前回は、海外資産の相続に関する「法律面」の基本的なポイントについて説明しました。今回は、オーストラリアの不動産を日本人が購入するにあたって、理解しておくべきことについて見ていきます。

「居住形態」により購入できる不動産が違う点に注意

オーストラリアの不動産を日本人が購入するに当たっては、その日本人の居住形態により違いがありますので、以下、非居住者である日本人の場合と、居住者である日本人の場合に分けて検討します。

 

【非居住者の日本人の場合】

非居住者である日本人が購入できるオーストラリアの不動産としては、以下のものがあります。

 

①新築物件

②更地(ただし、購入後2年以内に住宅の建築を開始することが条件)

③Integrated Tourist Resort(ITR)内の住居(中古も可)

④開発業者が外国人による取得の許可を受けた新築物件

 

これらのうち、①及び②の購入に際してはオーストラリア政府の機関である、Foreign Investment Review Board(FIRB)の許可を得る必要がありますが、③及び④についてはFIRBの許可を得ずに購入することが可能です。

 

FIRBの許可を得るための申請は、インターネットを通じても行うことができ、FIRBは30日以内に申請に対する許可を与えることとしています。具体的な物件の売買契約をFIRBの許可を得る前に締結することは可能ですが、契約書において、FIRBの許可を得ることを条件とすることが必要です。

 

②の場合、実際に自ら建物を建築することが必要であり、③についてはITRの認定を受けたリゾート地はオーストラリア全体で14カ所にとどまることから、数的にはそれほど多いものではなく、④についてもそれほど多くの物件があるわけではありません。

 

そのため、非居住者である日本人がオーストラリアの不動産を購入する場合の選択としては、①の新築の物件(戸建てやマンション)が多数であるといえます。

 

また、これまで歴史的に順調に不動産価格が上昇していることから、購入した物件を賃貸に出してインカム・ゲインを狙う投資というよりも、不動産価格が上昇したときに売却してキャピタル・ゲインを得るために不動産を購入することが多いといえそうです。

 

なお、購入した物件を賃貸に出す際には別途FIRBの許可を受ける必要はありません。

永住権を持っていればFIRBの許可は必要ない

【居住者である日本人の場合】

非居住者と比較しますと、オーストラリアに12カ月以上居住することが許されている一時居住ビザを有してオーストラリアに居住する日本人(以下、一時的居住者といいます)はさらに取得できる物件が広がりますが、取得しているビザによって取得可能な不動産の範囲が異なります。永住権を取得した場合やオーストラリア国籍に変更した場合には、オーストラリア人と同様に扱われ、所有できる不動産に制限はありません。

 

12カ月以上の居住が許されるビザは5種類ほどありますが、オーストラリア人との親族関係等が存在しない日本人の場合には、Investor Retirement visa(一定の資産要件〈原則的に75万豪ドル以上の資産を有すること〉を満たした55歳以上の外国人が取得可能)が唯一現実的に取得可能なビザといえそうです。

 

一時的居住者は、非居住者が取得できる物件の他、自らが住むための不動産であれば、中古物件であってもFIRBの許可を得ることにより取得することができます。

 

他方、永住権を有する日本人は、FIRBの許可を得ずにすべての物件を購入することができます。従って、他人に貸すことを目的として中古物件を購入することも可能です。

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    本連載は、2014年9月18日刊行の書籍『海外資産の相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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