「国内外の株式」を中心に投資する
ここからは、債券を除いた、国内外の株式・REIT(不動産投資信託)、商品(コモディティ)の資産配分について考えていきます。
結論からいうと、国内外の株式を中心に投資すればよいでしょう。よくいわれるように、世界経済の成長に賭けて世界の株式へ投資をしておけば、長期的に見れば間違いないということです。これは長期で見た場合に、実際に世界の株価(または株式時価総額)が、世界経済(名目GDP)の成長に伴って上昇しているためです。
では、将来的に先進国よりも高い経済成長が見込める新興国に投資した方が、より高いリターンを期待できるのではと思われるかもしれません。しかし、話はそう単純なものではなく、必ずしもそうなるとは限りません。それは、先進国にはグローバル展開している企業も多いためです。
そういった企業にとっては、国籍は関係なしに新興国の経済成長の恩恵にあずかることもできるのです。また、特に先進国では、時の政権や中央銀行が、株価を重視したような政策をとることも少なくありません。
一方で、今後仮に、自国産業を守ろうとする保護主義的な動きが世界各国で強まれば、資源の豊富な新興国が存在感を増してくる可能性もあります。
ただ、こういったことなどは、残念ながら事前には予測できません。であるならば、初めから世界の株式へ投資しておくのが望ましいということになります。
そして、REITに関しては、先に見たように株式との相関性が高いため、ポートフォリオに組み入れる必要性というのはそこまで高くありません。ですから、資金が限られているような場合には、REITは組み入れなくてもよいでしょう。
また、商品(コモディティ)に関しては、資金に余裕がある場合には、組み入れてみると面白いかもしれません。特に、ミーン・リバージョンという観点からは、商品の中でも「主要農産物」に投資妙味があるようです。
さて、ここで一つ思い出していただきたいのが、「分散投資の効果」のところで書いた、「長期運用において、ポートフォリオの価格変動の約9割は資産配分によって決定される」ということです。
各種論文で、このように結論付けられているにもかかわらず、ここで書いたようなシンプルで恣意的な資産配分でよいものなのでしょうか。
これに対する私の答えは、その理論は年金基金などの機関投資家を対象としたものであって、個人投資家には当てはまらないというものです。
というのも、機関投資家は、四半期毎など短い期間での運用結果が、ベンチマークとの比較で問われます。となると、そうやすやすと資金を遊ばせておくわけにはいきません。ですから、そういった制約のある機関投資家にとっては、リスクを低減させるために、何より資産配分に知恵を絞らないといけないというわけなのです。
一方、そういった制約のない個人投資家にとっては、現金比率を高めておくことでリスクを低減させることができるため、そこまで資産配分に腐心する必要はないのです。
そして、最後にもう一つだけ付け加えると、資産配分に正解というものはありません。将来のことは誰にも分らないからです。
そういったことなどから、資産配分についてはそこまで難しく考える必要はなく、ここで書いたようなシンプルな考え方だけで十分だといえるでしょう。
海外ETFを取引する際のポイントは?
さて、実際に海外ETFを取引するにはどうするかですが、その選択肢はそう多くありません。
日本国内の証券会社であれば、SBI証券、楽天証券、マネックス証券のいずれかに口座を開設しておけば、海外ETF を取引することができます。
口座開設後は、証券総合取引口座から外国株取引口座への資金振替をしたり、日本円から米ドルへの為替振替が必要であったりと、証券会社によって手続きは多少異なりますが、ほとんどをネット上で完結できますので、大した手間にはなりません。
また、売買手数料については各社で共通していて、いずれも約定代金の0.486%、最低手数料は5.4ドル、上限手数料は21.6ドルとなっています。
そして、この手数料体系から導き出される、海外ETFを取引する際のポイントについて触れておきます。
それは、手数料の上限と下限があることから、約定代金が1111ドル以下の場合は、手数料率が0.486%より高くなってしまう一方で、約定代金が4444ドルを超える場合には、手数料率が0.486%よりも低くなるということです。
ちなみに、1ドル=110円とすると、1111ドルは約12.2万円、4444ドルは約48.9万円となります。
ですから、海外ETFを取引する際には、少なくとも1回当たり1111ドル以上の売買をしたいところなのです。
これを踏まえて、次回は具体的なポートフォリオの例を資金別に示していきます。
小林 武文
精神科医・投資コンサルタント