退職金代わりの「コインランドリー支給」で節税に!?
なぜスーパーマーケット立地のコインランドリーを役員の退職金として活用することが可能なのでしょうか。
まず、退職金は税法上、「退職所得」にあたります。企業にとっては、退職金でも給与でもコストは変わりません。しかし受け取る側にとっては、退職金としてもらったほうが税金は安くて済むのです。
第1の理由は、「退職所得控除」です。受け取った退職金から、勤続20年までは1年あたり40万円、それを超える分は1年当たり70万円の合計額が控除されます(図表1参照)。給与所得にも給与所得控除がありますが、最近は年々縮小されています。それに比べて退職所得控除は、例えば勤続40年なら、2200万円にもなります。
第2の理由は、課税対象となるのが、退職所得控除を差し引いた額のさらに2分の1になることです。実質上、税負担は半分になるのです。
第3の理由は、分離課税だということです。所得税では1年間の収入を10種類の所得に分け、その多くを合計して累進税率を掛けます(総合課税)。
それに対し、退職所得は退職金だけ別に、退職控除を差し引き、さらに2分の1にして、累進税率を掛けるのです(分離課税)。退職金以外に収入がある場合は、それだけ適用税率が下がることになり、税額は少なくなります。
ここまでは、退職金全般に当てはまる話です。重要なのはこの先です。
退職金として支給するのは、現金はもちろん、実は他の資産でも構いません。つまり、アパートや賃貸マンションといった不動産、あるいはコインランドリーの土地・建物や設備を退職金として支給してもよいのです。
現金以外の資産を退職金として支給する場合、その資産の評価額が問題になります。評価額に応じて、退職所得として課税されるからです。これについては、国税庁の「財産評価基本通達」という基準があり、これをもとに評価されます。
土地については、都市部であれば各地の税務署が毎年、「路線価」という価格を道路ごとに設定しており、それを基準に計算します。
「路線価」とは、ある道路に面した宅地の1㎡あたりの評価額で、土地の面積×路線価が評価額となります(土地の形状等による補正も行います)。
建物については、各市町村が課税する固定資産税の評価額がそのまま使われます。建物の固定資産税評価額は、建物の構造に応じた基準額が設定されており、それをもとに新築時に各市町村が決定したものです。
ただし、事業用の建物については、退職所得の計算などにおいて、それまでの減価償却費を差し引くことになっています。減価償却費は毎年、事業の収支計算において経費に計上されており、その分だけ建物の価値が下がっているとみなすのです。
機械設備については、最初に購入した時の価格が評価額の基準となります。ただし、建物と同じように、退職所得の計算などにおいては、それまでの減価償却費を差し引きます。
さて、以上のことをふまえ、勤続15年の役員へ1億円の退職金を支払うとしましょう(図表2参照)。
現金で支給した場合は、退職控除が600万円(40万円×15年)で、それを差し引いた9400万円の半分、4700万円に所得税がかかります。結果的に税額は約2140万円となり、受け取る役員の手取りは7900万円ほどになってしまいます。
もしこれが賃貸マンションだったらどうでしょうか。細かい計算は省きますが、時価1億円の賃貸マンションでも、退職所得の計算上は4700万円となります。ここから退職控除を差し引き、残りの半分に所得税がかかります。結果的に税額は756万円ほどとなり、受け取る役員の手取りは約9200万円です。
さらに、コインランドリーだとしたらどうでしょう。
この場合、時価(市場価格)で1億円分のコインランドリー3物件ほどを退職金として支給するとします。すると、退職所得の計算上の評価額はわずか683万円にすぎず、税額はたった7万円です。受け取る役員の手元にはほぼ満額が残ります。
そして、退職金として支給されたコインランドリーからは毎年利益が入ってきます。長く安定して経営を続けることができれば、その合計はいずれ1億円を超えることも十分あり得るでしょう。
コインランドリーが経営者の心理的負担を軽くする理由
なお、企業経営者のみなさんにとって、コインランドリー事業にはもうひとつメリットがあります。それは、「意識的束縛」からの解放です。
「意識的束縛」とは、マネジメントの大変さのことです。社員や部下を持っていれば、寝ても覚めても会社や店のことが気になるものです。人は自分の思い通りには動きません。そのため、四六時中いろいろ気にしないといけません。
中小企業の社長さんには、怖い顔をしている人が多いような気がします。おそらく、取引先にお金を払ってもらえなかったとか、目をかけて育てていた部下がいきなり辞めてしまったとか、理不尽な経験をたくさんしているからではないでしょうか。
ぼく(石崎)も以前、すごく可愛がっていた部下が、ぼくのいないところで転職雑誌を読んでいると知ったときはものすごいショックを受けました。
経営者はタフでないとやっていけません。そういうことをぼくたちは「意識的束縛」と呼んでいます。
事業を広げれば広げるほど、こうした心理的負担が増えます。会長になって現場を任せればまた別かもしれませんが、そこまで行ける人は少数でしょう。結局、ビジネスとともに人生が終わってしまうということになりかねません。
コインランドリー事業は、そうしたことを気にすることがありません。ビジネスとして軌道に乗るまでは多少、時間がかかりますが、軌道に乗れば枕を高くして寝られます。
副業としてコインランドリーを始めた経営者の方の中には、本業は後継者に譲ったり清算したりしても、コインランドリー事業だけは手放さずにいるケースが少なくありません。
石崎 絢一
日本ランドリーエステート株式会社 ファウンダー
柳田 厚志
日本ランドリーエステート株式会社 ファウンダー兼CMO(最高マーケティング責任者)