スモールM&Aの「資金調達」にはどんな手段があるのか?

不動産投資の融資基準が厳しくなり、スモールM&Aによる事業投資に興味を持ち始めた人もいるだろう。しかし、すぐに事業系の資金調達は、知識がないと難しいことに気がつくはずだ。本記事では、事業投資の資金調達に役立つ情報をお届けする。

事業系の資金調達は、不動産投資系よりも難しい?

買い手サイドからのよくある相談に、「資金調達」に関するものがあります。不動産に比べ、事業系の資金調達は難易度が高く、ここで挫折してしまう人も多いのです。もし、最初の段階で手元資金があったとしても、譲り受け後に運転資金が必要です。また、次の投資に備え、外部借入を活用する必要もあります。

 

なのでM&Aによる事業投資を検討しているのであれば、資金調達に関する知識は必須です。資金調達は、借りる側の状況により、選択肢、調達可能額が大きく変わるので、事業投資にマッチする方法を、いくつか紹介していきましょう。

新規事業なら「日本政策金融公庫」の創業融資制度を

起業・創業するならば、まず検討すべきなのが、「日本政策金融公庫」です。創業融資制度があり、新たにゼロから事業を立ち上げる方を対象としています。通常の金融機関からの融資は、起業する方にはハードルが高いため、とても貴重な制度です。昨年(2016年)の実績を調べると、約2.8万人の起業家が利用し、金額ベースで2,000億円以上が実行されています。

 

また、近い制度で「信用保証協会」の創業融資制度もあります。こちらの申込窓口は地銀・信金などの各種金融機関となります。当然ながら上限はありますが、公庫、保証協会の融資実績を調べると、それぞれ1,000万円以内が多いようです。

 

次に、既に事業を行っている方ですが、こちらは公庫や保証協会の枠が空いているようであれば、優先的に検討しましょう。商工会議所を窓口としたマル経融資(小規模事業者経営改善資金)、中小企業庁が窓口となる「事業承継補助金」など、便利な制度があります。

プロパー融資を受けるための注意点とは?

次のステップは、保証協会を利用せず、金融機関から直接借入をする「プロパー融資」です。まずは既存の事業が銀行からどう評価されているか、過去決算をベースとした銀行格付けがどうなっているかを確認する必要があります。

 

残念ながら評価が低くても、対象資産や事業について分かりやすい資料を作成し、説明して下さい。事業性を評価して融資することは、今後の金融機関の優先課題です。なので、突破口はあるかもしれません。

 

それでダメな場合でも、まだできることはあります。その方法を紹介する前に、M&Aで借入を申し込む際の注意点をいくつか説明しましょう。

 

起業する方や、中小企業社長が、ふらりと銀行を訪れ「M&Aをしたいのでお金を貸して欲しい」と伝えると、恐らくほとんどの場合は怪訝な顔をされるはずです。まだM&Aは大企業がするものであるとの思い込みや、乗っ取りなどのマイナスイメージを持たれているのが現実です。

 

効果的な説明方法として、対象の事業を新規で始める場合と、M&Aで譲渡をうける場合の比較をするのがいいでしょう。不確定要素の強い新規事業よりも、顧客や売上実績が見える譲渡スキームのほうが、融資をする側としてもリスクが低いことを理解してもらえるはずです。

 

また「事業承継」というキーワードを使うことも有効です。国や金融機関全体としては、事業承継の円滑化が必要であり、今後力を入れて支援するという姿勢は共通認識なのです。

投資家を集う「少人数私募債」にはメリットが多い

資金調達=銀行借入(間接金融)と考えている方が多いようですが、社債や株式で調達する「直接金融」も活用すべきです。

 

中小零細企業向けの社債としては「少人数私募債」という制度があります。これは、お声がけする投資家が49名以下であれば、金融商品取引法の規制を受けず、金利や返済方法などを自由に設定できます。

 

筆者もこれまで多くの社債アレンジをしました。業種は、老舗菓子メーカー、立飲み屋、マレーシア空港での小売店、パリでの伝統工芸商品PR代行事業、オーガニック系健康食品販売業者、ワイン農家等、多岐にわたります。

 

少人数私募債は、単なる資金調達にとどまらず、応援団をつくることを目的としています。投資家からの営業協力やアドバイスも期待でき、副次的な効果もあります。配当を金利に加え、商品やサービスで返すケースも多く、独自コミニュニティを形成し、ビジネスも順調に行っている先が多く見受けられます。

増資による資金調達は、株主とのトラブルに注意が必要

少人数私募債に比べ、市民権を得ている「増資」ですが、経営上の揉め事で多いのが、外部株主との意見相違によるトラブル。株式を渡すということは、会社の一部が他人のものになるということです。この意識が低いと、トラブルの元になるので、注意しましょう。

 

株式は入れてもらうときは楽ですが、一旦株主との関係が険悪となると泥沼状態になります。出てもらう交渉と手続きは、とてつもない労力と負の感情を背負うことになり、本業に悪影響が出ることもあります。それぞれ議決権については、1/3、過半数、2/3等の比率に応じて、「株主の権利」というものをよく理解しておきましょう。

 

筆者が、増資の前に社債を勧めるのは、これまで多くのトラブルを見て、時には巻き込まれてきた苦い経験があるからなのです。

 

今後、スモールM&Aに特化したファンドや投資組合等が設立されると予想されます。単にパフォーマンスを求めるだけでなく、デューデリジェンスや買った後のフォローまでするような機能を備えると、更にニーズは増すと思われます。

 

この記事は買い手側目線で書きましたが、裏を返せば究極の資金調達は、会社の一部である株を他人に渡す増資から、過半数譲渡に至るまでのM&Aプロセスにあるとも考えられます。実際に増資検討の過程で、M&Aに致るケースは珍しくありません。資金調達を目的として、子会社や事業が売却されることも多々あります。このように、資金調達とM&Aは密接な関係にあるのです。

 

 

齋藤 由紀夫

株式会社つながりバンク 代表取締役社長

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株式会社つながりバンク 代表取締役社長 

オリックス株式会社1996年~2012年。16年在籍。 在職中に多くの新規Projectに参画し、東京都、銀行、カード会社などに出向。ベンチャー企業から上場企業まで投融資を実行。経営企画部時代(約8年在籍)に、出資先の株主間調整、合弁契約解消、事業撤退・売却、海外子会社統合、債権回収業務など前向きから後ろ向き案件の対応をこなす。2012年、株式会社つながりバンク設立。スモールM&A市場の普及・拡大をメイン事業とし現在に至る。自らも小規模の事業系投資を実践中。

著者紹介

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