アメリカ合衆国が「ディズニー社」の著作権を保護し続ける理由

今回は、アメリカ合衆国が「ディズニー社」の著作権を保護し続ける理由を見ていきます。※本連載では、国際パテント・マネタイザーである正林真之氏の著書『貧乏モーツァルトと金持ちプッチーニ』(サンライズパブリッシング)の中から一部を抜粋し、「権利ビジネスの仕組み」を解説します。

キャラクターを守るのは著作権か、商標権か?

知らないひとはいないだろう「ミッキーマウス」。当然「ミッキーマウス」も商標登録はされている。

 

結局キャラクターは、著作権で守るのか、商標権で守るのか、どっちなのだろうと思われたひともいるかもしれない。

 

キャラクターの場合、その原画が「美術の著作物」として著作権による保護が認められているケースが多い。キャラクターのデザインは著作権による保護だけで十分とも考えられるが、著作権も実はパーフェクトではない

 

著作権は出願しなくても発生するが、この場合、権利を主張するためには、自らが作り出したキャラクターであることを証明するものを残しておかなくてはならない。「たまたま似たような著作物を創作しただけです」と言ってくるような第三者が現れ、その人がそれを証明してしまえば、自分の著作物だと言えなくなってしまう。そこをカバーするのが商標権なのである。

租税回避せず、すべての税金を納税するディズニー社

アメリカ合衆国におけるディズニー社の存在価値、ステイタスがどれほどのものか想像できるだろうか。

 

ちなみに、AppleやGoogleに代表されるアメリカの大企業の半数以上は、タックス・ヘイブンといわれる租税回避地に本社を置き、巨額の租税回避を実施している。

 

ところが、ディズニー社はそんな小細工は労せず、利益から定められたすべての税金をアメリカ合衆国に納税している。そんなディズニー社を、国や政治家達が軽々しく扱うわけはない。驚くべきことに、ディズニー社の著作権を守るために、合衆国の政治家達は一丸となって法律そのものを変えてくるのである。

 

アメリカの著作権法は、ミッキーをはじめとするディズニー社の主要なキャラクターの著作権が切れる直前になると、その保護期間の延長を定める改訂措置を何度も繰り返している

 

アメリカで初めて著作権法が誕生したとき、その保護期間は14年間と制定されていた。その後も改定措置が繰り返され、保護期間は延びる一方だったが、現在とは異なり、著作物保護のために登録が必要であった当時、申請を行う者はごく一部でしかなかった。

 

ミッキーマウス登場の以前から、著作権を主張したい一部の有力者のために保護期間を延ばす措置は行われていたのだが、ミッキーマウスの登場により、その傾向が一層高まったのだ。ミッキーマウスは1928年に公開された「蒸気船ウィリー」でデビューを果たしたが、当時の著作権法に従うと、その権利は1984年には失効してしまうことになっていた。

 

そのためディズニー社は、その保護のため、さらに合衆国を動かすことになる。1976年、アメリカ連邦議会は著作権法制度の大幅な見直しを決定した。これまでの法律では、「作品発表から56年間」であったものを、ヨーロッパの基準である「著者の死後50年間」に変更された。

 

これにより、ミッキーマウスは、2003年まで著作権法で守られることになった。そして、2003年が近づくと、またもお決まりの活動が始まったのだ。

 

1998年に著作権法延長法が制定され、著作権の保護期間は原則として「著者の死後70年」となった。しかも、法人の場合は「発行後95年間」または「制作後120年間」のどちらか短い方が適用されることとなった。さらにミッキーマウスは、2023年まで著作権で保護されることになっている。

法改正で著作権を延長し、ミッキーマウスを「延命」

これらのことは「ミッキーマウス延命法」とか「ミッキーマウス保護法」などと揶揄する形で呼ばれている。2023年もすぐそこに迫っているが、アメリカの著作権法はもちろんすでに改定を前提に動いており、「著者の死後110年」までという話も出ているくらいだ。

 

これらのことが「フェアユース」の観点からすると長過ぎるのではないかという批判もあることは事実だ。

 

「フェアユース」とは、批評、解説、ニュース報道、教授、研究または調査等が目的の公正な利用であれば、著作権者の許諾がなくても著作物を利用できる制度であるが、少なくともディズニー社の著作物に関しては、「フェアユース」さえも認められていない感さえある

 

日常を忘れさせてくれるディズニーランドの裏側には、常識さえも超えた非日常の法律が存在する。豪華につくられている建物の数々は、アメリカ合衆国という巨大な国家に守られた著作権料でできているのである。

 

<本連載のまとめ>

 

●貧乏 不労所得のイメージがある作家の「夢の印税生活」は、文学的評価がよくても売れなければ夢に終わる

 

●金持ち いったん流行作家となれば桁違いの印税を手にするのも事実

 

●金持ち 作家がタレントの場合は、印税をもたらすものは自らの才能だけではなく、知名度も要因となるため、所属事務所との印税配分が常だが、トラブルになるケースもある

 

●ひとはブランドを愛し、ブランド名にお金を払っている

 

●金持ち 商標を守ることでブランドを確立すれば、中小企業が大企業に勝つことは不可能ではない

 

●金持ち トンボ鉛筆の消しゴムケースの「青・白・黒」の組み合わせなど色の登録商標もあるまとめ

 

●金持ち「おーいお茶」などの音も商標となり得る

 

●商標権は著作権の脆弱性をカバーする

 

●金持ち ミッキーマウスの著作権保護のためにアメリカでは法律が改正され続けている

 

 

正林 真之

正林国際特許商標事務所所長・弁理士

正林国際特許商標事務所所長・弁理士

日本弁理士会副会長 国際パテント・マネタイザー 特許・商標を企業イノベーションに活用する知財経営コンサルティングの実績は国内外4000件以上。
1989年東京理科大学理学部応用化学科卒業。 1994年弁理士登録。 1998年正林国際特許事務所(現・正林国際特許商標事務所)設立。
2007年~2011年日本弁理士会副会長。
東京大学先端科学技術研究センター知的財産法分野客員研究員、 東京大学大学院新領域創成科学研究科非常勤講師等を務める。

HP:http://www.sho-pat.com/

著者紹介

連載印税、商標、著作権…不労所得を生む「知財ビジネス」の仕組み

貧乏モーツァルトと金持ちプッチーニ

貧乏モーツァルトと金持ちプッチーニ

正林 真之

サンライズパブリッシング

なぜモーツァルトは天才なのに貧しいままで一生を終え、プッチーニは巨万の富を築いたのか──。 弁理士会の革新家である国際パテント・マネタイザー正林真之氏が身近な疑問をもとに紐解く勝者と敗者を分ける「権利ビジネ…

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