計画段階で電力の供給量は多めに見込まれている!?
太陽光発電投資に向かい風を吹かせた「出力制御」ですが、実際にはそれを必要とするような事態には陥らないと見ています。なぜか――。それは、太陽光発電投資としてとても成り立たないようなずさんな計画も決して少なくないからです。
太陽光発電システムの設備認定を取得し、電力会社と接続契約を結ぼうと申請する。九州電力の説明のように、それは実際におびただしい数にのぼったのでしょう。しかし、それらの計画が本当に投資として成り立つものだったのかは極めて疑問です。投資として成り立たなければ、発電は長続きしません。電力の供給量は計画に比べて抑えられるため、需給バランスが崩れる心配はなくなります。
九州のある地域で太陽光発電システムの設備認定を取得した土地がありました。しかしそこは、すり鉢状の土地でそのままではとてもシステムを設置できません。ダンプ何台分の土砂を盛ればいいのか分からないほどです。これでは、整地コストが掛かりすぎ、とても計算が合わないでしょう。九州電力管内で実際に目の当たりにした光景です。
ほかにも、周囲に配電線がまったくなく、最も近い場所で数十キロ先という例もありました。これでは、連系費がかさみすぎるでしょう。電力会社は接続申請を受け入れるのが原則。接続に掛かる費用は申請者側の負担ですから、事業性は考える必要はありません。それを考えるべきはあくまで、申請者側なのです。それにもかかわらず、こうした事業面で成り立たなさそうな計画が目に付きます。
設備認定の手続きが甘すぎたとも思います。その後、手続きに必要な書類が追加されたのでいまはともかく、当初はごく簡単な必要最低限の書類さえ用意しておけば、設備認定を取得できたほどです。
設備認定を取得済みの案件のうち、接続契約を済ませ、実際に太陽光発電投資として成り立つものは、全体のせいぜい7〜8割程度ではないかと見ています。つまり裏を返せば、供給量は多めに見込まれているわけです。だから、出力抑制という話が出てくる。しかし実際には、需給バランスは確保できるので、出力抑制の必要性が生じることは起こり得ないと見ています。
詐欺まがいの案件に悪用された「設備認定」の通知書
実際、投資詐欺とでも呼べそうな商法も見られます。消費者庁は2014年12月、次のような例を公表し、注意を促しているほどです。
問題になった商品は、太陽光発電システム付きの土地、つまり太陽光発電所の所有権を分割販売するものです。場所は群馬県高崎市内。太陽光発電パネル1枚当たり11万円を購入すると、向こう20年間にわたってパネル1枚当たり年間2万〜3万円の収益が見込まれ、さらに当初3年間は年間約1万円のキャッシュバックを得られるので、わずか3年で投資回収できるという触れ込みだったと言います。
このキャッシュバックは、先行して稼働している千葉県成田市内の太陽光発電所の売電収益を原資にする前提だったそうです。ところが、この2つの発電所はともに架空のものだったのです。消費者庁が発電所と記載されている現地を確認した結果、それが明らかになりました。
消費者庁が消費者に注意を呼び掛けるほどのリアリティを感じさせるために利用されたのが、設備認定という固定価格買取制度の手続きです。この制度を用いて発電した電力を売るには、いくつかの手続きを経る必要があります。その第一歩が、経済産業省による、この設備認定です。この投資勧誘話では、経済産業省の関東経済産業局名で2014年1月に発行された設備認定の通知書が用いられていました。まったくの架空話ではなかったのです。