「スモールM&A」とは、取引金額が数百万円から数千万円程度、従業員規模が数名から30名以下という事業規模の比較的小さいM&Aを意味します。本記事では、株式会社つながりバンク代表取締役社長の齋藤由紀夫氏が「スモールM&A」を活用した起業について解説します。

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「後継者不在」に悩む中小企業は多数

事業規模が比較的小さいM&A、いわゆる「スモールM&A」が水面下で拡大しつつあります。取引金額では、数百万円から数千万円程度、従業員規模で数名から30名以下というのがボリュームゾーンです。仲介市場も未成熟な市場ではありますが、以下の理由から注目を浴びています。

 

①会社を継がないご子息・ご息女たち


増加要因としては「後継者問題」が挙げられます。中小企業庁の調査によると、20年前に約9割であった親族内承継は年々減少し、直近の調査では4割を切っています。端的に言えば、会社を継いで維持する自信も、メリットもないと判断しているからでしょう。親のしがらみや借金を背負うのであれば、別の人生を歩みたいという気持ちも理解できます。後継者不在の中小企業は6割を超えると言われています。

 

②次々と訪れる外部環境の変化


「法改正」の影響によるコスト高などの理由で、売却を決定するケースも増加中です。業界例でいえば、人材派遣、介護、運輸、調剤薬局などです。逆に、許認可申請が厳しくなった金融関連事業等では、売上がゼロでも高値で売買されるケースもあります。「競争の激化」も多い理由ですが、モノをつくれば売れた時代を経験した経営者自身が進化を拒んでいるケースも多く、世代交代の必要性を感じます。

 

③大きな声では言えない売却理由


銀行や従業員には表立って伝えにくい理由もあります。筆者の経験で多いのは「経営に飽きた」という本音トークです。創業社長は突破力がある代わりに、安定期に入ると他の事業に目移りしがちです。また、事業を始めたものの「実は社長業が向いていなかった」ことに気づき悩んでいる経営者も多いです。その他「海外でのんびりしたい」「人生観が変わった」等の声もよく聞きます。事業意欲が低いまま経営を続けるのは、精神的にも負担がかかりますので、納得できる理由ではあります。

 

④事業を中古で仕入れる発想


事業が新規でなければいけない理由はありません。中古不動産のリノベーションのように、手直しすれば生き返る事業や会社・組織はたくさんあります。元来、日本のビジネスマンは、既存のビジネスを真似て修正するのが得意であり、その観点からも新規事業にM&Aを取り入れるのは、自然な流れかもしれません。そこに気づき始めた方々がこの市場に注目しつつあります。事業は創るものではなく、買って伸ばすもの。そんな新たな常識が生まれつつあります。成功までの時間を短縮し、事業投資リスクを軽減する手段として、スモールM&Aが注目を浴びるのは自然の流れかもしれません。

 

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事業はどこで買えるのか?

不動産や上場株式のように、流通市場があるわけではありません。今のところ、インナーサークルで取引されているのがほとんどですが、専門の仲介サイトもいくつか登場してきました。将来的には、売手自ら情報発信し、それを人口知能(AI)が売手と買手とをマッチングする時代が来るかもしれません。ただし、まだ売手側の精神的なハードルが高く、表に出る案件は氷山の一角です。幸いこの分野に興味を持つ方々が増えてきたので、それに比例して案件流通の速度や量も増加すると予測します。自らの人脈や情報ルートを使って売手を見つけることも一案でしょう。


事業を買ったとしても、予定どおりにいかないことがあるかもしれません。きっと、たくさんの喜怒哀楽をリアルに味わえるはずです。事業投資のオーナー側に回ってきた方々は、皆さん人間味あふれる方が多いです。苦労しているように見えても、本人は楽しんでいるケースがほとんどです。リカバリーしやすいサイズで、仮に失敗しても致命傷を負わず、次の糧にできるスモールM&Aは、第一歩を踏み出すには最適な選択肢だと確信しています。

65歳までの継続雇用は今や「企業の義務」だが・・・

日本政策金融公庫の調査によると、起業家の平均年齢は42歳だと言われています。意外に年齢が高いと感じるかもしれませんが、平均寿命からすると、まだ人生折り返し地点です。ベストセラー本『LIFE SHIFT』は、豊富な統計データから平均寿命100年時代の到来を予言し、特に日本における超長寿化社会の働き方に一石を投じています。長期的な視点で「個」としてビジネスを持つことが、今後ますます注目されるでしょう。


2013年より、企業は大小を問わず65歳までの継続雇用が義務付けられました。背景には、国が支えきれなくなってきた社会保障制度があると思われます。東京都の調査では、継続雇用の契約は1年更新で、賃金は定年時の5割程度が多いようです。本制度の問題は、雇用する企業側から望んだ制度ではないということです。雇用される側が必要とされていないと感じた場合、精神的な喪失感が伴い、組織運営において負の効果が出る可能性があります。


とはいえ、安易に起業することはおすすめしません。まずは「経済的な安定」です。自己実現の前に、生存欲求が満たされなければ、良い仕事などできません。ゼロからイチをつくり、革新的なサービスを創る起業は格好が良いですが、そう簡単ではありません。短期間で成功した起業家の多くは、良い意味で自己中心的で、周りを強引に巻き込む能力に長けたマイノリティの方々です。


企業内でそれなりの経験を積んだシニア層は、ビジネスマンとしての足腰が鍛えられています。新規事業を立ち上げた経験はなくとも、事業の欠点や課題を見つけ、改善することに長けている方は多いはずです。その経験は、事業承継や再生の現場において大いに役立ちます。不動産分野で「中古・リフォーム・リノベーション市場」が急拡大したように、事業分野においても同様に拡大するでしょう。

誰でも「スモールM&A」で起業できる時代に

起業の成功確率は決して高くなく、国税庁のデータによれば5年後の「生存率」は1~2割と厳しいのが現実です。ただし、ある程度業歴のある「事業を買う」ことで、成功確率は格段に高まります。知見ある分野を選べば、さらに良いでしょう。たとえば、大手システム会社の40代男性が、ストレッチジムの譲渡を受けて成功した事例があります。きっかけは、長年ユーザーとしての知見があったことです。独自の集客モデルと管理手法によって売上を伸ばしています。


それでも不安な方々には、筆者からひとつ提案があります。会社を辞めてから気づくことですが、独立した方々に世間はそれほど優しくありません。筆者も起業時に、法人新規口座を一つ開設するのにも苦労した思い出があります。業歴がある会社には、有形無形の資産・信用力などがあります。どうせ辞める覚悟をしたのであれば、ダメもとで、在籍する会社の支援を得ながら、M&Aでの企業内独立を提案するという手もあります。

 

前例がないと一蹴されるかもしれませんが、冷静に考えれば、企業が抱える雇用問題を解決し、社会全体にも好影響を与える可能性がある仕組みです。また、そのような柔軟な発想ができる会社は活力があるはずです。新規事業を立ち上げる社内ベンチャーよりは成功確率が高いはずです。そして、ヒト・モノ・カネ・情報・ブランド、何を活用させるかは、あなたの交渉次第です。

 

特殊な能力がなくても、スモールM&Aを使えば起業できる時代が到来しました。営業に自信がなければ、集客モデルがあり、顧客がいる事業を買えば良いのです。人それぞれ、得手不得手があります。身の丈に合った起業にスモールM&Aはきっと役に立つはずです。

 

 

齋藤 由紀夫

株式会社つながりバンク 代表取締役社長

 

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