天文学的な印税を稼ぐ「人気漫画家」がいる一方・・・
前回の記事『一度書いてしまえば不労所得!?…「印税」の仕組みとは?』(関連リンク参照)で述べたように「夢の印税生活」がかなえられる、もうひとつの職業がある。それが漫画家だ。ただし、「夢の印税生活」に至るまでには険しい人気漫画家への苦難の道が待っている。
漫画家の世界には、「連載貧乏」という言葉があるという。
人気漫画家の佐藤秀峰氏が書かれた『漫画貧乏』(PHP研究所)という漫画エッセイにその全貌が詳しく書かれているが、簡単に言ってしまえば、漫画家は自らの作品が単行本として出版され、そこからの印税収入が入るまでは、描けば描くほど貧乏になっていくという。
漫画家の収入源は主にふたつ。ひとつは漫画誌等での原稿料。そしてもうひとつが単行本として出版されたときの印税だ。
実際、天文学的な印税を稼ぐ漫画家も多数存在する。『ONEPIECE』の尾田栄一郎氏の場合、総発行部数が4億部、1冊の印税が40円としても160億円。
『進撃の巨人』の諌山創氏の場合、発行部数7千万部として約10億円の印税を稼いでいることが推測される。
『Dr.スランプ』や『DRAGONBALL』の鳥山明氏、『SLAMDUNK』や『バガボンド』の井上雄彦氏をはじめ、トップ100の年間の印税収入の平均は527千万円を突破するとも言われている。
これにアニメや映画の放映権や、様々なキャラクターグッズの権利等を加えたら、いったいどんな額になるのだろうか。
まさに、金持ちプッチーニ漫画家軍団だ。
コンビニのバイトのほうが遙かに稼げるケースも
ところが残りの、といっても少なくとも単行本が出版されている漫画家の印税収入は3百万円を切るらしいのだ。
さらに、前述したように、漫画界には「連載貧乏」という言葉があり、連載漫画を抱えれば抱えるほど、貧乏になっていくらしいのだ。
いくら連載料をもらっても、そこからアシスタントへの支払いや税金等を引くとほとんどお金は残らず、コンビニでアルバイトをしたほうが遙かに稼げるという。
アシスタントに至っては、時給180円という恐ろしい話まで載っている。
一握りの中の金持ちプッチーニ漫画家以外は、全員が貧乏モーツァルト漫画家と言っても過言ではないかもしれない。
ほとんどの漫画家、漫画家志望者はたとえ溢れる漫画の才能があっても、それが単行本として売れる金持ちプッチーニ漫画家になれなければ、貧乏モーツァルト漫画家として誰にも知られず散っていくことが、漫画という夢の世界におけるもうひとつの過酷な現実なのだ。
正林 真之
正林国際特許商標事務所所長・弁理士