参加国の中で最小のGDPが期待させる「輸出額の拡大」
TPP(環太平洋戦略的経済提携協定)は、 アメリカ、日本、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、オーストラリア、ニュージーランド、ベトナム、ブルネイ、マレーシア、シンガポールの12か国による、経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定です。つまり、人、モノ、お金などの移動を自由にして、経済を活性化させようという協定です。
参加国のGDPの合計は世界の40%を占め、歴史上最大の自由貿易圏が誕生します。ベトナムはTPPで「最大の利益を得る国」の1つに挙げることができます。
今回のTPP参加国で1人当たりGDPがもっとも小さいベトナム(日本の約1/20、アメリカの約1/24)は、まだまだ経済発展段階が低く、GDPの合計が40%を占めるTPP加盟国を相手に輸出できるので、恩恵を受けやすいといえるからです。
[図表]TPP加盟国の状況比較
その中でもとりわけ恩恵が大きいのが、ベトナムで輸出全体の2割を占めている靴と衣料品の製造業です。
輸出の約50%を占めているアメリカや、約12%を占めている日本などで関税が撤廃される事によって、他国からベトナムへの輸入先の移行が進み、さらなる輸出額の拡大が見込めます。
それ以外の輸出品なども含めれば、ベトナムの輸出産業が数倍に拡大するポテンシャルを秘めているといえます。
TPPにより外資系企業の進出はさらに増加
近年、中国の人件費上昇により、ベトナムでは低賃金かつ技術のある労働者を求めて、
ナイキやニューバランスなど有名ブランドの靴の製造工場が増加しており、靴の輸出額は中国、イタリアについで世界3位となっています。
他のASEAN諸国でベトナムと競合しそうな国がTPPに参加していないため、TPPによる関税のメリットを求めて、外資系企業の進出が加速することが予想されます。
企業の進出が加速すれば、輸出額の拡大が見込まれ、貿易収支の慢性赤字で苦しんでいたベトナムにとっては非常に大きなプラス材料になるといえます。