スリランカ沖でガス田が発見され、スリランカで大きなポテンシャルをもっているとされるエネルギー資源分野ですが、石油大手企業が撤退するなど、計画通りには開発が進んでいません。本連載では、スリランカの石油開発において重要な役割を果たすSaliya Wickramasuriya氏へのインタヴューを交えながら、スリランカのエネルギー資源開発の現状を6回に分けてお伝えいたします。

スリランカ沖で発見された天然ガス田

石油を追い求める情熱の高さに関して、スリランカではこの人の右に出る者がいないだろう。それは、石油資源開発事務局(Petroleum Resources Development Secretariat 、以下PRDS)を率いるSaliya Wickramasuriya氏だ。

 

Wickramasuriya氏によれば、石油採掘会社であるCairn India社は昨年スリランカで業務提携先を探すための大きな一歩を踏み出したものの、その試みは失敗に終わってしまったと話す。同社はスリランカを撤退する予定で、Wickramasuriya氏は、2013年度の競売ラウンドが完了し、信用が回復するまで、スリランカはCairn India社の代わりを見つけることが出来ないだろうと話す。

 

当時は世界的な石油大手企業Cairn UK社の傘下にあったCairn India社は、2008年にスリランカで初めての石油探鉱権を獲得した。許可が下りたエリアは、スリランカの西海岸に位置するマンナール盆地にあり、海抜1,500m以下の広さ3,400k㎡の区画である。

 

2012年末までの間に、Cairn India社は合計2.3兆立方フィートに及ぶ2種類の天然ガスの貯留層を発掘した。PRDSが発表した経済効果モデルによれば、この埋蔵量は2040年までに2,000億米ドルの利益をもたらすと予測されていた。

世界的な石油の供給過剰により開発会社が撤退

「2014年初頭、Cairn India社は主要な石油会社から提携先を見つけるために、ロンドンにスリランカ・オフィスとデータ室を設けました。いくつかの企業がガス田に興味を示し、Cairn India社は更なる石油探鉱権を求め、2013年度の競売ラウンドに入札しました。しかし何も実現には結びつかなかったのです」とWickramasuriya氏は説明した。

 

同年にCairn India社はイギリスを拠点とする採掘企業のヴェダンタ(Vedanta)グループに買収された。ヴェダンタが国内外での石油採掘から手を引く決断を下したのは、世界中の石油業界を震撼させたオイル・グラット(供給過剰)による規模縮小・コスト削減・人員削減が原因の一つとされる。一方、Cairn India社は2012年から難航しているスリランカとのガス関連の交渉をまとめあげようと苛立っていた。

 

結局、Cairn India社は2015年10月にスリランカから完全撤退し、マンナール盆地の石油採掘に投資した2億4000万米ドルを損金計上することになる。


次回は、スリランカでの権力闘争が石油業界に及ぼした悪影響を中心にご説明します。

この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2015年10月に掲載した記事「The Search for Credibility and Oil」を、翻訳・編集したものです。

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