世界の石油メジャーを受け入れる環境整備が必要
「我々はCairn India社の後を引き継ぐよう、世界中の石油会社に声を掛け始めています。しかし、スリランカのプロとしての信用ならびに意図を強固にするのならば、次のようなことが必要となるでしょう」とスリランカ流のガバナンスや官僚制度に振り回されてきた世界的な石油・天然ガス業界の専門家であるSaliya Wickramasuriya氏は話し始めた。
「それは、前回2013年度の競売ラウンドにおける入札を評価して裁定し、フランスの大手石油会社であるTotal社との共同研究プログラムを完了させることです」と同氏は言う。
「正式な発表はまだしていないものの、Exxon社、Gazprom社、Eni社、そしてShell社のようないくつかの企業は、Cairn India社の撤退を注視しています。その公表前に、やるべきことはたくさんあります。業務提携の候補企業が投資の最終決定に先立って入念に調査できるよう、全てを包括した「撤退」ファイルに各関係者の権利や義務を確定して明記し、全ての法的手続きを遂行することが必要です」とWickramasuriya氏は語る。
Wickramasuriya氏は、Cairn India社の後継企業を惹きつけるために、並行していくつかの目標を達成することを望んでいる。その中でも新たな石油法案を可決させることを重要視している。なぜなら、その法案が可決されれば、全ての関係者がより効率が良く、より透明性の高い環境で事業を進めることが出来るからだ。
足を引っ張るスリランカの官僚機構
スリランカ財務省が官僚の権力闘争に関与し、PRDS(石油資源開発事務局)を妨害してきたために、スリランカは石油採掘事業を発展させることができなかった。権力闘争に火が付いたため、当時の大統領であったMahinda Rajapaksa氏との面会を希望する石油会社と政府高官たちによる秘密裡の会合がもたれるようになったのだと、何人かによる証言を得ることが出来ている。この権力闘争のせいで、スリランカは何年分にも相当する機会を損失しているのだ。
Cairn India社が2012年にガス貯留層を発掘した後、スリランカ政府はその流れに乗り、マンナール盆地と北海岸にあるカーヴェリ盆地における石油探鉱権を競売にかけた。入札期間は2013年11月までだったが、入札したのは僅か2社で、シンガポールに拠点を置くBonavista社が北海岸の2ブロック分、そして、Cairn India社が気乗りしないまま入札したマンナール盆地の1ブロック分のみだった。
その競売ラウンドは悲惨なものとなった。PRDSは音波を駆使し海底の3D地図を作成するか、新しい地震探査データを公表すると公約していたのだが、政府はPRDSと地震探査データを扱う会社の業務提携を許可するための閣議決定に失敗した。
次回は、政権交代を経て再び動き始めたスリランカ石油業界の最新動向をご紹介します。