設備認定の取得自体は難しいものではないが・・・
前回、設備認定という固定価格買取制度の手続きが投資詐欺に利用されたことを説明しました。一体、どういうことなのか、ここで、設備認定の手続き内容を簡単に確認しておきましょう。これは、発電設備が法令で定める条件に適合したものか否かを国が確認する手続きです。申請書類が整ってから認定までは1〜2カ月程度と見られます。この設備認定は、申請書類上で基準を満たしているか否かを判断するものです。太陽光発電システムでは大きく、次の5つの基準が定められています。
①調達期間中、導入設備が所期に期待される性能を維持できるような保証またはメンテナンス体制が確保されていること
②電気事業者に供給された再生可能エネルギー電気の量を計量法に基づく特定計量器を用い適正に計量することが可能な構造となっていること
③発電設備の内容が具体的に特定されていること(製品の製造事業者および型式番号などの記載が必要)
④設置に掛かった費用(設備費用、土地代、系統への接続費用、メンテナンス費用など)の内訳および設備の運転に掛かる毎年度の費用の内訳を記録し、かつ、それを毎年度1回提出すること
⑤パネルの種類に応じて定める以下の変換効率以上のものであること(フレキシブルタイプ、レンズ、反射鏡を用いるものは除く)
●シリコン単結晶・シリコン多結晶系 3.5%以上
●シリコン薄膜系 7.0%以上
●化合物系 8.0%以上
この基準を見て分かるように、設備認定を取得するのはそう難しくありません。たとえ架空の話であっても、太陽光発電システムを特定し、メンテナンス体制をでっち上げれば、認定を取得できそうです。
設置場所の登記簿謄本の提出が義務化
ところが、設置場所に関する事項は認定基準に定められていません。問題になった商法は、そういう基準だからこそ認定取得までこぎつけたと言えます。
認定手続きは、実は、この例で設備認定を取得した2014年1月以後の後、同年4月到達分の申請から、扱いが見直されています。新しい扱いによれば、出力50kW以上の比較的規模の大きな太陽光発電システムの場合、システムを設置する土地の登記簿謄本を同時に提出するように義務付けられたのです。
つまり、この例のような架空話に設備認定を下すことがないように、設置場所の権利関係まで確認するように改めたわけです。登記簿上の土地所有者と発電事業者が異なる場合には、売買契約書、賃貸借契約書、権利者の賃貸・譲渡証明書といった書類によって、申請してきた発電事業者が権利者の土地を用いることの正当性を確認する手続きも加えました。
いまはともかく、固定価格買取制度スタート間もない時期は、太陽光発電システムに対する知識があれば、本当に簡単に設備認定を取れる状況でした。それは、設備認定の規模と実際に太陽光発電システムを導入した規模との差として表れています。2015年4月現在の集計によれば、設備認定を取得済みの容量が7863万kWであるのに対し、導入容量はその5分の1程度の1622万kWにすぎません。残る5分の4に相当する容量は、設備認定を取得しただけでまだ発電を始めていないのです。
そのことが、太陽光発電投資にも、さまざまな波紋をもたらします。手続きの強化は、その一つです。さらに大きな波紋として問題視されるようになったのが、買取価格の引き下げです。
買取価格の引き下げや出力抑制の見直しは、太陽光発電投資にとって確かに向かい風に思えるかもしれません。しかしここまで見てきたように、それらが投資家にとって大きなリスクをもたらすことは、まず考えられないのではないでしょうか。いままで、過剰に良い条件であったものが、適正になってきたにすぎないのではないでしょうか。