前回は、コインランドリーをスーパーマーケットに出店する利点を説明しました。今回は、スーパーマーケットへの出店を実現する方法を見ていきます。

ねらい目はスーパーマーケットの「駐車場の端」

「スーパーマーケット立地」といっても、ぼくたちはスーパーマーケットの建物にはあまり出店しません。基本は、広い駐車場の一角にコインランドリーの店舗を新築します。

 

駐車場での位置をどうするかは大きなポイントです。スーパーマーケットの建物に近いところが良いように思われるかもしれませんが、逆です。

 

なぜなら、スーパーマーケットに買い物に来た人は、スーパーマーケットの入り口に近いところから駐車します。すると、車で大量の洗濯物や大型の洗濯物を運んできたコインランドリーの利用者にとっては、車からコインランドリーまでかなりの距離を歩いて移動しなければならないことになりがちです。そこで、スーパーマーケットの建物から離れた、駐車場の端のほうにコインランドリーの店舗をつくるのです(以下の図表参照)。

 

[図表]スーパーマーケット立地での出店例

 

こうすると、利用客(主に主婦の方たち)は車でコインランドリーの近くに乗りつけ、洗濯物を降ろして洗濯機や乾燥機に入れます。そして、今度はスーパーマーケットの入り口の近くまで行って買い物をしたりして、帰り際に再び、洗濯物を取りに立ち寄るのです。

 

こうした合理的な動線をプランできるのも、スーパーマーケット立地のメリットです。

 

スーパーマーケット側と出店交渉する際にも、駐車場の端のほうはそれほど利用されていないので、話をもっていきやすいということもあります。

出店実現のために「クリアすべきハードル」とは?

ただし、スーパーマーケットの敷地内に出店するのは、それほど簡単なことではありません。スーパーマーケットの敷地内にコインランドリーを出店するのは、ロードサイドに出すより10倍難しいといっていいでしょう。

 

なぜ難しいのか。それは、クリアしなければならない独特のハードルが数多くあるからです。いくつか挙げてみましょう。

 

●物件開発担当者との人脈

スーパーマーケットは自社の売り場だけでなく、来店客を増やすためにクリーニング店や飲食店など生活関連の他社をテナントとして誘致します。それを担当するのが物件開発担当者です。

 

この物件開発担当者と面会できるかどうかが、「スーパーマーケット立地」の最初にして最大のハードルです。とにかく、物件開発担当者に会って、こちらの提案を聞いてもらわなければ、話は前に進みません。

 

しかし、物件開発担当者は普段、自社店舗に誘致したテナントを回っていて、ほとんど本社にはいません。そのため、普段から付き合いのない企業はなかなか面会のアポイントが取れません。

 

そこで重要なのが人脈です。一度、どこかでテナントとして出店したことがあるとか、有力なテナント企業からの紹介があるとかが、ものをいいます。

 

物件開発担当者に聞くと、コインランドリーのFCチェーンの中には、出店するといいながらいざとなると出せなくなるケースがあるそうです。そうなれば物件開発担当者の顔は丸つぶれで、二度と相手にしてもらえません。

 

「いろいろなコインランドリー業者から提案が来るけれど、初めてのところは慎重に対応している」という物件開発担当者は少なくありません。

 

逆に、スーパーマーケット側の事情で出店に時間がかかることがあります。そこを乗り越えていくことで信頼関係ができ、物件開発担当者のほうから「今度、あそこのテナントが出るので、その後継としてどうですか」と声がかかったりするようになります。

 

なお、スーパーマーケットも企業によって風土が全然違います。どのように話を持っていけばいいのか、提案ではどこがポイントなのか、といったことは一度、一緒に仕事をしてみないと分かりません。

 

●スーパーマーケットへの提案と説得

出店にあたっては当然、スーパーマーケット側の社内稟議をクリアしなければなりません。

 

