担当スタッフと話せば、会社のポリシーが垣間見える
モデルハウスでは「ひとを見る」ことも大切です。その会社の全てが分かるわけではありませんが、モデルハウスを担当するスタッフと話すと、家づくりに対する姿勢やポリシーを垣間見ることはできます。
担当者との相性はとても大事で、話しやすい、こちらの意図をすぐに読み取ってくれるといった感触をつかむことができれば、もう少し突っ込んだ話をしてみようという気になるものです。
建築知識が豊富だからよいというものでもありません。自由設計の家では、建て主の要望をきちんと受け止める理解力が大切です。その点では新入社員もベテランも変わりありません。こちらの意見を一生懸命聞いて、分からないことは上司に相談してすぐにレスポンスしてくれる。そんな新人ならよい家を建ててくれそうに思います。
反対に、家づくりの専門家だから何でも知っているといった高慢な態度を示すベテラン社員に相談してみようという気は起こりません。一事が万事というわけではありませんが、担当者との相性は気に留めておきたいものです。
自分の価値観なくしては、満足できる家は建てられない
誰もが自分の家だけはよいものをつくりたいと考えます。住宅雑誌を買い込んだり、モデルハウスを見てまわったりするのは、少しでもよい家を建てたいと願うからです。しかし、どれだけの人が自分の家に満足しているでしょうか。新築の喜びを嚙みしめる人がいる一方で、不満な毎日を送る人もたくさんいます。
そうしたことから、「家は3回建てないと理想の家にならない」といった格言めいたものが生まれたのでしょう。自分が建てた家に心から満足する建て主は案外少ないことが推察できます。
人の価値観が多様であるように、建築業者の価値観もそれぞれ異なります。日当たりと風通しのよさに快適さを求める建築業者もいれば、断熱・気密・換気によって快適さを得る建築業者もいます。建て主がその選択を誤れば、不満だらけの家が建つでしょう。
自分なりの価値観を持たない建て主の家づくりを想像してみましょう。ある人は、建築業者の価値観にしたがって家を建ててしまうでしょう。あるいは、家相や方位を過信して設計をくるくる変えてしまうかもしれません。
結局のところ、自分の価値観をもたない建て主は、家が完成しても心から満足することはありません。他人の意思・意見に左右されて家をつくっているのですから当然です。
契約を急がせる業者は絶対にNG!
満足度の高い家を建てるには、家に対する価値観を明確にすることが大切です。
居住性・快適性の高い家を建てたいのであれば、省エネ住宅を専門に手がける建築業者を中心に探しましょう。床暖房の家に住みたければ、床暖房の実績が豊富な建築業者を探しましょう。これだけで時間的なロスを大幅に解消でき、しかも要望どおりの家を建てることができます。
その過程で、スタッフとのコミュニケーションを図りながら、相性も見極めるのです。
契約を急がせる建築業者は、誠意があるとは言えません。契約するのは簡単ですが、解約するのは容易ではないからです。それでも、多くの困難を乗り越えて契約解除を実現し、私のところに相談に来る建て主は、毎年複数人います。その一方で解約できず、嫌々家を建てる建て主も少ないとは言えない現状があります。
ここに至るまでに色々と述べてきたので、整理がついていない方もいると思います。次に「建築会社の正しい選び方」をまとめますので、ぜひ参考にしてください。
時代の進展とともに、建て主(とそのご家族)と職人との付き合い方も変わってきました。現在では、建築中に茶菓子の接待をする習慣はほとんどなくなりました。都会では、地鎮祭や上棟式を省略することもあります。
そうした風潮になっているとはいえ、建て主としての自覚は失ってほしくありません。茶菓子は不要ですが、建築現場では職人たちに「ご苦労さま」のひと言をかけてあげてください。そのひと言があるだけで、職人のモチベーションは格段に向上するからです。
兼坂 成一
株式会社ウェルダン 代表取締役社長
一級建築士