不動産投資の経験があっても、民法についてよく知らない人は多い。知らなくても、さほど困らないからだ。しかし民法は、土地や建物の権利という大きな財産を売買する際の取り決めに係る法律であるわけだから、無知であり続けることは大きなリスクである。そこで本連載では、不動産取引に関連した「民法」について解説する。第4回のテーマは「土地購入のトラブル」。

土地売買の契約は、杜撰なことも多い!?

土地は非常に大きな資産であるため、その売買は慎重に行うべきです。しかし、いざ取引や契約を行おうとすると、面積の測量や境界線等に関して、意外といい加減なところがあると気が付きます。たとえば、不動産登記簿上に「地積」という名目で、その土地の面積は記載されますが、この「地積」も正確な数値ではないことがあるのです。

 

それでも納得の上で購入したのならば、問題はないのかもしれませんが、自身の知識が不足していることにつけこまれての大損や、相手の知識が不足していることに巻き込まれてのトラブルは、土地というものが大きな資産であるがゆえに、絶対に避けたいところです。

 

とはいえ、どうしても手に入れたい土地、もしくは既に購入してしまった土地に「問題があった!」ということも起こりうるでしょう。そのような事態への正しい対処法を知るために、本記事では、不動産の土地売買に関して、よくあるトラブルと民法上の解釈を解説しました。条件が揃えば、代金の減額や契約解除を求めたり、場合によっては損害賠償を請求できるケースもあります。「騙された」と泣き寝入りする前に、契約の事後にどのような対処ができるか、しっかりと知識武装しましょう。

購入した土地の一部が、売主の所有ではない場合

買主A氏は、売主B氏から土地200㎡を購入しました。しかし、じつはその土地のB氏の持分は4分の3(150㎡)しかなく、残りの持分4分の1(50㎡)はC氏のものであることが判明しました。つまり、売主B氏は他人と共有する土地を買主A氏に売りつけたのです(一部他人物売買)。この場合、A氏は土地を200㎡すべて取得できるのでしょうか?

 

これは売主B氏が買主A氏を騙しただけの酷い話に思えますが、売主B氏は買主A氏に対する債務を履行するために、C氏の持分4分の1(50㎡)を買い取って引き渡すことを計画していたのかもしれません。このような取引が行われ、実際に契約が交わされることは、現実にある話です。

 

このケースでは、B氏がC氏から買い取ることができず、債務不履行となった場合、問題となります。買主A氏は、C氏の持分のことを知っていても、知らなくても、売主A氏に対して代金の減額を求めることができます。しかし、損害賠償の請求については、A氏がC氏の持分があることについて、知らなかったときに限ります。

土地を測量したら、契約内容よりも小さかった場合

買主A氏は、賃貸アパート建築のために先行して、売主B氏と「土地200㎡を1㎡単価50万円で譲渡する」と書かれた契約を締結し(数量指示売買)、土地を購入しました。しかし、その土地を測量してみると実際には180㎡しかなく、20㎡足りないことが判明しました。この場合、A氏は何を請求することができるでしょうか。

 

もしA氏が180㎡であることを知っていたのであれば、A氏にとって何ら不都合はないでしょう。単に契約書の記載ミスということになりますから、A氏は何も請求することはできません。

 

しかし、A氏が180㎡であることを知らなかったのであれば、売主B氏に対して、代金の減額を求めることができます。また、それに伴い、損害賠償を請求することができます。さらに、180㎡しかないことによって、当初予定していた賃貸アパートが建設できない事態に陥ったのであれば、契約を解除することができます。

購入した土地に抵当権があり、競売にかけられた場合

買主A氏は、売主B氏から土地を購入しました。しかし、その土地には金融機関の抵当権が設定されています。B氏が債務を返済することによって抵当権が消滅すれば何も問題ないでしょう。しかし、債務が返済されず、金融機関が抵当権を行使して競売にかけてしまいました。このような場合、A氏は何を請求することができるでしょうか。

 

買主A氏が抵当権のことを知っていたとしても、A氏は、売主B氏が抵当権を消してくれるはずだと期待していたことでしょう。土地が競売されることによってA氏の期待は裏切られ、購入した土地を取得することができなくなりました。それゆえ、買主A氏は売主B氏に対して契約の解除を求めることができます。また、それに伴って損害賠償を請求することができます。

 

 

岸田 康雄

島津会計税理士法人東京事務所長 事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2018年8月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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