パネルの固定にはコンクリート基礎の活用が安全
太陽電池パネルは、架台と呼ばれる金属製の枠組みを用いて地面や屋根の上に固定します。屋外に巨大なパネルが設置されていれば、そこには風による大きな力が掛かります。台風のときにはなおさらのことです。建物が地震時にどこまで耐えられるかを意識しながら設計するのと同じように、太陽光発電システムでは、主に強風のときにどこまで耐えられるかを意識しながら架台を組み立てて設置していくことになります。
この架台は、例えば地面に設置する場合には、コンクリート基礎や杭(パイル)を通じて地盤に固定されます。基礎は戸建て住宅の基礎のように、地面を一部掘り込んで、その上に作業員がコンクリートを打設して築きます。人手も時間も必要とする作業です。これに対して杭であれば、鋼製の杭を打ち込むだけですから、コンクリート基礎を築くのに比べると人手も時間も掛かりません。したがって、費用も安く済みます。コンクリート基礎の工事費用のおおむね半分くらいと考えられます。
この2種類をどう適切に使い分けられるかは、工事費用が異なるだけに、太陽光発電システムを設計するうえで大きなポイントになると言えます。
ただ、地盤の中に杭を打ち込んで架台を固定するわけですから、地盤の状況によって向き・不向きがあります。例えば、地中に大きな岩石などが混じっているような地盤には不向きです。岩石などを取り除くために地中を一度掘り返すと、そこを埋め戻して転圧しても、地盤はどうしても緩むからです。こうした地盤では、杭はその支持力を発揮できなくなる恐れがあります。費用を掛けてでもコンクリート基礎を築くのが、安全です。
たとえ地盤は均一で問題はなくても、例えばそこが山林の場合には要注意です。伐採・抜根を依頼する先の質が悪いと、問題が発生する恐れがあるからです。伐採・抜根後には、切り倒したり引き抜いたりした樹木を処分する必要が生じます。しかしそこには、一定の費用が掛かります。それを抑えて利益を大きくしようと、樹木を地中に埋めてしまって、処分を装うことがあるのです。
作業後、土地はきれいに整地されていたとしても、目に見えない地中に大量の樹木が埋められているわけです。それは恐らく、杭を打設する段階になって初めて分かることでしょう。しかも、地中に埋められていた樹木の処分費など想定外の費用負担を強いられます。余計な時間と費用が掛かってしまうわけです。
出力50kW以上では「キュービクル」の必要性も
パワーコンディショナーは、第4回の連載でご紹介したように、太陽電池で発電した直流の電気を配電線に流れているのと同じ交流に切り替える役割を持ちます。その性能は、変換効率で評価されます。最近の製品はそれが次第に100%に近づいていることから、大容量のパワーコンディショナー1台で済ませるのではなく、太陽電池パネルの出力に相当するパワーコンディショナーを複数台接続して利用されるようになってきました。
太陽光発電システム全体の出力は、第1回の連載でご紹介したように太陽電池パネルの合計出力と、パワーコンディショナーの合計出力のうちどちらか小さなほうの数字を採用します。「キュービクル」と呼ばれる変圧器が必要になるのは、太陽光発電システムの出力50kW以上の場合です。この場合、発電した電気は6600Vもの高い電圧が掛かっている高圧配電線に流されます。そのように電線をつなぐことを、「高圧配電連系」と言います。
一方で、発電した電気はパワーコンディショナーで直流から交流に変換されても、電圧は200Vにすぎません。そのため、これを6600Vまで昇圧するキュービクルを併せて設置する必要が生じるのです。出力50kW未満であれば、発電した電気を電圧200Vの低圧配電線に流すことが認められているので、昇圧する必要はありません。したがって、キュービクルは不要です。この場合には、「低圧配電連系」と呼ばれます。
空中を渡る電線をよく見ると、上下2段に分かれています。この上の段が高圧6600Vの配電線で、下の段が低圧200Vの配電線です。高圧と低圧の違いは、例えば山の高さにたとえられるかと思います。高さ6600mの山と高さ200mの山です。電流は言わば、そこから流れ落ちる川の流れです。高い山のほうが遠くまで川の流れが続きそうなのはご理解いただけるかと思います。つまり、高圧の配電線は低圧の配電線より遠くまで電気を運ぶためのものなのです。