CMでおなじみの「おーいお茶」も音商標のひとつ
他人の商品やサービスと区別するための目印が商標なら、音楽的要素のみで他人の商品やサービスと区別する「音商標」があってもいい。と、考えるひとがいても不思議ではない。
そして、そのとおり、メロディーやハーモニー、リズムまたはテンポ、音色など音楽的要素のみからなる商標の存在をご存じだろうか。
それが「音商標」であるかどうかはご存じなくても、きっとこれらを聞いたことのないひとはいないだろう。
「おーいお茶」
「エ・バ・ラ、焼き肉のたれ」
「ファイトー、イッパーツ」
「おーいお茶」では、「本商標は、『おーいお茶』という人の音声が聞こえる構成となっており、全体で4秒の長さである」と規定されている。
「ファイトー、イッパーツ」については、「本商標は、『ファイトー』と聞こえた後に、『イッパーツ』と聞こえる構成となっており、全体で約5秒間の長さである」と規定されている。
「ブルーレットおくだけ」や、あの「正露丸」のラッパのメロディーも「音商標」として登録されている。
50年前から使われてきた「エ・バ・ラ焼肉のたれ」の商標登録が実現されたときの社内の喜びの声が聞こえてきそうな、そんなエピソードも「音商標」ならではのものだろう。
「iPhone」のライセンス料は年間1億円!?
「iPhone」といえば、あのAppleを最も象徴する登録商標だ。
Appleの他の製品にも、決まって頭に「i」のイニシャルがついている。
「iMac」、「iBook」、「iPad」、「iPod」、そして「iTunes」「iPhoto」、「iSight」と徹底して「i」を頭に関したグローバルブランドだ。これだけ「i」にこだわるために要したライセンス料は、いったいいくらになるのだろうか。
もちろん、Apple社がすでに所有していた商標もあっただろうが、すべてがそうではないだろうことは容易に想像がつく。
ちなみに、現在のApple社の繁栄を支え、Apple社の象徴といってもいいあの「iPhone」に類似する登録商標「アイホン」と「AIPHONE」を保有していたのが日本の「アイホン株式会社」だった。
結果的にApple社は、商標のライセンス料を支払って、「iPhone」という名称を使っているのだが、そのライセンス料は年間1億円にも及ぶと推測されている。また、日本語でアイフォンではなく、アイフォーンと呼称しているのもこの商標権によるものだろう。
ちなみに、Apple社の創業者であるスティーブ・ジョブズ亡き後にApple社から販売された腕時計型情報端末の商品名は、「iWatch」ではなく「AppleWatch」だった。
ジョブズなら、たとえいくら払おうとも、「iWatch」という名前にこだわっただろうと思うのは私だけだろうか。
正林 真之
正林国際特許商標事務所所長・弁理士