今回は、被相続人名義の預貯金や不動産に関する留意点をお伝えします。 ※本連載は、ともに行政書士・社会保険労務士である、井出誠氏と長岡俊行氏の最新刊、2015年11月30日に刊行された『相続川柳――相続を 気軽に学ぶ 五七五』(東京堂出版)の中から一部を抜粋し、知っておきたい相続の知識を伝授します。

 

銀行や郵便局の預貯金は、たとえ自分のものであっても、一定の手続きを踏まないと引き出すことができません。これが被相続人名義の預貯金となると、さらに大変になるわけです。

 

理屈の上では、名義人が亡くなった時点で相続人に権利が移っているのですが、そのまま窓口に行ったとしても、まず下ろさせてはくれません。自分が相続人であることに加えて、その預貯金を処分する権利があることを証明しないといけません。

 

例えば、二人兄弟が相続人だったとして、長男が「二分の一だけでいいから」と言ってお金を引き出したとします。その後に、「その口座の預貯金はすべて次男に」という遺言書を持った次男が窓口に来たら、大変なことになってしまいます。

 

ですから、名義人が亡くなったことを金融機関が知ったならば、有効な遺言書や遺産分割協議書などが提出されるまでは、口座を凍結して誰にも預貯金をいじらせなくします。名義人の死亡をはっきり伝えた場合はもちろん、窓口に行って「亡くなった人の口座から葬儀費用を下ろしたい」などと伝えた場合も、金融機関は凍結せざるを得なくなるでしょう。

 

以上のことから、葬儀費用や最後の医療費などを本人の財産から支払う予定があるのであれば、あらかじめ現金で用意しておくのが無難だと思われます。

 

 

土地や建物といった不動産の持ち主は、登記事項証明書に記載されています。いわゆる登記簿というやつですね。

 

不動産の所有者等が亡くなって相続が発生したときには、その権利は相続人へと受け継がれます。ただ、登記簿の名義人まで自動的に変更されるわけではありません。証明書の内容を更新するためには、法務局に申請書を提出して、相続登記の手続きをしなければなりません。

 

亡くなった人からの名義変更ですから、それなりの手間がかかりますし、登録免許税などの費用もかかります。そして、相続登記には期限がないので、長年にわたって手続きをしない人もめずらしくはありません。

 

役所からは、固定資産税等の納税者だけは相続人の代表者などに変更するよう求められますが、納税者と登記の名義人が一致していなくても問題ないので、相続登記を強いられるようなことはありません。ただ、その不動産を売りたくなった場合や、お金を借りるために担保として差し出そうとした場合に、亡くなった人の名義だと、話が進まなくなってしまいます。

 

ちなみに、権利自体は死亡によって相続が発生する度に動いていますから、亡くなった父の家が祖父名義のままだった場合などは、おじなどを経由していとこも権利者の一人となっていることがあり得るわけです。

 

どんなに細分化されても権利者ですから、場合によっては何十人もの実印が必要になってくることもあります。

相続川柳  相続を 気軽に学ぶ 五七五

相続川柳 相続を 気軽に学ぶ 五七五

井出 誠・長岡 俊行

東京堂出版

右肩上がりの高齢化、終活への関心が高まるなか、難しいとっつきにくい内容である「遺言・相続・成年後見・終活」などを、17文字の川柳(100句)を題目として、気軽に楽しく分かりやすく解説。単に知識の提供だけではなく楽しく…

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