調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
5/19(日)>>>WEBセミナー
調査官の質問内容は家系、学歴、趣味など多岐にわたる
税務調査において、午前の部で行われるヒアリング調査での個々の質問と、それにどう対応すればいいかを、順を追ってご説明していきましょう。私が30年間の税理士人生で培ってきた税務調査の万全マニュアルです。
税務調査官は、まずは下記の6つの事柄を質問してきます。
①親族の状況について(氏名・年齢・職業・年収・所有不動産の有無)
②亡くなった人の学歴や職歴について
③転居・不動産の売買について
④亡くなった人の趣味
⑤生前の生活費について
⑥預貯金は誰がどのように管理していたか
今回は、①から③の質問について具体的に見ていきましょう。
①親族の状況について(氏名・年齢・職業・年収・所有不動産の有無)
調査官が一番初めに確認してくるのが、どんな親族がいて、現在どのような状況にあるかということです。親族の範囲については、税務署側は亡くなった人を中心に、戸籍を調べて親族の家系図を作るなどして、すでに把握できています。これには子どもたちやその連れ合いという近親者だけでなく、甥や姪、さらにはその連れ合いまでが含まれます。
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相続税の税務調査の実態と対処方法
まずは自分たちが作ってきた図表と、相続人の認識している親族に整合性があるかどうかを確認してから、親族1人ひとりについて「この○○さんはどこに住んでどんな仕事をしていますか? 勤務先は? 年収はいくらくらいですか? 不動産は所有していますか?」といったことを聞いてきます。
実は調査官は親族の預貯金についても、すでに銀行で調べてきています。預貯金の額はもちろん、大きな入出金についても把握していると考えてください。
勤務先や居住地、不動産の有無などを尋ねることで、「収入と財産・預貯金のバランスが不自然ではないか?」「亡くなった人の財産がその人まで流れているのではないか?」と疑わしい点をピックアップしようとします。
たとえば、その人の勤務先の給与水準に比べて、かなり高額なマンションに住んでいるような場合、そのお金がどこから出たのかを知ろうとします。「もしかしたら亡くなった人の財産から流れているのではないか?」と推測するのです。
最初にこのような確認をして不審な点を洗い出しておき、後から亡くなった人の行き先がわからないお金が出てきたとき、結びつけて深掘りするための質問です。かといって、過剰に恐れを抱いたり、用意周到に答えを準備しておく必要はありません。ご自分が知っていることだけを、ありのままに答えてくださってけっこうです。
②亡くなった人の学歴や職歴について
学歴や職歴は、その人の財産形成に大きく関わってくるものです。そこで、税務調査でも必ず、亡くなった人がどんな学校を出ていつ仕事についたか、勤務先や仕事内容、どんな役職についていたか、転職はしているか、いつ退職したかということについて尋ねてきます。
ここで聞いた経歴を基に、収入と財産のバランスが取れているか、その人のキャリアには見合わないようなお金の動きがないかどうかを確認しようとするのです。
自営業の人なら、事業がうまくいったときに多額の入金があってもおかしくはないですが、サラリーマンだった場合、退職金以外の大きな入金は「どうしてこの時期にこんなにお金が入ってきたんですか?」と不審に思われます。
このサラリーマンの場合、もっともマークされるのが退職の時期です。退職金としてまとまった金額が入っているはずなので、それをいつどこでどう使ったか、あるいは預金として残っているか、銀行の調査結果と突き合わせて整合性があるかどうかを判断します。
亡くなった人の経歴とはマッチしない多額の入出金があるような場合は、チェックしておいて午後の調査で追及する材料にします。
サラリーマンで転勤・転居が多かった場合は要注意
③転居・不動産の売買について
人は自分がよく知らない場所の土地や家を買うという冒険はまずしないものです。不動産の売買は、土地勘のあるところで行われるのがほとんどといっていいでしょう。
亡くなった人がサラリーマンだった場合、調査官は「転勤先で不動産の取引をしていたのでは?」と考えます。そこで「生前に何回転居しましたか? 転勤先で不動産を購入したことはありますか?」という質問を投げかけてきます。
もしあれば、転居時にその不動産をどうしたのか、売却したのか、保有したままなのか、売却した場合はその代金はどうしたのか、使ったのか預貯金になっているのか、という点についても尋ねてきます。つまり、そこに申告漏れが生じている可能性があるとにらんでいるわけです。
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相続税の税務調査の実態と対処方法
なお、転勤があった場合、赴任先近くの金融機関で口座を開いていることはよくある話です。しかも赴任先から戻るときに解約せず、そのままになっていることもあり得ます。亡くなった人が、転勤が多かった場合は、そのあたりも詳しく聞かれると思ったほうがよいでしょう。
服部 誠
税理士法人レガート 代表社員・税理士
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