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中小企業のM&Aでは、既存の計算式が通用しない!?
M&Aの世界で、会社の値付けは「企業価値評価」「バリュエーション」などと呼ばれ、様々な計算方法が存在します。専門書を開くと、金融用語や、複雑な計算式のオンパレードです。しかし、中小企業、特に売上数億円以下のようなスモールM&A市場では、難解な計算式はあまり役にたちません。実際にいろいろと試してみましたが、大手企業の売買取引のために考案された既存の計算式は、現場感とまるで合わず、障害になることさえあるのです。
スモールM&Aでは、上場企業の「株式市場」、不動産の「路線価」のように客観的な指標がありません。開示情報もまだ少なく、数字の信憑性も決して高くはありませんし、売却側の企業オーナー自身でさえも、自社企業の価値をはかるための指標や数値について、把握していないケースも多々あります。
企業価値評価でよく使われるDCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)という手法も、将来の「事業計画」を予測しながら「企業価値」を判断する手法のため、よほどの安定成長企業でもないかぎり、絵にかいた餅になりがちで、スモールM&Aの現場ではあまり使われていません。
では、現場では実際どのように譲渡価格が決定されているのでしょうか。
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スモールM&Aにおける値付けのスタートは、売り手である創業者・株主の「希望額」提示です。この段階では論理的根拠は少なく「借入残額」「累積投資額」「当面の必要資金」「想い入れ」などが基準になります。時には、「想い入れ」が強すぎて、現実的ではない高値の価格を希望することがあります。その際は、アドバイザーが、買い手の目線に立ち現実的な価格に修正していきます。
そこで、ひとつの目安になる数字が、現時点の静的な価値を計る「時価純資産」です。言い方を変えれば、今、会社を解散したら手元にいくらの「現金」が残るかという評価です。ただしこれでは、将来の収益や、数字に表れない強みなどが反映されていないため、「時価純資産」に「実質営業利益」の数倍が加算されます。この係数は業種・実績・業界動向・期待値によって変わってきます。
時価純資産と実質営業利益から算出する手法は多くの現場で使われていますが、スモールM&Aにおける企業価値算出において「これが完全に正しい」というものは存在していません。債務超過で赤字会社の場合には、また別の価値判断基準が使われます。業績が低迷している要因が納得でき、それを伸ばせる自信がある買い手が、思わぬ高値をつけることもあります。上場企業などの大型再生案件ではよくある話ですが、小規模でも徐々にそのようなケースが増えてきているのです。
METIが推進する「知的資産経営」の観点で定性評価を
スモールM&Aにおいては、数字以外の情報がとても重要になってきます。事業の強みや成長性、人材等の所謂「定性評価」です。金融機関でも、昨今、担保や保証に依存せず事業を分析して支援すべきとの金融庁の方針があり(平成26事務年度 金融モニタリング基本方針)、「事業性評価融資」と呼ばれる分野が注目されています。ただし、アドバイザーや銀行員の多くは、事業評価に長けている方は少なく人手不足の状況は否めません。
そこで期待が高まるのが、経済産業省(METI)が推進する「知的資産経営」の観点から企業評価を行うスキームです。人材・技術・組織力・顧客とのネットワーク・ブランドなどの目に見えない資産を客観的に評価する手法で、関係者が見やすい一定のフォーマットで作成されます。外部団体が認定する「知的資産経営認定士」という制度もあります。
現在は、経営計画作成時の現状分析、また、金融機関や社内で課題を共有するためのツールに使われているケースが多いようですが、実はM&Aにおいて「定性評価」をする際にとても有効的です。これに財務諸表などの「定量評価」が加われば、客観的な企業価値評価、譲渡予想価格がある程度見えてきます。
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「知的資産経営」は、中小企業診断士に得意とする方が多い印象を受けます。また、団体レベルでは「日本経営士協会」(JMCA)という日本最古のコンサルタント協会が、定性評価を活用した企業価値評価を取組始めています。協会の歴史は古く、戦後復興期に日本公認会計士協会と母体を同じくする歴史ある団体です。ビジネス経験が豊富で、様々な背景を持つコンサルタントが、事業承継問題に真摯に取り組んでいます。門戸を広く開放しているようなので、興味のある方は相談してみることをおすすめします。
会社の値付けに正解はありません。最終的には、提示された金額で買い手がリスクを負って投資をします。言い換えれば、買い手経営者の自信・想像力が「企業価値」なのです。逆に売り手の立場からすれば、買い手に可能性を判断してもらうために積極的な情報開示が必要といえるでしょう。
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