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相続人の表情や態度、答え方などを見ている調査官
私のお客さまに税務調査の連絡が入ったときの感想を聞くと、誰もが「心臓がバクバクした」「頭が真っ白になった」「不安で眠れなくなった」などという答えが返ってきます。
多くの人が「調査=取り調べ」というイメージを抱くのでしょうか。何も悪いことはしていないのに、あたかも自分が犯罪者で、これから厳しい取り調べを受けるのではないかという気持ちになるようです。
税務調査は連絡からおおむね2〜3週間後くらいに行われます。日程については、受ける側の都合に合わせてもらうことができます。「○月○日にうかがいたいのですが」と先方から希望の日時を指定されても、都合がつかなければその旨を伝え、違う日に変更してもらうぐらいの余裕を持ちたいものです。
ただ、先ほども申し上げたように、事前通知の電話があってから税務調査が行われる日までの間は、落ち着かない毎日をすごすことになります。
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「いったい、何を聞かれるのだろうか」
「どんな書類を見に来るのだろうか」
「うまく答えられなかったらどうしよう」
考えれば考えるほど不安は募る一方です。
経験したことのない人生初の局面に強制的に立たされているのですから、不安を感じるなというほうが無理というものです。実際の税務調査では、それほど難しいことは聞かれません。その点では安心していただいて大丈夫です。
ただし、個々の質問はなんということのない確認事項にすぎませんが、調査官はその質問に答えるときの相続人の表情や態度、答え方などから、その後の質問を繰り出してきます。税務調査を初めて受ける相続人は、このときついうっかり自分にとって不利なことを口走ってしまいがちです。
ベテランの税理士であれば、その点を熟知している場合があります。つまり、調査官が何を聞き、それにはどのような意図があるのか、といった的確なアドバイスがお客さまに対して事前にできるのです。それだけでも初めての経験を前に不安で胸がいっぱいになっている人にとっては、大変心強いものだと思います。
大切なのは現金の動きについて説明できること
「そうはいっても、うちみたいな財産の少ない家には調査は入らないのでは?」
そんな声もちらほら耳にしますが、それは認識違いと申し上げるよりほかありません。財産が大きいほど調査件数が多いのは、不明点が多数見つかりやすいからです。仮に申告財産が高額でなかったとしても、調査官の目から見て「この現金の動きがおかしい」というようなことがあれば、確実に調査の対象になります。
調査に入る可能性が高い案件としては、
●家族名義の預金が多い場合
●取引銀行や取引証券会社が多数ある場合
●生前に大きな預金引き出しがある場合
●財産データがあるのに、取引関連資料や法定調書、支払調書で無申告になっている場合
●相続人の間で争いがあり、別々の申告書が複数提出されている場合
●第三者からの通報や投書があった場合
などが挙げられます。
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これらに該当するものがあれば、調査官はまず「あやしい」と見るのです。そして、被相続人と取引のあった銀行に行き、口座の記録を徹底的に調べます。そこで数十万単位の現金の動きがいくつも見つかり、しかも申告書の内容との整合性がないと判断すれば、税務調査に結びつく可能性がグンと高まります。大切なのは、調査官から見て不審な現金の動きについて、きちんと説明できるということです。
詳細はこれからの連載で述べさせていただきますが、例えば亡くなった方がギャンブル好きだったり、旅行が趣味だったりすると説明しやすいものです。競馬やパチンコが大好きで、大金をつぎ込んだ掲げ句、大損ばかりしていたとか、旅行が大好きで年に何度も海外に行っていた、ということがあれば、調査官は「それでは大きなお金の動きがあっても無理はないか……」と納得します。
また、俗にいう愛人がいた人も、こと税務調査に関しては有利な場合もあります。マルサ(国税局査察部)用語では「特殊関係人」と呼ぶのですが、亡くなった人にそのような立場の人がいて、毎月お手当を渡していたとか、年に数回まとまった現金を渡していたというような事実があると、調査官はあきらめざるを得ません。
ただし、税務調査をスムーズに終わらせるために、事実無根のことをでっち上げるというのはいけません。相手はベテランの調査官ですから、ウソはすぐに見抜いてしまいます。旅行好きの人なら、旅先での写真をまめに撮っているものです。「では、旅行の記念写真を見せてもらえますか」と突っ込まれないとも限りません。でっち上げではなく、事実としてあったことを少々膨らませていう、といったぐらいに思ってもらえばよいかもしれません。
服部 誠
税理士法人レガート 代表社員・税理士
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