今回は、不動産投資で「買ってはいけない」物件の見分け方を見ていきます。※本連載では、会計事務所ロイズ会計代表・税理士の石井彰男氏の著書『不動産投資のお金の残し方 裏教科書 税理士大家さんがコッソリ教える』(ぱる出版)より一部を抜粋し、儲かる「物件の選び方と節税方法」について解説します。

スタートがマイナス収支から始まる投資

不動産投資が流行りだして、もう20年近く経ちますが、実は、今も昔も儲かる物件、損をする物件というのは変わっていません。

 

損をする物件、絶対に買ってはいけない物件としての代表格が、新築ワンルームマンションです。

 

新築ワンルームマンションは買う前から、損失が出るのが確定されている商品です。

 

わたしは不動産投資を始める前も後も、新築ワンルームマンションには全く興味がなかったのですが、税理士の仕事をしてからお客様の中に、新築ワンルームマンションを選考したがる方がいるというのがわかってきました。

 

お話をうかがうと、「不動産投資をして副収入を得たい気持ちはあるのですが、いきなり一棟物を買うのは気が引けるしリスクが高いのではないか」という意見が多いことがわかりました。

 

ですが、ここで説明をするまでもなく、新築ワンルームマンションは投資として成り立っていないのは収支を見れば明らかです。

 

そもそものスタートがマイナス収支から始まっているからです。

 

ですので、投資目的で新築ワンルームマンションを買うのは、完全なタブーですね。

 

中には、そのように説明してもご理解いただけない方もいるので、「何でも試してみる」という実践型税理士を標榜するわたしは、どんな営業トークをしているのか気になり、新築ワンルームマンションを売っている業者に問い合わせて、営業をかけてもらったことがあります。

 

実際に数回ほど話を聞いてみました。

 

いずれも違う会社の違う営業マンですが、どれも新築ワンルームマンション業界では有名どころばかりです。

 

まず、最初に資料請求をします。そうすると、数日以内に電話がかかってきます。

 

「新築ワンルームマンションを扱っている、株式会社ABC不動産(仮名)の東雲結子(しののめゆいこ)(仮名)といいます。新築ワンルームマンションをお探しなのですか?少しだけなのでお会いするお時間いただけますでしょうか?ほんの5分ほどで構いません。」

 

電話がかかってくるのは、女性が多かったですね。

 

5分で話が終わるわけがない、と心の中で思いながら、矢継ぎ早やに質問を投げかけてくるのが面倒なので、さっさとアポを取ります。会う場所は、近くの喫茶店を指定します。

 

会社に来てくださいと言われても、時間がもったいないので必ず近くの喫茶店で話します。

「弊社の物件は駅5分で客付けには困りませんよ」

営業マンは1人で来る場合と、2人で来る場合にわかれます。

 

1人で来る場合はある程度慣れたベテラン営業マンが多く、2人で来る場合はベテランの営業マンの男性と見習いの女性の営業マンという組み合わせが多かったですね。

 

1人で来る場合には、女性のみで来ることもありました。

 

まず最初に、うちの物件はこれだけすごいんだ!という話から始まり、たたみかけるようにこれだけの販売数や実績があり、今の不動産市況なら早く始めるべきだし、しっかりとした大手の施工業者が建てているので購入後も安心、集客力にも問題ない、といった話が続きます。

 

「弊社の物件は駅5分で客付けには困りませんよ。」

 

「しかも、見てください!このエントランス。とっても綺麗でこれだけの高級感が出せるのはうちのABCシリーズだけで、お客様からもとても好評をいただいておりますぅー」

 

うん、まぁ新築分譲マンションだから好立地で高級感がないと誰も買わないよね、というわたしのつぶやきを無視するかのように、東雲さんはトークを続けます。

 

その後、次に不動産投資のメリットを話していきます。

 

メリットの部分では、大体、団信に入れば生命保険代わりになっていいですよね?という感じになっていきます。

 

「実は、不動産投資を始めて団信に入れば、もしもの時、借金がチャラになるんですよ!ご存知でしたか?」

 

毎回この流れなので、心の中で「出た!団信トーク!」と思いながら、表情は一切崩さずに相手の話に耳を傾けます。正直、新築ワンルームマンションで打ち出せるメリットはそのくらいしかないのでしょう。こんな売りにくい物件を必死に説明する東雲さんの姿を見て、逆に同情が芽生えてきました。

 

団信に入れば生命保険代わりになるというのは、収支が合わなくてマイナスのキャッシュフローだから、毎月数万円支払う生命保険料よりも得じゃないですか?という鉄板のセールストークですね。

 

「そして、生命保険に入って毎月いくらか支払うのであれば、新築ワンルームマンションを買って団信に入ることでご家族の安心も手に入りますよー。そちらの方が将来的にも安心感を得られるんじゃないでしょうかー?」

 

でも、普通に利益が出る物件を買って、それに団信つければもっといいですよね?というごくごくまっとうな突っ込みを入れたくなりましたが、奥歯をグッと噛みしめ、膝をつねりながら相手の言うことに「うん、うん」とただうなずきながら話を聞いているうちに既に1時間経過していることに気付きました。

不動産業者からの営業を俯瞰した立場で受けてみる

最後に私からこんな質問をしてみました。

 

「東雲さんって年収どのくらいあるんですか?」

 

直球の質問でしたが、相手は少し考えた後、「大体1000万円くらいでしょうか」と誇らしげに答えてくれました。

 

他の会社の営業マンにも聞いてみましたが、似たような年収でした。

 

うーん。

 

新築ワンルームマンションの営業って稼げるんですね。その稼ぎは、新築ワンルームマンションを買ったことで涙を流している不動産投資家のコツコツ貯めてきたお金が入っていることで成り立っていることを忘れないで欲しいものです。

 

他の新築ワンルームマンション会社に関しても、大体がこのような内容に終始していました。新築ワンルームマンション業者の営業トークを聞いてみたいという、単なる好奇心から始まった今回の話ですが、営業マンからすればさぞかし迷惑な客だったことでしょうね・・・

 

この話を読んでいただいてもわかるように、新築ワンルームマンションは利幅が大きいので会社も儲かるし、従業員も儲かるという具合です。

 

でも、肝心の投資家が儲かることはないのです。

 

新築ワンルームマンションは、基本的に物件価格が高いので投資家は利益が出せないようになっています。

 

聞くところによると、新築ワンルームマンションは積算価格が販売価格の半分以下くらいしかないそうです。

 

物件に利益が乗りすぎて価格が高くなっているため、積算価格も低くなり、それに伴い利回りも低いという特徴を持っているのが新築ワンルームマンションとなりますね。

 

特に東京の新築ワンルームマンションの価格帯は2000万円~2600万円といったものが多いですから、それを買うくらいなら、地方の木造アパートを購入した方がずっと利益を出せるでしょう。

 

実は、わたくし、一時話題となったかぼちゃの馬車で有名なスマートライフ(スマートデイズ)の営業も受けたことがあります。

 

その時の営業マンは入社1年目(正確には6か月)の新人の方だったので、事業の深い部分は聞けませんでしたが、事前にスマートライフの情報については耳に入っていたので、実態を探りたいと思い、興味本位で話を聞いてみた次第です。

 

このようにいろんな不動産業者からの営業を俯瞰した立場で受けてみるというのも、買ってはいけない物件、買っても良い物件を取捨選択する上で、ご自身の物件選びの技磨きをするのに役に立つかもしれませんよ。

 

 

石井 彰男

会計事務所ロイズ会計 代表
成功する大家さん塾 主宰
税理士大家さん

 

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