本記事は、不動産オークションにおける「売却見込価格」の算出法を見ていきます。

「売却の足かせ」になる問題点は事前に解消しておく

最初に相談にやって来るとき、多くの売主がする質問は、「この物件は売れますか」「売れるとしたら、いくらぐらいで売れますか」というものです。

 

まず「売れますか」という質問に対する答えは簡潔にお伝えすれば「どんな不動産でも売れます」というものになります。ただ正確には「売れるような状態まで持っていきます」というほうが適切かもしれません。売却の足かせになるような問題点やマイナス点を事前に解消するからです。そういう意味で、持ち込まれた物件のすべてがオークションの検討対象になります。

 

ただし、最終的な落としどころとして、相対取引を選ぶケースも出てくることがあります。それは、相対取引のほうが売主や物件にとってメリットが大きいと判断した場合です。具体的には、物件が特殊(境界確定を完了できない、私道の通行掘削承諾書が取れない、道路に接していない、建物に不法占拠者がいる等)でオークションにかけても競り合いになりにくく、高額入札が期待できない場合や、相対で狙い撃ちするほうがスムーズに売ってしまえるという場合、売主が特定の買手に売ってほしいと指定してきた場合などです。

 

そうした事情があるもの以外は、オークションの開催を前提として、買手が魅力を感じて高値を入札してくれるように、できるだけブラッシュアップをしていきます。

適切な売却見込価格を算出する「取引事例比較法」

次に「いくらぐらいで売れますか」という売主の質問に対しては、最初に不動産の売却見込価格を提示します。土地は一物四価のいずれかをベースとして大枠の概算を出せますし、「取引事例比較法」という方法で、より適切な価格を算出できます。

 

取引事例比較法は近隣地域や類似地などの取引事例を多数集めて、適切な選択を行い必要に応じて事情補正、時点修正をし、かつ、地域要因、個別的要因の比較を行って価格を求める評価手法です。

 

建物の価格については減価償却法を用います。建物がアパートやマンションなどの収益物件の場合は、収益還元法によって収益価格を求めます。

 

こうした売却見込価格を最初の段階でお知らせしますが、ほとんどのケースでは売却見込価格を上回る値段で売れていきますので、あくまで目安であり、実際の売却価格の最低ラインと考えてもらってよいでしょう。ただし、この売却見込価格を把握しておくことによって「少なくともこの価格以上で売れる可能性が高い」という安心感が生まれるため、売主の多くが積極的にオークションに臨むことができます。

 

 

土屋 忠昭

株式会社共信トラスティ 代表取締役 不動産鑑定士

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    本連載は、2018年3月23日刊行の書籍『不動産は「オークション」で売りなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    不動産は「オークション」で売りなさい

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    土屋 忠昭

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