分散投資により「市場全体の平均的な成果」を狙う
本連載の出典となる書籍『資産運用エッセンシャルズ 攻防自在の投資戦略』の第1章では、投資にまつわる様々な心理的要素について説明していますが、投資戦略はそれらを加味して、あらかじめ心理的なワナを少しでも回避できるように構築しておくことが望ましいと言えます。
また、上記書籍では、最小限の手間や労力で、資産運用を行っていくということにも主眼を置いています。多くの人が仕事と掛け持ちしながら、投資を行っていくことを考えると、投資に多くの時間を継続的に割いていくというのは現実的ではないと思われるからです。
そういったことを踏まえると、取るべき投資戦略としては、インデックス投資(パッシブ投資)と呼ばれるものが有力な候補としてあがってきます。
インデックス投資というのは、世界中の株式や債券などに分散投資することで、市場全体の平均的な投資成果を得ようとするものです。平均的といっても、多くのアクティブ・ファンドが平均を下回る成績しか出せていないことを考えると(上記書籍第2章参照)、決して大したことがないという意味合いではありません。
インデックス投資では、手間をかけずに、かつ低コストで、長い目で見た場合に、ある程度のリターンを期待することができるのです。一方で、手間をかけずに済むということは、面白みがなく退屈であるということでもあります。
そしてこれにより、長期にわたって行っていくべきインデックス投資を、途中で投げ出してしまう場合というのが少なからずあるのです。
そこで本連載では、あえて自由裁量の余地を持たせることで、ほとんど手間は増やさずに、多少なりとも退屈さを軽減できるようにアレンジを加えたインデックス投資というものを提案しています。
また、インデックス投資を長期にわたって継続していくためには、その背景にある考え方などについても理解して、納得しておく必要があります。
その助けとなるように、できるだけ筆者自身の考えというのも盛り込んで論じているつもりですが、もちろん筆者の考えが全て正しいと言うわけではありません。筆者の無知ゆえに偏見に満ちた、ものの見方・考え方もあるかと思います。ですので、あくまで一つの考え方として参考にしていただいて、自分自身に合った投資戦略というのを構築していただければ幸いです。
株式投資は「非ゼロサムゲーム」
ここでは、まず株式投資についてその全体像を見ていきたいと思います。
FXはゼロサムゲームであると、上記書籍の第3章に書いていますが、それに対して株式投資は非ゼロサムゲームに該当します。
非ゼロサムゲームであるということは、参加者全員の利益と損失の合計がゼロにならないということです。つまり、企業価値の増大に伴って株価が上昇すれば、株式の保有者全員が利益を上げることができるのです。
そういったこともあり、資産運用を行うに当たっては、株式投資から始める、あるいは株式投資を資産運用の中心に据えるのがよいのではないかと考えています。
ですから、ここからは株式投資を中心として話を進めていきます。
さて、株式投資では参加者全員が利益を上げられる可能性があると書きました。
しかし一方で、株式投資のような非ゼロサムゲームでは、企業が倒産して株式がただの紙切れとなってしまうなど、全員が敗者となってしまう場合もあり得ます。そのため、株式投資では企業価値を見極めることが大事になってきますが、株式にはFXの通貨ペア数とは比較にならないほど数多くの銘柄が存在します。
そこで、株式投資の全体像をざっと摑むために、次回は下記のような4つの観点から株式についてそれぞれ見ていきます。
①東京証券取引所:市場第1部、市場第2部、JASDAQ、マザーズ、TOKYO PRO Market
②規模:大型株、中型株、小型株
③価格水準:値嵩(ねがさ)株、中位株、低位株
④個別銘柄と株価指数