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仮想通貨取引所Huobiが香港証券取引所に「裏口上場」
2018年8月29日、仮想通貨の取引高で世界トップ3に入るHuobi(フォビ)が香港証券取引所に「裏口上場」したことが、香港証券取引所のウェブサイトを通じて明らかになりました[図表]。
この裏口上場とは、一体どのような上場であり、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
8月29日の発表資料によりますと、香港証券取引所のGEM市場上場の桐成控股有限公司(Pantronics Holdings Limited)の発行済み株式のうち、Huobi Global Limited(ケイマン諸島法人)が66.26%、ブロックチェーンサービスプロバイダープラットフォームのFission Capitalが5.41%を取得したとのことです。
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つまり今回、Huobi取引所を運営するHuobi Global Limited(セイシェル法人)の親会社であるHuobi Global Limited(ケイマン諸島法人)は、香港証券取引所に上場している会社の株式の過半数を買収して支配株主になり、これをもって香港証券取引所に裏口上場したと言われています。
裏口上場をさらに平易に言うなら、「すでに上場している会社の株式の過半数を買収し、事実上、上場したのと同じ効果を得ること」です。
裏口上場のメリット・デメリット
★メリット1★上場手続きに要する時間が節約できる
通常、証券取引所に上場するための手続きには非常に長い時間がかかります。例えば、東京証券取引所に上場しようとする会社の場合、実際の上場の2、3年前から主幹事証券会社と共同で準備する必要があるでしょう。しかし裏口上場であれば、上場手続きに要する時間を節約することができるのです。
これは、仮想通貨業界のように、変化のスピードが非常に速い業界においては魅力的だといえるでしょう。
もっとも、香港証券取引所の場合、日本の上場に比べると上場手続きをスピーディに行うことができ、上場準備から上場まで1年以内というケースもあります。そのため、表向きは時間の節約が理由にはなりますが、裏口上場を行う第一の理由とは言えないかもしれません。
★メリット2★上場審査を回避できる可能性も
香港証券取引所に上場しようとする場合、事業を営んでいる全ての国・地域でその事業が合法であるかを審査されます。
仮想通貨取引所の場合、黒とまでは言えないまでも、グレーの領域でビジネスを営んでいる場合があるかもしれませんし、そもそも法律が追い付いていないため黒か白か判断の難しい場合もあると思われます。グレーということでは上場審査を通らず上場できない、少なくとも、何度も折衝をする必要があり上場までに時間がかかってしまうわけです。
しかし、裏口上場であれば、合法であるかどうかの審査を回避できる場合があります。その点が、上場を目指す会社にとってのメリットといえるでしょう。
ちなみに、マカオでジャンケット事業(ハイローラーと言われる大口顧客を連れてくる事業)を営んでいる会社など、ギャンブル業界の企業が数多く裏口上場をしていますが、審査回避目的ではないかとの疑いの目も向けられています。マカオではジャンケット事業は法で認められているのですが、何かしらグレーな事業を行っているのではないか、と多くの人が想像しているのです。
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★デメリット1★高額な買収費用がかかる
もちろん、裏口上場にもデメリットがあります。裏口上場とは上場している会社を買収することなので、買収費用がかかるという問題があります。実際にビジネスを持っている会社を買収する場合、そのビジネスの価値が買収価格に含まれることになります。
弊社が過去に裏口上場の相談を受けた際、いくつかの買収候補を見ましたが、ビジネスがほぼないに等しい会社でも、上場企業であるというだけで、10億~20億円以上からと、かなり高額な売買代金を提示されたこともありました。「上場している」という事実が価値に上乗せされているわけです。
★デメリット2★負の遺産を引き継ぐ危険性が高い
対象会社のプラス面のみならず、マイナス面をも引き継ぐことにもなります。マイナス面としては、債務(簿外債務も)、従業員・元従業員との紛争、過去の違法行為に基づく問題などです。
裏口上場用に売られている会社は、ビジネスがほぼ空っぽの会社も多いのですが、ビジネス(会社のプラス面)がないからといって、様々な負債(会社のマイナス面)もないとは限りません。むしろ、マイナス面の多い会社だから売りに出ているということも少なくありません。
そのため、対象会社の会計・法務などを精査するデュー・ディリジェンスが重要になってきます。また、対象会社の株式の売主が買主に対し、表向きの契約書の形では残しにくい要望を突きつけてくるような場合もあり、買収の交渉が難航する場合もあります。
仮想通貨企業は、業界の変化が激しいためスピーディな対応が必要であること、各国の規制が追い付いていないためにどうしてもグレーな面があることから、裏口上場をする・しようとするケースは、今後も多くあるでしょう。
裏口上場については、白か黒かといった単純なジャッジではなく、その都度、個別に考え判断することが重要だと思われます。
小峰 孝史
OWL Investments
マネージング・ディレクター・弁護士
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