しかし、コインランドリーをテナントとして入れたことのないスーパーマーケットも少なくないため、一から丁寧に説明する必要があります。スーパーマーケットが上場企業の場合、新しい取引先については役員全員の決裁が必要とされ、稟議が通るのに半年くらいかかることもあります。

 

また、当然のことながら、コインランドリーの出店がスーパーマーケットにとってメリットがあるという提案をしなければなりません。

 

例えば、雨の日はスーパーマーケットの利用客が減る傾向がありますが、コインランドリーは逆に雨の日のほうが利用客が多く、スーパーマーケットにとっては利用客の底上げにつながります。また、洗濯の間、時間つぶしを兼ねてスーパーマーケットの店内を回ってくれるので客単価も上がります。

 

このように、スーパーマーケットとコインランドリーの親和性は非常に良いことを分かりやすく説明します。

 

しかし、意外な落とし穴もあります。コインランドリーの店舗は先ほど説明したように、スーパーマーケットの建物から離れた駐車場の端のほうにつくりますが、スーパーマーケットの建物は往々にして敷地の奥のほうにあり、手前が駐車場になっているのです。

 

そのため、駐車場の端といっても道路の近くにあると、コインランドリーの店舗でスーパーマーケットの建物が隠れてしまいます。そういう点に配慮しないまま提案書を持っていくと、役員が怒り出したり、空気が読めない業者だということで許可が下りないことにもなりかねません。

 

なお、ぼくたちの場合、一度出店したことがあるスーパーマーケットでは、2店舗目からは2~3週間で稟議が下りるようになっています。

 

●各種法的規制への対応

スーパーマーケット立地では、独特の法的規制や法律関係の問題があります。例えば、エリアごとに建てられる建物の用途や規模、構造、高さなどに一定の制限が設けられており、これを「用途地区」といいます。エリアによっては、スーパーマーケットは建てられてもコインランドリーは建てられないこともあり、事前のチェックが欠かせません。

 

また、大規模小売店舗立地法という法律があります。大型スーパーマーケットが出店する際にはこの法律に基づき、売上や来店客数の見込みから必要な駐車場の台数を計算して届け出をしています。

 

ところが、コインランドリー用に駐車場の一部を使うとなると、基準をクリアできなくなることがあるのです。従業員用に余分の駐車場があればいいのですが、それもないとなると、変更届などが必要になります。

 

ぼくたちの場合、大規模小売店舗立地法を専門とするコンサルティング会社と提携しており、こうした問題にはかなりスムーズに対応できるようになっています。

 

●敷地の地主との関係

スーパーマーケットはもともと、敷地を地主から借りているのが一般的です。その駐車場の一部をスーパーマーケットから借りる(又借りする)となると、地権者である地主の承諾が必要になります。もし、地主が近くでコインランドリーを経営していたり、コインランドリーが嫌いという可能性もゼロではありません。

 

より重要なのが、スーパーマーケットが地主から土地を借りている契約期間です。一般的には20年の定期借地として借りており、20年経つと更地にして返却するのです。すると、オープンして18年目のスーパーマーケットであれば、敷地の残りの契約期間
は2年ということになってしまいます。

 

ぼくたちはスーパーマーケットに出店する場合、建物やマシンの償却期間もあるので、少なくとも10年契約をお願いしています。しかし、スーパーマーケット自体が残り2年しか土地を借りられないのであれば、10年契約など無理ということになってしまうのです。

 

ただし、スーパーマーケットの物件開発担当者によっては、地権者と交渉して契約更新の承諾をとってくれることがあります。スーパーマーケットも好立地であれば、20 年契約をさらに更新することがあるからです。

本連載は、2018年6月26日刊行の書籍『「S級立地戦略」で突き抜ける 賢者のコインランドリー投資』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「S級立地戦略」で突き抜ける 賢者のコインランドリー投資

「S級立地戦略」で突き抜ける 賢者のコインランドリー投資

石崎 絢一,柳田 厚志

幻冬舎メディアコンサルティング

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