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不動産売買でトラブル!「契約解除」ができる条件とは?

不動産投資の経験があっても、民法についてよく知らない人は多い。知らなくても、さほど困らないからだ。しかし民法は、土地や建物の権利という大きな財産を売買する際の取り決めに係る法律であるわけだから、無知であり続けることは大きなリスクである。そこで本連載では、不動産取引に関連した「民法」について解説する。第2回のテーマは不動産売買の「契約解除」について。

購入したアパートが、期日に引き渡されない!

アパート1棟の売買契約を考えましょう。例えば、2018年6月30日に、買主であるA氏が、売主であるB氏からアパート1棟を1億円で購入する契約です。ところが、6月30日になってもB氏は海外旅行で遊んでおり、アパート1棟を引き渡そうとしません。A氏はどうすればよいでしょうか?

 

これは、履行期(6月30日)を過ぎても契約の相手方が債務を履行しない「履行遅滞」という状況です。この場合、A氏が怒って「ふざけんな! お前からはもう買わないぞ!」と訴えることはできません。A氏は、その前に、相当の期間を定めて引き渡しを催告しなければいけないのです。

 

催告しても引き渡してくれない場合、契約を解除することができます。そして、A氏はB氏に対して損害賠償を請求することができます。

購入した物件が、引き渡し前に火事で燃えてしまった!

それでは、B氏の不始末で火事が発生したためにアパート1棟が燃えてしまい、アパート1棟全部が使えなくなった場合はどうでしょうか? この場合、A氏が引き渡しを催告しても、もはや意味がありません。それゆえ、A氏は催告の必要はなく、直ちに契約の解除を行うことができます。そして、A氏はB氏に対し、損害賠償を請求することができます。

 

債務不履行の場合、契約を解除するには、解除の意思表示を行うことによって足ります。相手の承諾は必要ありません。一方的に相手に伝えるだけでいいのです。解除がなされると、契約は初めからなかったものとされ、両当事者は元の状態に戻す義務(原状回復義務)を負うことになります。

料金が支払われる前に、転売されてしまった!

債務不履行でも、不動産を取り戻せないケースがあります。それは、既に転売されてしまい、登記済みのケースです。

 

例えば、B氏が土地をA氏へ売却し、A氏が代金を支払わないうちに、A氏がC氏へ転売し、C氏が所有権移転登記を済ませたとします。A氏の債務不履行ですから、B氏は契約解除できるように見えます。しかし、この場合、B氏はC氏へ土地を返すように求めることができません。つまり、B氏は落ち度が全くないのに負けてしまうのです。このケースでは、第三者の登記がポイントとなります。

契約したが他の物件を買いたくなった!

基本的には、一度契約が成立すれば、原則として解除することはできません。不動産売買という重大な約束を簡単に破られては困るからです。勝手に「解除だ!」を騒いでも、債務不履行として損害賠償となる可能性もあります。

 

しかし、買主が売主に対して「手付金」を支払っていると、買主はそれを放棄すること、売主は倍返しすることによって契約を解除することができるのです。

 

手付金は契約を結ぶ際に相手方に渡すお金であり、当事者間で何も定めていなければ、「解約手付」すなわち、契約が成立しても、相手方が契約履行に着手するまでは解約できるようにするためのお金となります。

 

買主が、物件を探し回っていて、「これがいい!」と決意して売買契約を締結し、手付金を支払ったとしても、その翌日に「もっと良い物件が見つかった!」ときには、その手付金を放棄することによって、契約をキャンセルすることができるのです。

欠陥物件を買ってしまった!

買主A氏は、売主B氏からアパート1棟を買い取りました。しかし、取得した直後に、屋根に穴があいて雨漏りすることが判明しました。A氏は「欠陥物件をつかませやがって!」と激怒することでしょう。この場合、A氏はどうすべきでしょうか?

 

A氏が雨漏りする欠陥を知らなかった(それについて過失もなかった)のであれば、1年以内に売主B氏に損害賠償を請求することができます。また、賃貸経営することができない場合には、契約を解除することもできます。

他人の不動産を売りつけられた!

買主A氏は、売主B氏からアパート1棟を購入しました。しかし、そのアパートの所有者はC氏であることが判明しました。つまり、B氏は他人の不動産をA氏に売りつけたのです(他人物売買)。A氏はアパートを取得できるのでしょうか?

 

このケースについて、ちょっと考えてみましょう。売主B氏が、買主A氏を騙したという単に酷い話なのでしょうか。そうとは限りません。これは取引として、現実的に想定できる話です。自らが所有する前に売買契約を結んだ売主B氏は、買主A氏に対する債務を履行するために、C氏から買い取って引き渡せばいいのです。

 

しかし、B氏がC氏から買い取ることができず、債務不履行となった場合が問題となります。この場合、A氏がC氏の所有物であったことを知らなければ、契約を解除することができ、それに伴って損害賠償を請求することができます。

 

一方、A氏がC氏の所有物であったことを知っていたならば、契約を解除することはできるものの、損害賠償を請求することはできません。B氏がC氏から買い取ることに失敗することも契約時に想定できたはずだからです。

 

 

岸田 康雄

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

一橋大学大学院商学研究科修了(会計学及び経営学修士)。 国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会検定会員)、公認会計士、税理士、中小企業診断士、一級ファイナンシャル・プランニング技能士。日本公認会計士協会経営研究調査会「事業承継専門部会」委員。
中央青山監査法人(PricewaterhouseCoopers)にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部門(不動産投資)、SMBC日興証券企業情報本部(中小企業オーナー向け事業承継コンサルティング業務)、みずほ証券グローバル投資銀行部門(M&Aアドバイザリー業務)に在籍し、中小企業オーナーの相続対策から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継と組織再編のアドバイスを行った。

WEBサイト https://jigyohikitsugi.com/

著者紹介

連載120年ぶりの大改正!不動産投資家のための「民法」入門

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2018年8月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 

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