「技能、療法」や「経歴」に関する事項の広告は禁止
前回に引き続き、動物病を繁盛させるために押さえる「集客」について見ていきます。
【5】広告は法規制に注意して行う
広告宣伝を行うに際しては、関係法令に違反しないように最大限の注意を払うことも必要となります。獣医療法17条では、一部の事項を除いて、獣医師または診療施設の業務に関する「技能、療法」または「経歴」に関する事項を広告してはならないことと定めています。たとえば、次のような事項は広告できません。
(1)技能・療法
○○の予防、○○の検査、○○の治療(○○は疾病名、病原体名)、健康診査(健康診断、健康チェック)、避妊(不妊)、去勢、予防接種(ワクチン接種)、手術、注射、駆虫、麻酔等
(2)経歴
○○大学獣医学部卒業、○○獣医師会会員、○○獣医学会会員、○○動物病院(広告している診療施設とは別の施設)に勤務、○○市学校飼育動物獣医師、○○健康保険制度対応病院等、開院○周年
逆にいえば、獣医師または診療施設の業務に関する「技能・療法」または「経歴」に関係しない事項は広告できます。具体例としては以下のようなものが挙げられます。
●獣医師である旨
●診療施設の名称
●連絡先
●所在の場所を表示する事項
●常時診療に従事する獣医師の氏名
●診療日または診療時間
●入院設備の有無
●保健指導
●健康相談
●料金(初診料○○円)など
景品表示法や薬事法の定めるルールにも留意
また、以下の項目も広告可能です。
①獣医師または診療施設の専門科名
専門科名とは、大学の講座名にあるか、診療対象動物を示すもののことです。大学の講座名としては以下のようなものが挙げられます。
外科、整形外科、内科、繁殖科(産科、臨床繁殖科)、放射線科(臨床放射線科)、皮膚科、泌尿器科、腫瘍科、消化器科、循環器科、眼科、歯科。
②獣医師の学位または称号
ア「学位」……大学評価・独立行政法人学位授与機構または旧学位令により授与される学位(学士、修士、博士)。正式には、学位の頭に大学名を併記する。
イ「称号」……得業士(旧制の専門学校の卒業生に与えられた称号)または獣医師法附則第19項に規定する新制獣医師等。
③農林水産省令に規定されている事項
ただし、いわゆる比較広告や誇大広告、費用(料金)の広告は認められません。比較広告とは、ほかの診療施設と比較して優良である旨の広告です(例「どこの動物病院よりも安全に手術を行います」)。
また、誇大広告とは提供する獣医療の内容について、著しく事実に相違する、または必ずしも虚偽ではないが、事実を不当に誇張して表現していたり、飼育者などを誤認させる広告です(例「効果抜群のワクチンを接種します」)。一方、「当院はどこよりも安くフィラリア症の予防を行います」などといった費用(料金)の広告は、低価格競争による獣医療の質の低下を招くおそれがあるために禁じられています。
以上のほか、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)や薬事法でも広告の手段、中身などに関するルールが厳しく定められています。景品表示法では、たとえば誇大広告、大げさな表示、虚偽表示、消費者をだますような表示などを、一方、薬事法は、動物用医薬品及び動物用医療機器を含む医療機器などの虚偽・誇大広告などを禁止しています。
これらの法令に違反する広告は、その法令に基づく指導や処分などの対象となるおそれがあります。さらに、前述した各法令に基づいて、独自の広告ガイドラインが制定されていることもあります。その場合にはガイドラインについても遵守することが必要です。