ビル・ゲイツやウォーレン・バフェットに代表される世界の富裕層の多くは、自らの資産を活用して「財団」等を立ち上げ、社会問題の解決に挑むなど、積極的な社会貢献活動を行っています。日本ではまだあまり浸透していない社会貢献活動の可能性について、ファンドレイジングアドバイザーの肩書きを持つ宮本聡氏が解説します。

寄付だけでなく財団を立ち上げ、社会問題解決を目指す

「フィランソロピー(英:Philanthropy)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? これは、ギリシャ語の「愛(Phil)」と「人類(Anthropy)」を合わせた造語で、日本では「博愛主義」や「慈善」と訳されますが、「社会貢献」と訳したほうが現代的かもしれません。

 

一般的には、企業による公益活動・社会貢献活動を意味し、企業による従業員のボランティア活動の支援、従業員が行った寄付に応じて企業も寄付を行うマッチングギフト、など、多種多様な社会貢献に対して使われる言葉です。

 

寄付や社会貢献活動の先進国であるアメリカでは、企業の社会貢献活動のみならず、個人や企業による社会貢献活動や寄付行為に対する呼称として定着しています。

 

そしてこのフィランソロピーを実践する人を「フィランソロピスト」と呼びます。代表的なフィランソロピストとして、マイクロソフト社の共同創業者であるビル・ゲイツ氏、アメリカの著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏、同じく著名投資家であるジョージ・ソロス氏などの名前が挙げられます。

 

彼らは、自らが働くことで巨万の富を得た実業家・投資家ですが、その行動の共通点は、単に寄付をして終わりというものではないということです。自らの「財団」を立ち上げ、ビジネスや投資で培った知識や知恵を交え、社会問題の解決に挑む…など、積極的に社会貢献活動に参加しています。富裕層は経済活動を通じて資産形成をしたのちに、第二の人生のステップとしてフィランソロピーに向かう傾向があるのです。

日本の個人寄付は「東日本大震災」を機に増加傾向

日本では寄付や社会貢献活動と聞くと、高尚なもののように感じ、自分には無関係と感じてしまうかもしれません。また、寄付をすることはあっても、それを人に話さず自分の心に留めておく「陰徳の美」という価値観も日本にはあります。そのため「日本には寄付の文化がない」などといわれることも少なくありません。

 

しかし、「浪花の八百八橋(はっぴゃくやばし)」といわれる大阪・堺の町中にある橋という橋は、財を成した商人たちの“寄付”ですべてが造られています。「頼母子講(たのもしこう)」や「無尽(むじん)」と呼ばれる相互扶助の仕組みは昔から地域に存在していいたのです。

 

そして今、「社会課題先進国」と呼ばれる日本でもフィランソロピストたちの活動が始まっています。あまり話題に上ることはありませんが、寄付は意外と身近なものなのです。

 

日本の寄付の規模を数字で見てみましょう。日本ファンドレイジング協会の発行する『寄付白書2017』によれば、2016年の日本の個人寄付額は7,756億円と推計され、前回調査時の2014年の7,409億円と比較すると4.7%増加しています。

 

「寄付をしたことがある」と回答する寄付者数の推定では、2009年〜2010年時点では年間約3,700万人だったものが、東日本大震災があった2011年には7,026万人と大きく増加し、2016年時点では4,571万人となりました。これは、15歳以上人口の45.4%が寄付をしていることになります。

 

寄付を行った人の平均金額は27,013円で、前回調査時の5,834円から大幅に増加しています。日本の個人寄付は、東日本大震災を機に寄付者数・寄付金額ともに増加している傾向にあるといえるでしょう。

 

(出典『寄付白書2017』)
[図表]日本の「個人寄付総額」「会費総額」「金銭寄付者率」の推移/ 出典『寄付白書2017』

 

宮本 聡

営業コンサルタント

ファンドレイジングアドバイザー

(株)シティインデックス海外不動産事業マネージングディレクター

認定特定非営利活動法人ACE 理事

公益財団法人 ふじのくに未来財団 理事

株式会社リビルド 社会貢献部長

一般財団法人 共益投資基金JAPAN 理事

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