営業マンが強く勧める物件は「売れ残り」ばかり!?
では、担ボーはどのような物件に付くのでしょうか。実際のところ、多くの人にとって価値があると思える家は広告を出さずとも売れていきます。ですから、担ボー付き物件は、どうしても売れ残り物件となります。となると、担ボーで儲けたい仲介業者の営業マンが強く勧める物件は、売れ残りばかりということもできるでしょう(下記図表3参照)。
[図表3]
そして、その金額は、5000万円の家を一棟売れば150万円になり、4000万円の家なら120万円になるのです。率にすればたった3%ですが、金額にすれば首都圏近郊で100万円、200万円の担ボーになる! そうとわかれば、担ボー付き物件を勧めるのもムリはありません。
さらに、担ボー付き物件に狙いを定めて、年に5棟、10棟を販売できれば、その営業マンはまさに濡れ手に粟です。そうなると、一発の儲けが大きい彼らにとって大事なのは、どんなお客さんと知りあうかということだけです。運よくカネ回りのいいお客さんと知りあうことができ、担ボー付き物件を勧め、購入してもらえば万々歳なのです。
「ふざけんじゃないよ。売れ残り物件を勧めておいて、100万円以上もよけいに儲けているのか! まったくの悪徳業者め・・・」と、仲介業者の営業マンに向かって怒りだす人がいるかもしれません。
でも、ちょっと気持ちを静めてください。あなたにとっては理不尽に思える取引のやり方でも、この業界では“黙認された成功報酬”なのです。
悪いのは「不動産業界そのもの」!?
「担ボー(担当者ボーナス)」といったような成功報酬を得る仲介業者の営業マンは、本当に悪徳なのでしょうか。フルコミッションであるか固定給であるかにかかわらず、より稼ぎが多い仕事に向かうのは、一般的な職業心理・就業心理としては当然のことです。その報酬を狙う彼らを一方的に責めることはできません。
悪徳なのは、その仲介業者の営業マン個人ではありません。なぜなら、これは不動産業の取引のしくみのなかで起こっていることだからです。
もし、だれが悪徳なのかを特定するとすれば、それは不動産業界そのものです。悪いのは、取引全体のしくみをブラックボックスで覆い隠し、一般の人はだれも踏み込むことができないようにした業界そのものなのです。
「業者が儲けやすい業界だ」という意識を持つ
その意味では、業者、営業マンのやり口が悪質・悪徳だというのではなく、業界全体が「構造悪」の状態で、そのなかで業者や営業マンは黙認された仕事をしている、という言い方が適切なのかもしれません。そのような取引構造が両手取引、両手片足取引などという、より儲けの多い取引の温床の入り口ともなっています。
ですから、みなさんにとって大事なのは、「家を売ったり買ったりするときは、このような『不動産業界』を相手にしている」という事実を知ることなのです。
この連載では、どんどんこのブラックボックス=構造悪の実態をお伝えしましょう。まさに、「パンドラの箱」を開けるのです。
大友 健右
株式会社アルティメット総研 代表取締役社長
株式会社プロタイムズ総合研究所 代表取締役社長