内容も難解なものが多く、嫌になってしまいやすいのです。数学についても、5分以上かかるような問題を選択するのは避けたほうがよいでしょう。

 

とにかく、5分でできることを用意しておきましょう。あまり深く考え込むことなく、手を動かして始められるものがお勧めです。スッと入り込んで、作業的にどんどん解くうちに、作業興奮の状態に入り、脳が活性化し始め、やる気ホルモンのドーパミンが放出されます。

 

どんなスポーツを始めるときでも、最初にウォーミングアップとして軽く走ったり、ストレッチをしたりするのと同じようなものです。ウォーミングアップには、運動をするスイッチを入れていく役割があります。体を動かしながら、脳を動かしていくのです。

勉強に飽きたら「休む」「やる内容を変える」でOK

勉強を始め、気分も乗ってきた。けれど、なんだかまた面倒になってきた。そんなこともあります。いわゆる飽きた、という状態です。そうなったら、いったん休んでください。無理に続けても非効率です。

 

ただし、休む時間と再開の仕方を決めておきましょう。5分、10分休んで、再開時にはこれをすると決めてみてください。あまり長く休憩をとると再開する際にまた面倒だと感じてしまいますから、短く休むのもコツです。

 

再開時には、同じ内容から始める必要はありません。休憩の間に頭が整理され、もう一度同じことに取り組もうと思えるのならばそれでかまいませんが、こだわる必要はないのです。

 

なにしろ、中断の理由は飽きてしまったということなのですから。やりたくもないことから始めるのはハードルの高いことです。別のことをやっているうちに、また気分が変わることがあります。休憩前にやっていたことから始めなくても、いずれはそこに戻ってきます。過度なこだわりは禁物です。

 

いったんやり始めたら、とことんやり続けなくてはならないということはありません。「飽きたら休む」「飽きたら変える」というのは、長く学習を続けるために有効な技術なのです。

 

少しほかのことをやってみて、脳の側坐核が刺激され、ドーパミンが出てくれば、多少の面倒は乗り越えて、着手することができます。できるだけストレスのない状態をつくることで、取りかかりや継続のハードルを下げていきましょう。

 

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